「語れるモノ」を持とう! ミニマリストから“モノマリスト”になる方法

暮らし

更新日:2018/4/5

『人生を変えるモノ選びのルール 思考と暮らしをシンプルに』(堀口英剛/ポプラ社)

「家の中がモノであふれてしまう」
「買っても買っても、また欲しいモノが出てくる」

 抑えきれない物欲に悩まされている人はいないだろうか。悪循環を断つために断捨離を始めたはずが、いつの間にか購買ペースの方が早くなってしまったとき、ぜひ読んでほしい1冊がある。『人生を変えるモノ選びのルール 思考と暮らしをシンプルに』(堀口英剛/ポプラ社)だ。

 本書は、モノに対するこだわりを語った大人気ブログ「monograph(モノグラフ)」の編集長を務める堀口英剛さんが、自分に合った「正しいモノ選び」をすることで物欲をスマートにして、人生を良い方向に変えていく「モノマリスト」という考え方を提案している。そのメソッドを少しだけご紹介しよう。

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■モノマリストは「語れるモノ」を買う

 物欲に流されて思わずモノを買ったとき。誰にでもありがちなその瞬間は、とても気持ちがいい。しかし次の日に買ったものを手に取ると、「あれ? なんでこんなもの買ったんだ?」と自分でも戸惑ってしまう。

 堀口さんによると、この悪循環を断つためには、本当にそれがどれだけ必要で、どれだけ欲しいか自問することだそうだ。「それを買う必要性をどれだけ述べられるか」「誰かに見せてその魅力を存分に語れるか」。これらができなければ、物欲に流されて買おうとしているだけかもしれない。

 モノマリストの本質は、ただ素晴らしいモノを買うことじゃない。自分にとって本当に必要で、心から欲しいモノは光り輝いて見える。それを日常にちりばめて毎日ときめきながら生活することだ。

 そのためには「買う」ことよりも「買わない」大切さを実践する必要がある。さらに、堀口さんは「一日一つモノを捨てよう」と提案。モノを買ったときの気持ちよさは素晴らしいが、本当に必要とするモノに囲まれて生活するときめきはもっと素晴らしい。

■自分に合った素晴らしいモノを選ぶコツ

 こうして物欲を見事に律している堀口さんは、どのようにしてモノを選んでいるのだろう。そのコツの1つが、触ってみることだ。たとえ同じ「牛革」でも、軽く触れただけで表面のなめらかさ、肌に吸いつくような質感、厚み、表面の羽毛立ちなど、様々な情報を得ることができる。

柔らかな手ざわりの小物入れは、小型の電化製品の充電ケーブルやハブなど「付属品」を鞄に入れて持ち歩くのに重宝する

人に何かを説明するときや自分の考えをまとめるときに使う「トラベラーズノート」と「無印良品の万年筆」。堀口さんはデジタルなモノに囲まれていると、急に紙とペンが恋しくなる瞬間があるそう

 自然由来のモノだけじゃなく、電化製品でも同じだ。良い製品であるほど形や重みが感覚で伝わる。堀口さんはこれを「詰まっている」と表現している。良いモノに触れた経験が増えれば増えるほど、この感覚が「極上のセンサー」となって、その善し悪しが見抜けるようになる。

モノマリストの鞄の中身はこだわりぬいた逸品のみ。数は最小限に、重さは最軽量に、大きさはコンパクトに

 また、長く使えるかどうかも大事だ。単に耐用年数の話ではなく、飽きがこないか?数年後、今以上に愛着のわくモノか? そんな視点で選んでみよう。極力シンプルでオーソドックスでトラディショナルなモノがおすすめだ。「長く連れ添ったモノ」はやがて愛着がわくし、新しく買いそろえる量も減って、いいことばかりだ。

■モノとの接し方に人間性を垣間見る

 「類は友を呼ぶ」ということわざがある。わたし個人の見解では「人間性は、その人の友達に鏡のごとく映る」と解釈している。そしてこの「類友」は、その人が持つモノにも映るのではないかと考えている。

 どのような値段の、どのようなスペックのモノを、どのように選び、どのように扱い、どれだけ長く使っているか。たまにモノを雑に扱う人がいる。その人の周りにはどんな人が集まっているだろう。一方、モノを大切にしている人は、どんな人と関わっているだろう。

 本書は、モノ選びのルールを実に分かりやすく書いているが、その意味は驚くほど深いものだと痛感する。あなたも、モノマリストになれるだろうか。

文=いのうえゆきひろ 写真=堀口英剛