ゲームのルールはいたってシンプル。「お互い本当に好きになるまで付き合わない」「お互い他に好きな人ができたら終わり」。それまでは互いのカラダに溺れてセックスだけの関係を心行くまで堪能すると決めた、ワーカホリックなサバサバ美女・小夜（27歳）と裏が読めない鉄面皮の新入社員の桐山。2人の駆け引きだらけの関係を描いたマンガ『GAME』（西形まい/白泉社）は電子書籍でじわりじわりと人気を高め、歴代白泉社作品のなかでトップ10に入る勢いだそう。

　さらにYahoo! ブックストアで電子書籍の総合DL数年間1位を獲得しただけでなく、紙書籍も絶好調の売れ行きで、このたび発売された最新4巻はなんと初版10万部という快挙を成し遂げた。本当に面白ければ、電子だろうと紙だろうと関係なく売れるのだ！ と出版業界に光明をさしてくれるまごうことなきヒット作。人気の秘密は、「趣味はセックス、女性のカラダはそのための道具」と腐れ外道な信念を貫く桐山くんとのドエロな絡み。そしてそんな彼に惑わされながらも、決して己の矜持を失わない小夜の凛々しさ、そして彼女がときおり見せる脆さにあるのではないだろうか。

　もともと小夜は、仕事ばかりを優先させて彼氏にフラれ、恋愛にわずらわしさを覚えるほどクールな女子。時々デートじみたことをしてくれて、仕事のストレスも共有できて、さらにセックスも極上。礼儀として他にセフレはつくらないけれど、束縛はしないしお互い自由気ままにふるまえる。恋愛のおいしいとこどりをさせてくれる桐山は、働く女子のある種、理想の男である。

　だが、いくらカラダの相性がよくても一緒にいて居心地の悪い相手と長く関係は続けられない。関係が深まっていくにつれ小夜は自分の感情の変化に戸惑いはじめる。そしてついに4巻では決定的なあることが起こる、のだが……。

　3巻刊行の際に「駆け引きだらけの2人の関係が、実は誰よりもピュアな気がしてしまうのは、彼らが肌をあわせることで、誰より『好き』という気持ちの確かさを知りたがっている気がしてしまうからかもしれない」と私は書いた（https://develop.ddnavi.com/news/386238/a/）。けれど2人が向かう先は逆方向で、桐山はどこまでも小夜を「道具」として扱う。それは自分が誰かを好きになることで変容してしまうのが怖いのか、それとも根っからの鬼畜なのか。その本心が見えないだけに、小夜の気持ちを思うと、桐山……おまえ…………！　と地団駄ふみたくなること請け合いだ。

　だが、小夜とて一方的に振り回されるだけの女じゃない。感情にすがってみっともない姿をさらすような真似もしない。彼女はどこまでも自分で道を「選ぶ」のだ。その潔さはとても愛しく、そして切ない。誰が相手でも芯が揺るがない彼女になら、桐山の仮面を崩すことができるのではないかと期待してしまう。

　2人の関係に決定打が打たれた4巻。はやくも次巻の発売が待ち遠しい。というより、次話が配信されたらすぐさまダウンロードする心積もりなのである。

文＝立花もも

セフレは恋人になれるのか？　年下男子との、駆け引きだらけのオトナの関係を描いたマンガ『GAME』3巻発売
相手のホンネを知って傷つくなら、セフレ関係を続けた方がずっと幸せ――？大人の駆け引きを描いた『GAME』待望の2巻！
カラダを重ねた先に「本当の好き」は見つかるか？ 大人の駆け引きを描いた『GAME』