日本一わかりやすい? 大人も子どもも楽しめる『古事記』入門本
更新日:2018/4/5
数多くある『古事記』の入門書の中で、人気を集めている『愛と涙と勇気の神様ものがたり まんが古事記』(ふわこういちろう:著、戸矢学:監修/講談社)。
2015年に発売され、その親しみやすい絵と、分かりやすく「原典に忠実」という内容の充実さから、今なお支持されている「マンガ古事記本」である。
主に描かれているのは神代の時代(上巻)。神様の「国生み、神生み」から始まり、「天孫降臨」まで。中、下巻のダイジェストもあるので、気になった方は、もう少し専門的な書籍を読んでみても面白いかも。
本書は絵本のような絵柄であり、漢字さえ読めれば小学生でも意味が分かるようになっている。もちろん大人でも読み応えのある内容なので、幅広い年齢に受け入れられる一冊ではないだろうか。「親子で読む」というのも楽しいだろう。
さらに『古事記』と『日本書紀』の違いは? とか、『古事記』はどんな言葉で書かれているのか? などのQ&Aもあるので、『古事記』の理解を深められるようになっているのもポイント。
ちなみに、『古事記』は日本人向けで、『日本書紀』は外国人に読んでもらうことも目的の一つとして作られているそうだ。また『古事記』に使われているのは「古代日本人が話していた『やまとことば』」で、1字1音の当て字で書いているという。そのため、『古事記』は物語としての難解さだけではなく、そもそも書かれていることを読むことさえ難しいのだ。
本書は、そんな難解な『古事記』をバランスよくまとめていると思う。
何度も言うが、原典の『古事記』は分かりづらい。現代人からすると、「どうしてそうなった?」と不思議に思う展開も多い上に、登場してくる神様の名前が長くて覚えられなかったりする。
よくある『古事記』入門書は分かりやすさを重視するため、原典の内容を無理やり「現代向け」にして、読者が「納得できる」展開にしてしまったり、物語の筋に関係ないことを、大幅に省いてしまったりする。
だが本書は「情報過多」の部分は図解で説明して、聞き慣れない単語は注釈を入れたり、「この神様はこの後出て来ません(笑)」「古事記には出会ってスグ結婚へのパターンが多いな~」などの作者のツッコミが入っていたりもして、「できるだけ原典に忠実に、でも読みやすい」内容になっていた。
神様たちの姿も、個性に合わせて豊かに描き分けられており、「さっきも似たような神様いなかった?」という事態にならないのも嬉しい(笑)。
純粋に『古事記』の内容を知りたいという方はもちろん、本書は神社巡りにもおススメできる。
例えば「霧島神宮」(鹿児島)に祀られている神様「ニニギ」は、どんな神様なのか。「伊勢神宮」(三重)の内宮に祀られている「アマテラス」は、外宮の「トヨウケヒメ」は、一体何をした神様なのだろうか。これらの神様は『古事記』に登場しているので、どういう神様かを知った上で参拝してみると、より一層神社巡りが楽しくなるはず。
本書では古事記に登場した神様が祀られている全国の神社を紹介しているコーナーもあるので、旅のお供にするのもいいだろう。
文=雨野裾