永作博美が表紙に!『saita』編集長に聞いた、“雑誌づくりの2つのタブー”とは?

暮らし

更新日:2018/4/9

 ママ誌を卒業してリニューアルした生活情報誌『saita』を、当WEBサイトで紹介したのは昨年6月のこと。それから順調に部数を伸ばしているかと思いきや、記事でインタビューした若杉美奈子編集長から「しくじりました!」との連絡が入った。いったい何が起きたのか? さっそく事情を聞きにいくと、“雑誌づくりの2つのタブー”が明らかに。若杉編集長が、恥も外聞もかなぐり捨てて、雑誌づくりで失敗しないための教訓を伝授してくれました。

――昨年、取材した際は、ママだけでなく幅広い読者層に向けて『saita』をリニューアルしたとおっしゃっていましたね。

若杉美奈子編集長(以下、若杉) はい。『saita』はもともとママを対象にしていた生活情報誌です。でも今の時代はエイジレスな方が多いので、幅広い読者層にさまざまな切り口のテーマを伝えていく雑誌としてリニューアルしたのですが、全然伝わらなくて……。リニューアル前より少し部数は増えたものの、会社が求めていた数字からはほど遠く、「失敗した! しくじった!」と思いました。

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――しくじった原因は、読者層の問題だけですか?

若杉 いえ、しくじったポイントは2つあります。まず一つ目は、やはり読者ターゲットを広げすぎたこと。読者層を幅広くしたために、雑誌の内容も広く浅くなってしまいました。ターゲットが異なる記事が混在していて、「これは誰に向けて作っている雑誌なの?」「これは私の雑誌じゃない」と、読者に思われてしまったんでしょうね。

 二つ目は、“女性の暮らしに役立つ情報誌”をコンセプトにしたのですが、読者のニーズと合わなかった点です。今、雑誌に求められているのは、暮らしに役立つ情報だけではなく、体や心も含めたリアルな悩みの解消に役立つことなんですね。

 そのことに気づいたのは、リニューアルからしばらく売れ行きが低迷していた頃。思い切ってほぼ丸ごと1冊ダイエット特集をやったときです。

 体や健康のことに対して、女性の関心がかなり高まっていると感じてはいましたが、想像以上に売れ行きがよかったのです。

 そのときから、女性の悩みを解消するために役立つ雑誌として方向性を変えて、「体と心の健康」をコンセプトに決めました。そこから部数も、少しずつ増えていきました。

 当たり前ですけど、デザインも変え、ものすごく読みやすく見やすくなりました。「今さらそんなことを言っているの?」と、同業者から呆れた声が聞こえてきそうですが……(苦笑)。

 雑誌づくりの2大タブーは、幅広い読者ターゲット、読者の役に立たないコンセプト。私がやらかしたこの2つのしくじりは、絶対真似してはいけません(笑)。

――その失敗を経てさらに生まれ変わった『saita』の現在の読者層は?

若杉 40代の女性ですね。昨年のリニューアル後、低迷していた部数を引き上げたダイエット特集号で、メインの読者層の年齢が10歳ほどあがったんです。その号の特集タイトル「ココロをゆるめれば下腹からやせていく!」の言葉が刺さったのが、心と体の変化を感じはじめる40代だったということでしょう。

――現在の『saita』のコンセプトは、「カラダとココロが健康になる!元気になる!」。体だけでなく心もテーマにしたのは?

若杉 ずっと明るいイメージでやってきた雑誌なんですが、たまに人間関係の企画をやると読者アンケートの支持率が高かったんですね。

 その理由を考えてみると、40代って人生のど真ん中で、多様なライフスタイルが一番混在している世代なんですよね。独身の人もいれば離婚した人もいる、子育て真っ最中の人もいれば、子育てから手が離れた人もいる。バリキャリ系の人もいれば、専業主婦もいる。

 そうなると、自分と似た境遇で何でも話せる気の合う人ってなかなかいないんですよね。もしいたとしても、みんな仕事や子育てで忙しいからゆっくり話す時間もない。結局、人に言えないさまざまな悩みを抱えたまま、日々を過ごしている人が多いと思うんです。

 体だけでなく心もコンセプトにしたときに、ドンピシャにハマったのが40代だったのは、そういうことだと思います。

 20代は恋愛が大事だから、彼だったり夫だったりパートナーに意識が向きますよね。でも30代は仕事で、40代になると自分になるんです。

 たとえば、2歳の子どもがいる20代と40代とでは、やっていることは同じでも体は違うわけです。だから体のことを意識せざるをえないし、目を向けざるをえない。そのうえで仕事をどうするのか、自分の人生をどうしたいのか、考えはじめて自分を見つめ直すのが40代です。

 でも40代はとにかく忙しくて時間がない。ですから『saita』では、なるべく時間や手間をかけずに体と心の健康を維持することをテーマにしています。

 ただでさえやることが多い日々のなかで、何かを足したり新たにはじめたりする余裕はありませんから、今の生活のなかで負担なく取り入れられる工夫やコツを意識しています。

 お金や時間をかけて本格的な健康生活を目指したい人には、そういう人向けの雑誌があります。私たちはあくまでも生活情報誌として、どれだけ日常で健康的な生活を過ごすかを伝えていきたい。

 私はもともと医療関係にお付き合いも多いので、その人脈もどんどん企画に活かしています。生活情報誌でここまでお医者さんが出てくる雑誌はないと思いますね。

観音開きで大きく誌面を見せられるのは雑誌ならでは。好評だった「ワンポーズストレッチ」と「やせ置きレシピ」

――表紙も、波瑠さんから永作博美さんに変わったんですね。

若杉 永作さんも40代で2人のお子さんの子育てをしていますので、新しくなった弊誌のコンセプトに共感してくださったんです。体の特集には特に興味をもってくださいました。

 永作さんも、日々子育てに追われるなかで、「はあ、疲れた」と思うこともあるそうで、自分に向き合える時間、自分を見つめ直す時間をつくりたいとおっしゃったんですね。そして、「きっと、同世代の読者も私と同じことを思ってるんじゃないでしょうか」と。

 そのきっかけとして、「習い事をやってみたい」というご希望をいただいたので、習い事を体験して自分と向き合うことをテーマにした連載もはじめました。「私のページを見て、ちょっとホッとしてもらえれば」と、永作さんもおっしゃっていたので、ぜひ読んでみてほしいですね。

 ちなみに、今月発売の5月号では、永作さんがフラワーアレンジメントを習います。何を習うかは、毎回、永作さんご自身が選んでいるので、今後どんな習い事が出てくるか私も楽しみです。

――さらに生まれ変わった『saita』の反響は?

若杉 おかげさまで少しずつ部数が伸びています。WEBメディアやSNSにはない雑誌ならではの魅力として、観音開きで取り外しができる付録や小冊子も毎号つけていて好評いただいています。

 人生は、日々、選択の連続で、その選択をするときにできれば時間をかけずに0秒で、今の生活をより健康的なものにしたい。そんな風に、ちょっと意識を変えたりやることを変えたりするだけで、体と心が楽になることを、これからもどんどん伝えていきたいと思っています。

取材・文=樺山美夏