これぞ理想のヲタカップル? 腐女子とゲーヲタが付き合ったらこうなった!
更新日:2020/5/14
かつてはひっそりと生息していたものの、今ではすっかり市民権を得たオタク。リア充でもアニメやゲーム、アイドルなどのオタク趣味にハマる人は多く、「彼氏はいるけど腐女子」「彼女がいても週末はアイドル現場」というケースも少なくない。
そんな「オタクの恋」にスポットを当てたのが、テレビアニメ化も果たした『ヲタクに恋は難しい』(ふじた/一迅社)。隠れ腐女子のOL・桃瀬成海とイケメン眼鏡だけど重度のゲームヲタクな二藤宏嵩の不器用な恋愛が描かれ、累計550万部を突破する大ヒットシリーズとなっている。
成海は、オタクだとバレたことがきっかけで同じ職場の彼氏にフラれた26歳。元カレと顔を合わせるのがつらくて、転職したばかりだ。そんな新天地でばったり出くわしたのが、幼なじみの宏嵩。新しい職場では絶対にオタバレしないよう細心の注意を払っていた成海だが、宏嵩はひと言「今度のコミケは参加すんの?」。
全力で地雷を踏みぬかれ、死んだ目になる成海だが、この再会を機にふたりの交流は復活する。最初は「ヲタクはキモいから嫌だ!!」「大事なヲタク友達を恋人にするのはもったいない」と宏嵩を恋愛対象から外していた成海だが、「俺でいいじゃん」と口説かれ、とどめに「来週末のイベントに売り子として同伴可能」と言われて即交際スタート。ふたりが結ばれてハッピーエンド、ではなく、ここから物語が始まっていくのが面白い。
とにかくこのふたり、オタク同士とあって息ぴったり。成海が男運の悪さを嘆けば宏嵩は「乙女ゲーの分岐は間違えないのにね」と応じ(「それな」と答える成海の顔も必見)、デートはゲーセン、コミケ、アニメショップ。成海がBLマンガを薦めれば宏嵩も嫌がることなく読んで感想を言い、宏嵩がいくらゲームに時間を費やそうと成海は文句を言わない。オタク同士だからこそ互いの趣味を尊重し合い、しかもジャンルが違うため意見がぶつかることもない。オタカップルの理想とも言える関係性を、うらやましく思う人も多いだろう。
さらに職場の先輩、小柳花子と樺倉太郎もオタカップル。小柳はコスプレイヤー、樺倉はライトなアニメオタクで、成海たちとも意気投合。一緒にイベントに参加したり、4人で集まって徹夜でゲームしたりと、まさにリア充オタクといった雰囲気でこれまたうらやましい。3巻からは、宏嵩の弟で非オタの尚哉と人見知りゲーマー・桜城光も加わり、物語をにぎやかに彩っている。
8割はギャグと「オタクあるある」で満たされている『ヲタ恋』だが、時折胸をキュンとさせるエピソードも挟まれる。子どもっぽく笑いあっていたかと思ったら、不意に真顔になって成海をそっと引き寄せる宏嵩。いつもデリカシーのない発言で小柳を怒らせているのに、誰よりも深いところで彼女を理解している樺倉。普段の姿とのギャップ、なかなか進展しないもどかしい恋模様にニヤニヤが止まらない。
甘いだけのラブストーリーでもなければ、オタクネタ全開のギャグマンガでもないハイブリッドラブコメ『ヲタ恋』。オタクはもちろん、非オタの男女もオタカップルの恋の行方を見守ってほしい。
文=野本由紀