来客時は使い捨てのスリッパを差し出し、タオルは当然のごとく、1回使用で即洗濯。エレベーターのボタンやタッチパネルを、指の腹で押すなんてもってのほか。できれば押したくないところ、指の関節で押すのは、ギリギリセーフ。必需品は除菌シート！

　そんな“潔癖”エピソードを、テレビ番組で多くの芸能人が声高に語る姿も、珍しくなくなった昨今。あなたの周りにも、潔癖症の男性、すなわち“ペキ男”がいるのでは？

『ペキ男とガサ女』（ggeika/KADOKAWA）は、そんな超潔癖のイケメン“ペキ男”こと、ペキ君と、身なりをまったく気にしない“ガサ女”こと、ズボラちゃんの、2人の交流を描いた漫画。インスタグラムに投稿されるやいなや、繊細な心の持ち主でもあるイケメン・ペキ君に、「ペキ君かわいすぎ！」「思わずニヤけました」「あふれる笑みが素敵すぎます」と、心を射抜かれる女子が多数発生。すでにフォロワー数は12万人を超える（2018年3月現在）という、話題の胸キュン作品の書籍化だ。

　ひょんなことから出会った2人。お金の貸し借りから始まり、傘の貸し借り、そしてペキ君にとっては災難級の、トイレの貸し借り（！）を経て、2人は共通の趣味である“建築”を通して、距離がぐっと縮まっていく……。と、少女漫画のようにコトはすんなり行かないもので、ときに読者をヤキモキさせるほど、物語は非常にスローに展開していく。驚くような大事件も起こらなければ、恋のライバルも現れない。いたって日常の、取るに足らないささいなできごとと、不器用な2人のやり取りが、淡々と、しかし、とても丁寧に紡がれる。そこが、この漫画の最大の魅力だ。

　2人は、潔癖ゆえ、ズボラゆえ、現実社会では生きづらい、息苦しさを抱えている。しかしながら、自分の正当性を主張するわけでも、他人を非難するわけでもなく、むしろ自らの性質・性格を責め、悔やむ、気の毒なほどにやさしい心の持ち主でもある。だからこそ、フォロワーたちは、こんなにも物語に引き込まれ、つい、2人を応援するような気持ちで、その動向を見守ってしまうのかもしれない。コメント欄には、いつも「続きが気になります！」という熱い声であふれている。

　本書には、インスタでは描かれていない、2人の過去がつまびやかに明かされる。それは、潔癖ゆえ、ズボラゆえ、に経験した、悲しくも苦い経験……。2人の過去には一体なにが？　
　インスタの更新とあわせて楽しみたい、1冊だ。

漫画＝ggeika
文＝遊馬里江