56歳で直腸がん発見、人工肛門に…誰でも襲われる可能性のある「がん」と正しく向き合うには?
更新日:2018/5/1
現在、2人にひとりは罹るといわれる「がん」は、もはや国民病といっても過言ではあるまい。私自身も父親が胃がんになっており、身内に患者がいるという人も少なくないはずだ。かつてはがんが「不治の病」といったイメージで捉えられていたこともあり、この病名を聞けば絶望的な気分に襲われるのはやむを得まい。しかし国立がん研究センターの統計によれば、2006年から2008年にがんと診断された患者の5年相対生存率は男女計で62.1%だという。この数字を見れば、がんは必ずしも不治の病ではないと思える。ならば我々はがんになったときどう向き合うか、それがこれから問われることになるだろう。『がんまんが 私たちは大病している』(内田春菊/ぶんか社)は、がんを患った著者の内田春菊氏が、自らの体験を赤裸々に綴った「がんまんが」である。
内田春菊氏といえば、テレビドラマ化された『南くんの恋人』などで知られる漫画家だが、他にもバンド活動や女優業など多彩なキャリアを持つマルチタレントである。そんな著者にがんが見つかったのは、2015年の終わり頃、56歳の時だという。太ったので糖質制限に挑戦してみると、なぜか急激にやせ始めたのだ。しかも糖質制限の反動と思っていた便秘がなかなか改善せず、ついには痛みと出血まで伴う。「痔」ではないかと疑った著者は、意を決して病院で診察を受けることに。そして病院で内視鏡検査を行なうことになったのだが、その結果、大病院での検査を勧められるのだった。
この一連の流れをきっかけにして、著者の「大腸がん」は発覚するのだが、別に直接の原因が糖質制限にあるわけではない。本書でも触れられているが、このがんは1~2年くらい前からすでに存在していたといい、便秘や出血などから結果として検査を受けることで判明したのである。大事なことは、異常を感じたとき臆病にならずにきっちり病院で検査を受けておくことだ。無論、定期健診を受けるのがよりよいだろうし、早期発見にも繋がるはず。
もちろん発見されたのは「大腸がん」なのだから、見つかったこと自体は幸運でも決して喜べない。しかもがんは肛門のすぐ近くにあり、手術するとなると「人工肛門」は免れないと主治医から告げられる。がんは再発が怖いので、とにかく肛門部の再発を避けるために残さず切除する必要があるからだ。もちろん場合によっては一時的に人工肛門にするだけで済むこともあるそうだが、著者は抗がん剤を投与するなど試してみるも結局、永久的な人工肛門となってしまう。
本書では手術前の手続きから家族や友人とのやりとり、そして手術に至るまでがユーモアを交えて描かれている。そして著者も触れているのだが、がんが「治った」というと、だいたい「早期発見でよかったね」などといわれるそうだ。しかし早期発見だから治るわけではないし、著者のように人工肛門になってしまうケースだってある。命が助かってよかったのは間違いないが、これまでと同じ生活ができなくなる場合もあるので、手放しで喜べないことも事実なのだ。
これは著者の「闘病記」であり、今後も「すとまんが」(人工肛門を総称して「ストーマ」という)として描かれるという。もはやがんは不治の病ではない。しかし治療後の向き合いかたは、人それぞれ症状によって異なるのだ。人工肛門という「変化」が著者のこれからにどのような影響を及ぼすのか──。いち読者としてそれを知ることで、自身ががん患者となったとき何かしらの参考にできるかもしれない。
文=木谷誠