噂の「自動運転」がよくわからない! 乗り物に見るすごい技術
公開日:2018/5/9
身近に見る「便利なモノ」には、そのすべてに「便利さの理由」がある。しかし我々は、意外なほどその詳細や真相を知らないままでいる。この春刊行された『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』(KADOKAWA)は、ふだんよく目にし、時には触れる「モノ」について、それに関わる“すごい技術”を図解で紹介する一冊だ。
今回の記事では、最近巷の話題にもなっているクルマの「自動運転」について、そもそもこの技術がどのようなものなのか、そして、この技術の周辺にはどんな問題点や課題があるのか、図版を交えながら簡単に説明しよう。
■そもそも「自動運転」とはどんなもの?
交通事故は、認知ミス・判断ミス・操作ミスといった運転手に起因するものがほとんどなのだが、この問題を解決する切り札が「自動運転」であり、高齢社会における移動の解決策としても大いに注目されている。
自動運転といっても、その定義はさまざまだ。自動運転のレベルについては現在、アメリカの非営利団体SAE(ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズ)が制定したレベル0~5の6段階が多く使われていて、レベル3以上は「運転操作の責任をクルマが持つ」ことを覚えておきたい。2017年7月には、ドイツのアウディが世界で初めてこのレベル3に対応する自動運転機能を搭載する市販車を発表し、注目を集めた。
自動運転には、クルマに目や耳となる「検知機能」が要求される。そのため、それらに対応する電子部品の製造メーカーは莫大なビジネスチャンスを得ることになる。
また、自動運転の実現には「高精度の位置情報」も欠かせない。2017年に4機目が打ち上げられた準天頂衛星「みちびき」は、数センチの誤差で位置特定を可能にする。これが自動運転の強力な助っ人になるのだ。また、この電波が届かない地下街やビルの中などにおいても正しい位置情報が得られるシステムが必要だ。
ところで、安全運転を指揮するソフトウェア、特に「人工知能(AI)」は、電子部品同様に重要となる。そこで、この分野には多くのIT企業が参入し、グーグルなどはすでに公道で自動運転の実験を行なっている。
自動運転の実現は、社会的にもさまざまな影響をおよぼす。事故が起こったときに誰の責任になるかという法律上の問題のほか、制御用ソフトウェアが悪意を持つハッカーに乗っ取られないようにするための対策をどうすべきかという課題もある。さらには「トロッコ問題」(図参照)など、人ですら判断に迷う場合、自動運転のAIにどのような判断をさせるべきかという問題も解決していかなければならない。
『雑学科学読本 身のまわりのすごい技術大百科』
涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA
コドモもオトナもタメになる「モノのしくみ」の話――身近にある「便利なモノ」には、それぞれに「便利さの理由」があるが、我々自身、それをよく知らぬままに日々生活している。本書は、家電からハイテク機器、文房具まで、日ごろよく目にしているモノを下支えする“すごい技術”を、イラスト図版とともに解説する一冊!