「り、理不尽すぎじゃない……!?」と思うクレームにも上手に対応する方法

暮らし

公開日:2018/5/2

『どんな相手でもストレスゼロ! 超一流のクレーム対応』(谷厚志/日本実業出版社)

 理不尽な言い分で苦情を訴えてきたり、不当な要求を押し付けてきたりする悪質なクレーマーの存在は社会問題ともなっている。中にはモンスター化するクレーマーへの対応がトラウマとなってしまっている人もいるようだ。

 しかし、クレーマーに怯え対応に苦しむ多くの人がいる中で、クレーム対応を「難しいものではありません」と断言する人がいる。クレーム・コンサルタントの谷厚志氏だ。かつては企業のお客様相談室で働き、2000件以上のクレームに対応してきた。そして、自分のせいではないクレームに対応しなければいけない理不尽さを感じながら仕事を続け、会社に行こうとすると熱が出たり、円形脱毛症になってしまったりした経験も持つ。にもかかわらず、今、クレーム対応を難しくないと言い切ることができるのは、その後の数多くの経験により培ったノウハウがあるからだろう。

 そんな谷氏のクレーム対応のノウハウを余すことなく解説した本がある。『どんな相手でもストレスゼロ! 超一流のクレーム対応』(谷厚志/日本実業出版社)だ。著者である谷氏は現在、クレームの専門家として年間200本以上の講演や研修を行っているほか、クレームに苦しむ全国の企業からの相談対応も行っている。本書では、実際に相談を受けた実例や著者のリアルな失敗談とともに悪魔のようなお客様を天使に変えるための実践的な対応術を紹介している。

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 もちろん、残念ながら世の中には根っからの悪質なクレーマーも少なからず存在する。そして、本書ではそんな悪魔のようなクレーマーへの対応のアドバイスも忘れてはいない。本来は天使であるお客様と悪質クレーマーとの見極め方のほか、本当に悪質なクレーマーには毅然とした態度をとることの重要性や具体的な対応法も紹介している。

 著者が取引する会社で起こるクレームはさまざまだ。豚料理の注文を確認するために「お客様は豚ですか」と尋ねたところ“豚呼ばわり”されたと怒られたとか、ある水族館のイルカショーに「イルカが思ったよりも上に飛ばなかった」とクレームが入ったといったような一見理不尽に思えるものも多い。そして、クレームの訴え方としては「責任者を出せ」「金返せ」と具体的に要求してくるものから「訴えてやる!」「マスコミに流すぞ!」といった勢いづいたものまでいろいろだ。

 しかし、どのようなクレームに対しても基本の対応方法となるのが、

1.お詫びする
2.共感する
3.事実確認と要望確認を行う
4.解決策を提示する
5.魔法をかける

 の5つのステップだという。

 初期対応が重要となるクレーム対応では、最初にお詫びをすることは必須であると著者は語る。謝罪をすることは自分が悪いと非を認めることになり、余計に相手からのクレームに拍車がかかるのではと思う人もいるかもしれない。しかし、お客様のすべての言い分に対して謝る“全面謝罪”と、お客様の怒りの気持ちに対して部分的に謝罪する“限定付き謝罪”を間違いのないよう、状況に応じて使い分けることで対応できるという。

 また、クレーム対応では、つい下手に出てしまうことはあるものだが、上下関係を作らずに対等なポジションからお客様の意見に共感をすることも重要であると忠告する。

 本書は、このような基本のクレーム対応から、応用して使える対応法まで幅広い解説があり、非常に充実した内容となっている。クレームに対する姿勢はどうあるべきかといった理論的なことはわかっても、いざとなるとどの言葉を使って対応していいか頭を悩ますというケースは少なくない。しかし、頻出クレームに合わせた業界別に見るお詫びの言葉リストやクレーム対応時の事実確認用フォーマット、さまざまなシチュエーション別に見る対応時のセリフや、SNS対策といった具体的な形でアドバイスが紹介されているため、実践的ですぐに活用しやすい。

 すべての人が天使のような人ばかりで常に穏やかに接してくれれば、それに越したことはない。しかし、残念ながらそんな都合のいい社会はない。どうせ、いろいろな人と接しなければいけないのならストレスゼロで生きることができた方が得だ。

 どんなクレームにでも対応できる力を持てると、ビジネスシーンのみならず、プライベートの場でも上手にコミュニケーションが取れるようになるかもしれない。ぜひ、本書で究極のコミュニケーション術を学び毎日の生活に活かしてみてはいかがだろうか。

文=Chika Samon