もし、紫式部が現代のOLだったら…… ニヤっと笑える現代女性あるある

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公開日:2018/5/5

『ニヤっと笑える 超現代風 紫式部OL日記』(BUSON/CCCメディアハウス)

 働く女性は毎朝、メイクをしながら臨戦態勢を整える。家でのまったりモードから仕事モードに切り替えるのだ。仕事にプライベートに大忙しの現代女性にとって自分のことを顧みることのできる時間はそれほど多くない。ほっと一息つけるのは、夜帰ってメイクを落としてから眠りにつくまでのほんのひととき、などという人も多いのではないだろうか。

 そんな女性におすすめしたいのは『ニヤっと笑える 超現代風 紫式部OL日記』(BUSON/CCCメディアハウス)だ。本書の主人公は、題名のとおり源氏物語の作者として知られる紫式部。その式部が、もし現代のOLだったら? という設定で、OLにありがちなイタイ日常がシンプルな言葉でつづられている。

 この本の魅力は、書かれていることはいたって真面目なのに、そこに添えられているイラストがユニークかつシュールであるということだ。OL式部が日記を始めたのは彼氏が欲しいから。28歳のOL式部は、彼氏を作るために何か新しいことを始めようと年始に一念発起する。

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 歴史上の人物としての紫式部は、非常に賢い女性であったと伝えられている。内向的で、物事に敏感で、地味な女性として描かれることが多い。一方、本書のOL式部は日々の出来事にへこんだり、闘志を燃やしたり乙女な気持ちになったりと喜怒哀楽がめまぐるしく変わる女性として描かれている。仕事中に寝落ちしそうになって必死に目を開けていようとするなど、誰でも経験したことのある、あるあるなOL式部の日常に親しみを感じる人も多いのではないだろうか。

 著者のBUSON氏は、長崎県出身で同県在住のイラストレーターである。もともとこのOL式部は、著者がインスタグラムに投稿したイラストの一キャラクターにすぎなかった。OL式部はいかにもインスタグラムから誕生したキャラクターらしく、本書の構成も目次にあたる部分には月ごとの日記のテーマがハッシュタグとともに紹介されている。たとえば1月には、「#スタートダッシュが肝心よね」「#断髪式」「#切りすぎた」「#今年こそ彼氏つくる」などのハッシュタグが。12月までの各月に並んでいるこうしたタグを眺めているだけで思わずニヤっとしてしまう人も多いことだろう。

「あとがき」によるとBUSON氏は、2016年5月からインスタグラムで投稿を始めたものの最初の半年間はまったく「いいね!」も「フォロー」もされない状態が続いたという。ところが、現代版紫式部の日常の投稿を始めるようになってからは徐々に注目を集め、2017年2月にはフォロワーが15万人を突破。2018年4月現在、フォロワー数は19万人を超えている。

 最後に私が気に入ったOL式部の日記を紹介したい。

最後まで諦めなくても成功しないことだってある。でもね 諦めなかった自分がすごく大好きなの

 これは12月25日の日記だ。年初にクリスマスまでに「彼氏をつくる」と決心して一年間奮闘してきたにもかかわらず、成果がなかったときに書かれたもの。

 私たちは仕事でもプライベートでも、具体的な目標を立てそれに向かって頑張ることが求められている。しかし、どんなに努力しても達成できるとは限らない。そうしたときでもOL式部は決して悲嘆に暮れることはない。

 日記に書かれている言葉はどれもポジティブ。年越しそばを食べながら「来年こそは…来年こそは…絶対…彼氏ゲットしてやる…」というOL式部は非常に前向きだ。歴史上の紫式部が実際にはどんな人物だったか、私たちに知るすべはない。しかし、平安時代も現代も人が考えることにそれほど違いはないはずだ。OL式部の姿勢に勇気づけられる人も多いことだろう。

文=いづつえり