美容業界のウソをぶった斬る! 「しない美容」でお金も時間もムダにしない
更新日:2018/5/8
美容やコスメの世界にはさまざまな「定説」と呼ばれるものが存在している。化粧水はケチらずたっぷりと使う、スキンケア化粧品はライン使いが基本、といったものだ。あるいは常識とまでは呼べないとしても、コスメ製品、あるいはメイクやスキンケアのやり方にはそのときどきのトレンドというものもある。流行りのコスメやメイクなどを研究し、積極的に取り入れている人もいるのではないだろうか。
ところが、である。どんなにコスメにお金をかけても、毎日のスキンケアやメイクに時間や手間をかけても、必ずしもきれいになれるとは限らない。「きれいになれる!」と信じて始めたはずなのに、かえって肌の調子が悪くなって「汚肌」になってしまったり、ひどいときにはアレルギーのような一生続きかねない健康被害を被ってしまったりする可能性もあるのだ。
毎日美容にまじめにコツコツ投資しているはずなのに、どうしてこんな報われない結果になってしまうのだろう。
『オトナ女子のための美容化学 しない美容』(かずのすけ/ワニブックス)の著者・かずのすけ氏曰く、それは「世の中に出回っている美容関連の情報がそもそも間違いだらけだから」らしい。
昨今の化粧品や美容の情報は本当に歪んでいるものが多く、ありもしない効果を大々的に標榜しているものや科学的な根拠に乏しいものがたくさんあります。
そして、美容や化粧品に関わる業者はあくまでも営利企業。消費者に商品を売るのが仕事である。本当に効果があるか、健康リスクの可能性といったことは商品の売り上げとは直接関係ないのだ。そのため、消費者の無知につけこみ、不当に利益を得ようとする業者も多いという。
美容化学者である著者は本書の中で、きわめて重要な指摘を行なっている。それは、化粧品がただの「化学物質」であるという事実だ。
化粧品は魔法の妙薬などではなく、あくまでも「化学物質の混ぜもの」です。だからその効果には必ず科学的なメカニズムがあります。
天然の植物エキスだからよいとか、オーガニックなら大丈夫とか、そんな単純な問題ではない。たとえ天然の植物由来のスキンケア成分だったとしても、それが「お肌によい」とされるからには何らかの影響を肌に及ぼしているはずだ。そういった意味では、天然由来のものだろうが化学合成されたものであろうが、化粧品に含まれる成分はすべて「化学物質」なのである。
だからこそ、私たち消費者は、世に出回る美容の「常識」やトレンドに対して慎重に対処しなければならない。間違った情報を鵜呑みにすればお金や時間をムダにするだけでなく、好ましくない化学反応によって肌を傷めてしまう可能性もあるからだ。
爆発的に売れているコスメであれ、モデル推薦の美容法であれ、盲信は誤りのもとである。少なくとも科学的に効果が証明できない、もしくは科学的観点から見たときにヤバそうなものには手を出すべきではないのだ。そして残念なことに、この基準でコスメや美容法を分析した場合、その大半は「手を出すべきではない」ものに分類されることになる。
ちなみに冒頭に挙げた例は、本書によればすべて「誤り」である。心当たりのある人は、自分の中の常識を一度疑う必要があるかもしれない。
他にも、ティントリップ、粘膜アイライン、まつエク、まつげ美容液など「リスキーもしくは効かない」と判定される美容関連グッズ、美容法は枚挙にいとまがない。具体的なNG美容法についてはぜひ実際に本書を読んでその解決法とあわせて確認してみてほしい。
少しでもきれいになりたいと願う女性は多いし(最近では男性も)、実際に努力を重ねる頑張り屋の人もたくさんいる。しかし、せっかくの努力も方向性を間違えてしまえば悲劇である。そして、正しい方向性を決めるのに必須の正確な情報は驚くほど少ない。それゆえに、著者の言うように物事を「正しく疑える能力」を持ち、世の中にあふれる情報を冷静に取捨選択していくことが必要になる。本当の美しさを叶えてくれるのは魔法のように素晴らしいコスメや美容法ではない。聞こえのよい言葉や物事の表面に騙されないだけのクレバーさなのだ。
文=遠野莉子