もはや自宅葬儀は不可能な時代? いざという時に慌てないために…知っておきたいお葬式のハナシ
公開日:2018/5/11
“終活”という言葉をよく耳にする。自分の葬儀や財産分与、お墓、遺言書などをあらかじめ考え、準備をするというものだ。
ほとんどの場合、人が亡くなるのは突然のこと。そして、わずかな時間で様々な手続きを行い、お葬式を行う必要があり、その他にもやらなければならないことが山積みだ。そう考えると“終活”は、残された家族の負担を少しでも軽くしたい、という最後の思いやりなのだろう。
死は必ず訪れる。だからこそ自分のためにも、家族のためにも「縁起が悪い」と向き合わずにいるのではなく、最後の別れの場のお葬式について知る必要があるはず。そこで、葬儀にまつわる経験談や裏話が書かれている『不思議の国ニッポンのお葬式~葬儀屋が語るココだけの話~』(大川誠二/啓文社書房)が参考となる。葬儀会社を経営する著者が、葬儀の現場で見てきた裏話や経験談を語っている一冊だ。
以下に、本書の中でいくつか気になったものを紹介したい。
■亡くなったのが、自宅か病院かで大きな違いが
現在、病院で亡くなる方が多いというが、中には「最期は自宅で」という方がいる。実は、亡くなる場所が病院か自宅かによってその後の手続きが変わってくるという。
病院で亡くなった場合は、医師が臨終を確認したうえで死亡診断書を発行する。一方、自宅の場合は、まず警察に連絡。その後、警察による聴取、遺体の法医解剖を経た後、死体検案書を受け取るという流れになる。自宅であると、一度警察を通さなければいけないため、少々手間がかかってしまうようだ。
ちなみに、葬儀を行うには、死亡診断書・死体検案書のいずれかが必要となり、その後、役所に死亡届を提出し、火葬の許可を取り、お墓への納骨には埋葬許可証が必要となる。
■自宅で葬儀を行うには?
葬儀のほとんどが葬祭場で行われている昨今。だが、自宅で行いたいという人も、まだいるという。その際に必要なのがスペース。祭壇を飾るには12畳ほどのスペースが必要とのことだ。また、遺体を安置し、お棺が搬出できる動線の確保も欠かすことができない。
そして自宅で執り行う際、葬儀屋泣かせなのが、やはりマンションなどの集合住宅。エレベーターのある・なしによって祭壇などの道具の運び出しが大きく変わるだけでなく、一番の課題はお棺。エレベーターがあっても、大きさが足りない場合は階段を使い、時には遺体とお棺を別々に運び出すこともあるそう。自宅で葬儀が可能かどうかは、一度葬儀屋に来てもらった方が良さそうだ。
本書では、他にも葬儀でお経を唱えてくれるお坊さんの実情や介護問題についてなど、お葬式だけでなく、その前後にまつわる様々な話題に触れている。いざという時、あたふたしないためにも、一度腰を据え、葬儀について、ひいては自分の人生についてゆっくりと考えてみてはいかがだろうか。
文=冴島友貴