いくつもの日本一記録を持つ奇跡の村、「日本一小さな舟橋村(富山県)」がスゴイ‼
更新日:2018/5/21
唐突だが、「富富富(ふふふ)」をご存じだろうか? 知っている方はかなりの富山県通。正解は、今秋に本格販売が始まる富山米の新品種名だ。収穫に向けて富山県各地ではいま、田植えが真っ盛り。そんな場所のひとつに「日本一小さな村」として有名な、富山県中新川郡舟橋(ふなはし)村がある。
じつはこの村、子供をもつ家庭がどんどん増えていることから、多くの地方自治体からも注目されている、話題の村なのである。そんな舟橋村の魅力を余すことなく伝えてくれるのが、『奇跡の村・舟橋 日本一小さな村の人口は、なぜ倍増したか?』(富山新聞社報道局編/北國新聞社)だ。
舟橋村は面積が3.47平方キロメートル(東京ディズニーランド7個分)。人口は3064人(2018年4月1日時点、舟橋村役場のホームページ)。この20年で人口は倍増したそうだ(平成17年国勢調査で人口増加率全国第2位)。男女比は、男性1507人、女性1557人でなんとも絶妙にバランスが取れている。そして15歳未満の人口割合は21.8%(平成22年国勢調査)と、堂々の日本1位。立地も意外や意外、へんぴな場所と思いきや、じつは富山駅から電車で15分のベッドタウンでもあった。
この村に子育て世代が多く集まっている理由のひとつは、たしかに地方都市に近いからだ。しかし本書を読めば、それだけが吸引力ではないことがわかる。そもそも、なぜ、これまで市町村合併されてこなかったのか。その理由に、舟橋村の魅力の一端がある。
本書に登場する金森勝雄村長によれば、不利益があろうと併合を避けてきたのは、「教育環境を守るため」だったという。「併合すれば村から小中学校が無くなる。自分たちの子どもはこの村でしっかり教育したい」、そんな村民全員の強い意志の反映だ。
教育熱心なこの村を訪れて、まず驚かされるのは、駅に併設されているのがお土産店などではなく、図書館であることだろう。
ここでもうひとつこの村の誇る日本一データを紹介すると、「住民一人あたり年間貸し出し冊数32冊」(日本の図書館2015)といういささかマニアックなランキングだ。とにかく子供たちは本が好きなのである。否、好きになるよう、親と自治体が一致団結して、さまざまな工夫をしている、というのが正しい表現である。
本書には、この村が小中一貫で取り組んでいる、教育改革のノウハウが多く取り上げられている。例えば小中学生はみんな「読書通帳」をもつ。自分がどれだけ読書をしたか、貯金残高を確認するかのように、読書量が増えていくのが楽しめるツールだ。また、4200冊を所蔵する舟橋中学校の図書室にはタッチパネルがあり、8万4000冊所蔵の村立図書館とネットワークしているため、図書への閲覧意欲がぐっと高まるのである。
舟橋小学校でも、ネイティブスピーカーの講師に、担任と舟橋中の英語教師が加わった3人態勢の英語の授業など、小中が連携した教育体制がとられている。
こうした勉強村の舟橋からは、「40世帯の地区で東大3人、京大1人、一橋大1人を輩出した」「同じ学年で2人が東大に進んだ」などのエピソードが聞かれるそうだ。加えて本書は、アマチュアからプロまで、多くのアスリートも輩出している、まさに文武両道の村であることも教えてくれている。
本書は他にも、育児、産業、高齢者ケアなど、この村の取り組みが多角的にレポートされている。日本一小さい村だけに、村民と自治体がまさに一体となって、赤ちゃんから高齢者までの村民の暮らしやすさを考える。そんな温かみのある村について知りたいと思った方は、ぜひ、本書を手にしてみてほしい。
文=町田光