「新潟女児殺害事件」で考える、子供たちを“100%守るため”に必要なこと

社会

公開日:2018/5/20

 新潟市西区のJR越後線の線路で、近くに住む小学2年生の女の子の遺体が見つかった新潟女児殺害事件。1週間経った14日、容疑者が逮捕されました。これから詳細が次々に明らかになってくるでしょうが、失われた命は戻ってはきません。犯人の身勝手な行動に憤りを覚えるばかりです。不穏なこの時代、親は子供をどう守っていくべきなのでしょうか?

■狙われない子供になる方法はあるのか?

 このような残虐な事件が起こるたび、ネットやテレビでは、今後起こらないようにするにはどうすべきかが語られ、具体案も示されています。たとえば、

・防犯ブザーを手に持って歩く
・知らない人に声をかけられても近づかない
・露出が多い服、派手な服は目に留まりやすいので避ける
・子供の写真などを不用意にネットで公開しない
・登下校時には、名札を裏返す
・名前が書かれた荷物を内側に向けさせる

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など……。

 しかし、これらの対策で犯罪が完璧に防げるかというと、そうではないように思います。なぜなら、この手の犯罪を起こすような人間は、常識的な主観で物を見ていないことが多いからです。

■普通の人っぽく見えるからこそ、怖い

 今回の事件でもそうですが、犯人が逮捕されると、「まさかあの人が」というような人物であることが多いものです。子供時代「明るい子だった」、学生時代は「礼儀正しい青年だった」のように、とてもあのような残酷な事件を引き起こすタイプには見えないことが多いのです。だからこそ、怖い、そう思います。

 彼らの感覚や動機は特殊で、常識的には理解でできない部分も多くあり、私たちが普通の親の感覚で子を守ろうとする術では十分でないこともあるのです。犯人が目をつけるのは、服装や容姿とは限らないからです。

 まして計画的な犯行となると、犯人が狙うのは「一瞬のすき」です。突発的な犯行であれば、服装などが影響することもあるでしょうが、計画的な犯行だと、やはり「一人歩き」という状況が、その子を圧倒的なリスクにさらしてしまうことになります。今回の事件も、下校途中、自宅まであと300メートルという範囲で起きています。「友だちとバイバイした後、この一本道を進むだけ」そんなわずかな距離が狙われているのです。

■「100メートルくらい大丈夫」ではない

 本来であれば、犯罪を起こす側を未然に取り締まるべきなのでしょうが、それが完璧にできないので、善良な市民がそこに囲いを作る形で子供たちを守らざるをえないのが現状です。

 広く行われている集団登下校や通学路のパトロールなども有効ではありますが、犯人が狙うのは、子供たちが自宅付近で一人歩きに入った瞬間です。子供たちが集団で歩いていても、通学路上に大人のパトロールの方たちが立っていても、それでもできてしまう死角があるのです。

「100メートルくらい大丈夫だろう」と思えますが、犯罪を考えている人間からすれば、「100メートルもチャンスがある」と映ります。先ほども書きましたが、彼らは感覚が違うのです。通学路に1か所でも盲点を作ってしまえば、そこを狙ってくる可能性があるということです。

■治安が悪い諸外国での取り組み

 日本よりも治安が悪い海外ではどうしているかというと、さらにガードを固めて対処しています。一般的に、小学校のうちは子供に一人歩きをさせません。

 私が今住んでいるオランダも同様で、親が行きも帰りも学校の送り迎えをする必要があります。名札や服装などの間接的な保護策ではなく、もっと直接的に、子供の単独行動をゼロにすることで、巻き込まれるリスクを回避しているのです。夫婦共働きが多いこともあり、朝夕の送り迎えは大変ですが、でもみなさん何とかやりくりしています。

■通学路に盲点を作らない工夫を

 学校の往復というのは、毎日同じ時間帯に繰り返されるので、子供の行動パターンを読みやすく、犯罪を企てている側にとっては好都合となります。よって、毎日の通学路に盲点を作らないことが犯罪防止につながります。できる工夫としては、

1. 「一人になる地点」まで、親が送り迎えをする
2. 近所の人と持ち回りで子供につきそう

 などが挙げられるでしょう。2つめのパターンは、こちらでもやっている方を見かけます。5つの家庭で持ち回りにすれば、週に1回子供たちを家まで送り届けることになるので、日々の負担は減らすことができます。

 正しい人がなぜこんな思いをしなくてはいけないのかという方もいらっしゃるでしょう。でも1回が取り返しのつかない事態になるケースが多いことを考えると、防犯は100%でないと意味がありません。

 普段、カウンセリングなどでは、「ママは完璧でなくていい」、「80%の力加減でいい」とおすすめしていますが、このようなケースは100%完璧でないと、結局、犯人は盲点をついてくるのです。なんて世知辛い世の中なんだと嘆きたくなりますが、歩く道に盲点を作らない、これしか子供たちを守りきれる策はないと考えています。

文=citrus オランダ心理学会 認定心理士 佐藤めぐみ