三島由紀夫『潮騒』あらすじ紹介。大きな壁を乗り越えて結ばれる純愛小説

文芸・カルチャー

更新日:2023/7/12

『潮騒 (新潮文庫)』(三島由紀夫/新潮社)

 伊勢湾に浮かぶ、歌島という世間から隔絶されたような小さな島。父親を戦争で亡くした18歳の青年、新治は漁師をしながら、貧しい家で母と弟と暮らしていた。ある日彼は、砂浜で見慣れない少女初江に出会う。

 初江は村の有力者の娘であり、養女に出された後に島に戻ってきたばかり。恋を知らない新治は、初江の名前を聞くだけで鼓動が激しくなる自分の感情の正体が理解できずにいた。

 その後何度か顔を合わせた新治と初江は、次第に互いの惹かれ合う気持ちの正体に気づき始める。そして嵐の日、廃屋の中でふたりは裸で抱き合い接吻を交わす。しかし初江は「今はいかん。私、あんたの嫁さんになることに決めたもの」と誓い、新治も道徳的に考え、ふたりはそれ以上の行為を行うことを抑えた。

 新治のことを好いていた千代子が危機を感じ、初江の婿候補とされていた安夫に「ふたりは一線を越えた」と吹き込む。そして悪い噂は島中に広まり、初江は父親によって新治と会うことを禁止される。それでもふたりは恋を諦められない。

 初江の父親は婿を試すために、新治と安夫を甲板見習いとして自分の所有する船に乗せる。船が沖縄で台風に遭遇した際に命がけで船を救った新治の気力が認められ、ふたりはついに結婚を許された。

文=K(稲)