会社の中でデキる上司に選ばれる「部下力」を身につけよう。その秘策は?
公開日:2018/6/4
会社から評価されないことに不満をもつ人の言い分には、「上司に嫌われているから評価されない」というものが多いそうだ。
だがそれについて、本書『いらない部下、かわいい部下』(新井健一/日本経済新聞出版社)の著者は、数々の現場を知る経営コンサルタントの経験から何とも身も蓋もないことを言う。そもそも上司と部下の関係は理不尽なものであり、「待遇や出世は、最終的には上司が部下を『えこひいき』するか否かにより決まる」のだと。
現実は所詮そんなものか、とため息のひとつもつきたくなるかもしれないが、ならば選ばれるようなデキる部下になってやる!と奮起した場合に必要なものは何だろうか?
■これからの時代、部下に求められるものとは?
かつて、実力はなくとも「太鼓持ち」のような社員が上司にかわいがられた時代もあった。そこで重視されていたのは「組織の和」だった。
しかし、もはや「和」のみで勝つことができる時代ではない。今やビジネスの世界では、個人として強くなることが求められている。チームになった時、メンバーの一人ひとりに1以上の実力があれば掛け算の相乗効果を生むが、1未満だと結果的にマイナスになってしまうからだ。その、1以上の実力をもっているメンバーが、上司に選ばれる部下になり得るのだと、著者は言う。
では、1以上の実力を身につけて「部下力」を高め、上司に選ばれるにはどうしたらよいか? 実務能力に長けた「デキる社員」であることはもちろんだが、頭がいいだけの部下はかえって嫌われてしまう。そこで、
・上司から離れたところで、上司を立てる
・時には上司に対しても毅然と苦言を呈する
・上司のノリを理解し、信頼関係を築く
…などといった「+α」をもつ者が、「かわいい部下」として選ばれるのだという。これら「+α」のポイントがなければ、仕事ができる部下とて「いらない部下」扱いになってしまうのだ。
■部下が上司を選ぶ時代になる?
本書はタイトルだけをみれば上司のポジションにいる人目線のようだが、必ずしもそれだけではない。部下に対しても「上司を選ぶ」ことの大切さを説いている(たとえば「君のため」「会社のため」という名目で部下の自尊感情を奪うような上司が手本になることはなく、ついていってもよいことは何もない、と著者は断言している)。ついていくべき“デキる上司”をきちんと見極め、うまく付き合っていくための指南書でもあるのだ。
また、上司・部下の話にとどまらず、副業や起業など、今後の勤め人がどのように身を処していくべきかにも著者の論は及ぶ。その根底に流れているのは、「会社に頼らず、自分自身でキャリアを経営していく」という考え方だ。
サラリーマンは気楽な稼業、と歌われた時代は、遠く過ぎ去ってしまった。あの頃はよかった、と懐かしんでいるだけでは、職場のあり方、働き方が大きく変わっていく現代を生き抜いてはいけないだろう。…と、そんなことを言っている私自身が“選ばれるような部下”であるかどうか、気になってきた。「いらない」認定をされてしまう前に、本書をあらためて読み直し、「部下力」アップに努めるとしようか。
文=齋藤詠月