「唯一無二の友達」が武道館で見た、表現者・東山奈央の変わったこと、変わらないこと――東山奈央×西明日香 特別対談

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更新日:2018/6/5

 3rdシングル“灯火のまにまに”と、1年間の音楽活動を経て自身に訪れた変化を語ったインタビュー前編と、日本武道館での1stライブをガッチリ振り返ったインタビュー後編に続いて、「特集 東山奈央」のラストを飾るコンテンツとしてお届けするのは、声優・西明日香との特別対談だ。この特集を作るにあたり、武道館ライブがあまりに感動的だっただけに、「東山奈央をよく知る人物は、武道館をどう観たのか」が、とても気になった。TVアニメ『きんいろモザイク』で共演し、そのキャストたちで結成されたユニット・Rhodanthe*として長い時間をともに過ごしてきた東山と西は、固い絆で結ばれている。武道館ライブの語り手として、これほどふさわしい人もいないだろう。「人前に出ることが苦手だった」と語る東山奈央が、ステージ上で自然に感情を表現し、ライブ自体を心から楽しめるようになったのは、Rhodanthe*の存在によるところがとても大きい。そしてその先に、武道館で披露した圧巻のパフォーマンスがある。開演前から舞台裏のエピソードも交えながら、「唯一無二の友達」同士であるふたりに、武道館で過ごした時間を楽しく振り返ってもらった。

奈央ちゃんと同じ時代に生まれてよかったなって、ほんとに思う(笑)(西)

――武道館の1stライブはとても感動的でしたね。西さんはどうご覧になってたんですか。

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西明日香:もともと、Rhodanthe*で一緒に活動をしてたときに、「ソロの活動をやるんだあ」って奈央ちゃんから聞いていて。当時、奈央ちゃんはすごく不安そうだったんですよ。ね?

東山奈央:そうだぁ~。もう、見透かされてたんです(笑)。

西:(笑)「自分をみんなにどう見せたらいいのか」「どういう歌を歌っていけばいいのか」とか、そういう悩みを話してもらったときに、わたしの中では「奈央ちゃんだったら大丈夫だよぉ」って思ってたんです。でもやっぱり、奈央ちゃん本人はすっごく不安なんだなって思って。しかも1stライブが武道館で、プレッシャーもあったと思うんですけど、Rhodanthe*の仲間からしてみたら、やっぱり「奈央ちゃんだったら大丈夫!」っていう勝手な自信があって。それで、武道館にご招待されて観に行ってみたら、奈央ちゃん自身もすっごく堂々としてるし、全然プロンプ(プロンプター。歌詞やライブの進行が表示されるステージ上の装置)を見ないし(笑)。お客さんにちゃんと目線を送ったり、配置してあるカメラを見て歌ったり、それって当たり前のことなのかもしれないけど、出る側からしたらすっごく大変なことなんですよ。それに、歌詞をひとりでたくさんの量を覚えるわけじゃん? しかも、ダンスもすごかったし。それを全部、忙しい中で完璧にやってのけたのを見て、わたしたちRhodanthe*のメンバーはみんな「奈央~! なんてすごい子なんだ!」って思いながら観てました。

東山:ありがと~! こんな褒めてもらって、今日の取材はこれで終わってもいいかもですね(笑)。

――(笑)ですね。

西:奈央ちゃんって、すっごく真面目な子なんですよ。「みんなに完璧なものを提供する、それが当たり前だから頑張る!」っていう感じで頑張ってたと思うんですけど――ライブが終わった後に、Rhodanthe*のみんなで挨拶に行ったら、緊張の糸が切れた奈央ちゃんが泣いてたんですよ。それを見て、「この子はものすごい努力をしてきて、ほんとに一生懸命だったんだなあ」って思って。奈央ちゃんはなんでも完璧にこなす子だってわたしたちも思うし、奈央ちゃんのことが好きな人たちもそれを期待してると思うんですけど、奈央ちゃん自身はみんなも想像できないような努力をしてきたんだなあって思うと……なんだろうなあ、奈央ちゃんと同じ時代に生まれてよかったなって、ほんとに思う(笑)。

東山:壮大!(笑)。

西:だからこそ、あんなにライブで泣いたことないなっていうくらい、泣いちゃいました(笑)。もちろん、Rhodanthe*の他の子たちも、みんな目を潤ませて「うう~~」ってなって(笑)。マネージャーさんへの感謝の気持ちも話してたよね? わたしたちは間近で奈央ちゃんとマネージャーさんの関係性を見てたから。しかも、普段は泣かない奈央ちゃんが――。

東山:そうだね、泣いてたよね。 Rhodanthe*は過去3回大きなイベントをやっていて。1回目のときにお客さんからサプライズがあって、他のメンバー4人は泣いてたんですよ。だけどわたしは、まだ心が解き放ていなくて、泣けなくて。ステージ上で泣くのって、ある程度心が自由じゃないとできないんですよね。自分が緊張してバリアを張ってると、喜怒哀楽に素直になれない部分があって。でも、西ちゃんをはじめとしたメンバーのみんなとワイワイ騒ぐのが楽しくて、いつの間にかステージに立つ恐怖心や不安感がなくなっていて、2回目のイベントでは、お客さんからのサプライズに泣けたんです。それは、わたし的には大きなことでした。Rhodanthe*のおかげで、ステージで泣けるようになったんです。

西:そっかあ~。

東山:武道館も、とりわけ緊張の糸がピンと張り詰めていたけど、自然と泣けてきて。「今、わたしは緊張はしてるけど、心はすごく自由なんだなあ」って思いました。そのときも、頭の片隅で「Rhodanthe*のおかげだなあ」って思ってました。

西:そして、わたしたちはその姿を見て号泣してました(笑)。

東山:(笑)Rhodanthe*のみんなが観てくれてるのも、ほんとに支えになっていて。

西:「奈央ちゃんに届け~!」って思いながら、みんなそれぞれRhodanthe*のときの自分のカラーのペンライトを光らせてました(笑)。「奈央~、奈央~」って。そう、武道館でライブのとき、奈央ちゃんの誘い方がほんとにしっかりした誘い方だったんですよ。普通、「来られたら来てね~」くらいの感じだと思うんですけど、かなり前の段階から「皆さん、数ヶ月後の武道館、いかがでしょうか。絶対に来てほしいんですけど」みたいな。奈央ちゃんの本気を感じました(笑)。

東山:すっごい丁寧なLINEを送った気はする(笑)。だって、ほんとに来てほしかったの! みんなが見守ってくれてることに、すごくモチベーションを支えられていたし。Rhodanthe*は5人グループで、諏訪彩花ちゃんを加えて6人グループみたいな感じなんですけど、わたしにとってRhodanthe*はほんとに特別で。そもそもみんな、ユニットを組むのが初めてのメンバーだったんですよ。わたし自身は、『きんいろモザイク』以前まで同世代と一緒にやる作品がなかったんです。だから、業界に友達と言えるような友達もいなくて。初めての女子ユニットってなったときに、「どうなるんだろう? 仲よくできるのかな?」とか、いろいろ考えてたんですけど、Rhodanthe*はほんっとに奇跡のユニットなんです。もともと、『きんモザ』がもうすぐ決まるっていう段階で、当時のマネージャーさんが「『きんモザ』決まりそうなんですけど、イベントがすごく多いです。ほんとにやりますか?」って聞いてくれて。当時、わたしは人前に出るのが苦手だったので、イベントもすごく苦手で、終わった後に倒れちゃったりしてたんですよ。

 だけど、英語を活かせる役をどうしてもやりたかったので、不安要素はあるけど「やりたいです」って踏み出して。最初のほうはRhodanthe*のイベントに出ても、楽屋でぐったりしてたんです。でも、みんなもそんなわたしのことをわかってくれて、そのうちイベントが苦手じゃなくなってきて。それはやっぱり西ちゃんの存在がわたし的にはすごく大きくて。もう、笑いの神様なんです(笑)。みんなを楽しませるエンターテイナーで、ステージ上でも楽屋でもずっとニコニコしてるんですけど、やっぱりリーダーなんですよね。大きなステージに立つときも、わたしは緊張するとムッと黙っちゃってカチンコチンになっちゃうんですけど、西ちゃんはむしろニコニコしてて、口数がすごく増えるんですよ。

西:「緊張するな~、緊張する~!」って、うるさくなるんだよね(笑)。

東山:(笑)それに、わたしはすごく救われて。ひとりでは成し遂げられないことも、西ちゃんや他のメンバーがいれば乗り越えられるって思ってるし、すごく大きな存在です。しかも、みんなほんとに面白いんですよ。Rhodanthe*は、「芸人ユニット」って言われていて(笑)。わたし自身は面白いことが言えなくて、大喜利とかも苦手だったんですけど、ユニットでイベントをするときは自分ひとりじゃなく、ユニットみんなで作り上げたものが楽しければそれでいいんだ、お客さんが満足してくれたらそれで正解なんだって思えるようになって。それからは、自分の中でも無理をしなくなって、面白くしゃべれるようになって。そうさせてくれたのは、Rhodanthe*のみんななんです。

西:うんうん。

東山:ほんとに、唯一無二の友達です。もともとぼっち気質だったわたしが、業界で友達ができたことは、ものすごく大きな出来事でした。それこそ、1stアルバムの“君と僕のシンフォニー”を作るときに、「東山さんが歌いたいものはなんですか?」って聞かれて、「恋愛でも夢でもなく、友達のことを歌いたいです」って言って、Rhodanthe*のことを思って歌ってるんです。そのことを、ちゃんとRhondanthe*にも伝えていました。

西:奈央ちゃんがライブで“君と僕のシンフォニー”を歌ってくれてる間、Rhodanthe*のみんなで「これ、わたしたちの曲! わたしたちに向けてくれたんだ、ん~ふ~!」ってドヤってました(笑)。

東山:(笑)歌詞に込められてる意味が、すごく深いんです。最初は「友情をテーマで作ってください」って言って、さらに輪を広げてお客さんやこの業界で出会った人みんなを含めた、武道館で歌う歌としてふさわしい曲になっていって。

西:聴いてるみんなが「自分のことだ」って思えるような歌詞なんですよね。ほんとにすごいなって思いました。イベントが終わった後に、奈央ちゃんが「ちょっと疲れちゃった」みたいな感じになることはわたしたちも知ってたんですけど、奈央ちゃんのそういう真面目なところって、Rhodanthe*にとってすごく必要で。初めてイベントをしたとき、右も左もわからなくて、「どうやってこのイベントを終わらせよう?」みたいな感じだったんですよ(笑)。自分たちがユニットを組んで主題歌を歌いますっていう発表をしなきゃいけなかったのに、司会の人もテンパって(笑)、奈央ちゃん以外の4人も、みんなそのことが飛んでたんです。そうしたら奈央ちゃんが「そういえば! わたしたち、このアニメの主題歌をRhodanthe*として歌わせていただくことになりました~!」って発表してくれて、みんなも「うわ~!」ってなって。そのときに「奈央さん…!」と思って(笑)。「なんてしっかりした子なんだ、もうこの子についていこう!」と(笑)。奈央ちゃんって、しっかりしたところも持ち合わせているし、最年少らしく甘えてくれることもあって、それがほんとにかわいくて。「奈央~、奈央~」って言いながら、みんなの末っ子みたいな感じで接してたんですけど、今思い返してみると、武道館で大成功を収めるライブができるのは、やっぱり奈央ちゃんだからだなあって思いますね。

東山:いやあ、でもRhodanthe*がいなかったらこんなふうにはできなかったし、たぶん誰にも心を許せなかったと思う。

西:誰にも心を許せないって! 孤高の奈央になっちゃうの?(笑)。

東山:「仕事ですから」って感じで(笑)。今でこそみんなあだ名で呼び合っていて、 田中真奈美ちゃんは「まなみん」って呼んでるんですけど、わたしは最初「仕事ですから」の気持ちが強くて、「まなみんさん」って呼んでたから(笑)。「親しき仲にも礼儀ありですから?」みたいな(笑)。

西:あははは!

東山:だけどイベントとかで同じ喜怒哀楽を共有した仲間だからこそ、今は「隠すことなど何もない」みたいな感じで話せるし、みんなが心を解き放ってくれたからお客さんとも交流できるようになったし。西ちゃんが「お客さんの目を見てライブをしてた」って言ってくれたけど、最初の頃はお客さんの目を見ていても、心の交流はできていなかったと思います。だけど今は、人の目を見ることが怖くなくなったし、Rhodanthe*と一緒にいたから今があるんだろうなって思います。

――ライブのエンディングでも、「全員と目を合わせた!」って言ってましたね。

東山:うん、それが目標でした。

西:奈央ちゃんが動くたびに、近くのお客さんもわ~~って盛り上がって、奈央ちゃんに少しでも近くっていう感じで動いてたので、それを見て磁石と砂鉄みたいだなって(笑)。観ていて感動しました。い~っぱいいるお客さんが、みんな奈央ちゃんを目当てに来たんだなって思ったら、自分は何もしてないのになんか感慨深くなっちゃって(笑)。Rhodanthe*のみんなで「もう、ひとりひとりにありがとうって言いたいよね」みたいなことを言ってました(笑)。

東山:保護者だ(笑)。