今読み返したい平尾誠二の熱い言葉。支配型・強権型のリーダーシップでは一番になれない
公開日:2018/6/6
ラグビーの日本代表監督などを歴任しながら惜しくも2016年に53歳で亡くなった平尾誠二氏。彼の過去の著作やインタビュー記事などからの言葉を集めた1冊が『平尾誠二 人を奮い立たせるリーダーの力』(マガジンハウス:編/マガジンハウス)だ。
本書は、「強い組織」「強いリーダー」「強い個」を作る方法から、「強い日本人」になるための言葉をまとめたもの。スポーツ関係者にとどまらず、ビジネスマンでも彼の言葉を応用できると気づくだろう。
ここでは、「強いリーダーをつくる」という章から、平尾氏のリーダーシップ論をいくつか紹介していきたい。
●支配型・強権型リーダーシップでは、10番になれても、1番にはなれない
日本のあらゆるスポーツの強豪チームの中に、支配型・強権型の指導者のもとで選手を鍛えているところがあるという。平尾氏はそれでは絶対に「1番」にはなることはないと断言する。
なぜなら、支配型・強権型のリーダーシップのもとでは、選手が自主的に考えて判断したり、行動したりする機会が奪われているからだ。たしかに支配型・強権型のやり方で成長する部分もあるが、それ一辺倒の指導方法では「10番止まり」だろうと彼は言う。
●嫌われたくなかったら、リーダーをやめたほうがいい
平尾氏は、リーダーであることについて「ある程度嫌われるのは仕方のないことだ」と言う。人は誰しも「好かれたい」「嫌われたくない」という気持ちを持っている。しかし、リーダーや上司の立場として、チームを良くしていくためには、嫌われるような場面はどうしても避けられない。上司やリーダーは、必要に応じて部下の進退を決めなければならない。それはどんな集団や組織でも同じことだ。嫌われるのを怖がっていては、リーダーは務まらないのだ。
●媚びない、キレない、意地を張らない
伏見工業高校時代、平尾氏はチームのキャプテンとしてもがき苦しんだ。それを通して学んだキャプテンの条件が「媚びない、キレない、意地を張らない」だ。
媚びて、周囲へ迎合したり、すり寄ったりするのは、自分に意志がないことの表れだ。キレるのは一瞬の鬱憤晴らしに過ぎず、それでは前に進むことができない。意地を張らないのは、一見「媚びない」と矛盾しているように見えるが、「妥協する」のではなく「折り合いをつける」という意味だ。それは我慢に近い。「妥協」は更なる「妥協」を生むが、「折り合い」は新たなスタートを切ることができる。
いかがだっただろうか。平尾氏本人のさまざまな体験に基づいた言葉には、どれも強い説得力がある。
本書は平尾氏の写真も多く紹介しながら、ひとつのキーワードについての解説が2~3ページずつと読みやすい作りになっている。またリーダーシップ論だけではなく、個人としてのモチベーションについてや、人との付き合い方、子どもの叱り方など幅広いトピックが1冊に詰め込まれている。平尾氏が残した力強いメッセージを多くの人にぜひ知ってほしい。その言葉に、きっと背中を押されることだろう。
文=ジョセート