榮倉奈々「不思議な夫婦のやりとりですが、理解しようとする姿勢がある。そこが素敵だなって」
公開日:2018/6/6
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、「yahoo! 知恵袋」伝説の投稿から始まったコミックエッセイの映画化『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』に出演している榮倉奈々さん。映画は、最高に愛おしい夫婦のラブストーリー。死んだふりを繰り返す妻・ちえを演じた榮倉奈々さんが本作に寄せる思いとは――。
家に帰って、妻が死んだふりをしていたら、夫はまず驚く。しかし、それが毎日となるといかがなものか。ある時はワニに襲われ、またある時は落ち武者となり、次から次へと繰り出されるバリエーションの豊富さには感動さえ覚えてしまう。
「どの扮装もとても丁寧に作りこまれていて、結構時間がかかっています。完成度が高くて“主婦にここまでできるかな?”みたいなものもあって、逆に崩していったりもしました。脚本で読んだ時はあんなにリアルなワニが出てくると思わなかったですし、落ち武者の扮装に関しては中剃りの完成度が高くて時代劇のようになってしまったので、パーティグッズのカツラにしませんか?と私から提案させていただきました。撮影現場で相談しながら進めていくことが多かったので、スタッフさんが考えたちえさんのイメージを発表しあっていく過程がおもしろかったです。死んだふりというアプローチは少し不思議ですが、ちえさんに対しては立派だなという思いのほうが強いです。愚痴っぽくなく、自分も楽しみながら、大事なものを大事にするために動いている。不器用だけど、ぶれていない。芯の強い女性だと思います」
バツイチの夫・じゅんを演じたのは安田顕。
「じゅんさん、やさしいですよね。試写を観た方からは泣いたよって声も結構聞きました。設定はコミカルですが、ふたりは真剣そのもので、お互いを思いあっている。笑わせようとしていないですし、泣かせようともしていない。そこがいいですよね。素敵な夫婦だと思います。安田さんとは、私が19歳の時に初めて共演させていただいたのですが、その時から全然関係性が進歩していないです……(笑)。私から見た安田さんは、つかみどころのない方、という印象です。大人ですし、楽しませようとしてくださっているのかな、と思うのですが、今のは本音? それとも冗談? 笑っていいのかなって、いまだにミステリアスな存在です(笑)」
結婚3年め。死んだふりを繰り返す妻に戸惑いながらも、夫はその真意を探ろうとする。
「不思議な夫婦のやりとりですが、理解しようとする姿勢がある。そこが素敵だな、と思います。まったく違う人間同士が家族になって、今まで歩んできた人生も全然違うから感覚だって違う。でもそれを尊重して受け入れ合うことが大事なのかな、と思いました。この映画には、いろんな夫婦が出てきます。クリーニング屋にいる近所のおばさん夫婦のデコボコですが家族として成り立っている感じもいいな、と思いましたし、お父さん夫婦、佐野さん夫婦にも、それぞれの普通があるんだな、ということをあらためて感じました。ほとんどが実際にあったことだと聞いて、面白い夫婦がいるな、どんなかたちがあってもいいんだなって勇気づけられました。いつか会ってみたいです。そしてこの映画を観た感想をうかがえると嬉しいです」
(取材・文:瀧 晴巳 写真:下林彩子)
映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』
原作:K.Kajunsky 漫画:ichida 監督:李 闘士男 出演:榮倉奈々、安田 顕、大谷亮平、野々すみ花ほか 配給:KADOKAWA 6月8日(金)より全国ロードショー
●「yahoo!知恵袋」に寄せられた伝説の投稿から始まったコミックエッセイの映画化。毎日死んだふりで夫(安田顕)を出迎える妻のちえ(榮倉奈々)。戸惑いながらも、バツイチの夫はその真意を探ろうとする。結婚3年目の夫婦が一風変わったコミュニケーションから見つけ出した答えとは。
(c)2018「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会