PDCAではなくこれからはDCPA! 12回も転職したビジネスマンから学ぶこと
公開日:2018/6/11
最近のビジネス書の多くには「これからは転職の時代」「副業をしてリスクを回避するべし」と書かれているが、それを“自分事”と捉え、実践できている人はどれくらいいるのだろうか。「いずれは転職するかも」とぼんやり考えていても、「今の会社はしばらく潰れなそうだから…」と考えることを先送りにし、「そもそも自分は会社を辞めてやっていけるのか…?」と不安を感じている人も多いはず。
本書『どこでも誰とでも働ける――12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール』(尾原和啓/ダイヤモンド社)は、そんな人たちのために、具体的な転職の考え方、さまざまな職場で通用する仕事術を紹介している。新卒でマッキンゼーに入社し、その後NTTドコモやリクルート、グーグルなど12社を渡りあるいてきた著者だからこそ、ひとつの現場での文化にとらわれない、フラットな目線からの提言ができる。
■転職は「目的」だけではなく「手段」
著者によれば、転職(就職を含む)には、大きくわけてふたつの種類があるという。ひとつは、純粋にその会社で働きたいという動機からくる転職(=目的としての転職)だ。そしてもうひとつは、自分のやりたいことを実現するために、スキルや能力を高めるための転職(=手段としての転職)。
たとえば、著者がグーグルに転職した理由は、そこでどうしてもやりたい仕事があったというよりも、英語のスキルを身に着けるためだったという。英語を仕事で使うことでそのスキルを高め、その後グローバルな市場で活躍するための準備をしていたのだ。著者は、こうしたより個人的な動機に基づく転職――自分のスキルや知識、人脈、外向きの肩書を手に入れるための“手段としての転職”も、もっとあっていいはずだと主張する。そのほか、転職の際に、業界や業種、会社の規模などをどう選んでいくべきか、具体的な転職ノウハウも語られている。
■PDCAサイクルはもう古い? これからは“DCPA”
仕事におけるフレームワークの紹介も豊富だ。たとえば、PDCAサイクルについて。これは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の頭文字をとったもので、このサイクルを何度も回していくことで最適な答えが見つかるというもの。しかし、著者によれば、このやり方はもはや周回遅れになりつつあるという。なぜなら、変化の激しいネット時代においては、Plan(計画)に時間をかけているうちに、当初の状況が変わってしまうリスクがあるからだ。それよりも、とにかくどんどん実行していき、あとから軌道修正をはかる“DCPA”がより適切だという。Do(実行)とCheck(評価)を短期間で繰り返すことで、できる限りはやく結果にたどりつくことができる。
転職や副業に踏み込みづらい理由は、終身雇用が前提であった時代とは違い、個々の動きが多様化していく中で、身近に明確なモデルケースが少ないことにもあると思う。本書で語られる転職や仕事の考え方は、その代わりになってくれるものだ。20年後には、著者のように10回以上転職することが普通…とは言わないまでも、そこまで珍しいことではなくなっているかもしれない。
文=中川 凌