「インフルエンサー」って何する人? 消費者と企業を結ぶ新しい三角関係
公開日:2018/6/11
インターネットは私たちの周りのあらゆるものや環境を変えつつあるが、広告や宣伝も例外ではない。今はSNSの情報によって人の心理や行動が変化する時代。あなたの会社の広告戦略を考えるうえで、SNSは無視できるだろうか。
今、消費活動の背景で何が起きているのか、それに対して企業が考えるべきことは何か。これについて教えてくれるのが、本書『買う理由は雰囲気が9割 最強のインフルエンサーマーケティング』(福田晃一/あさ出版)だ。SNSから人はどんな影響を受けていて、そして、SNSを使って何ができるのだろう。
■インフルエンサーが購買活動に与える影響力
2017年は「インフルエンサー元年」と言われている。インフルエンサーとは、ネット上で大きな影響力を持つ人のこと。一般人出身のインフルエンサーでも1万人を超えるフォロワーに支持される人も既に多数いる。調査で「信頼できる情報源」について尋ねたところ(複数回答可)、“直接の知人でないインフルエンサー”は49%で、“友達や家族”の56%と僅差に迫ったそうだ。今や情報は内容そのものではなく、情報の発信源によって選ばれる時代がきつつある。
自分たちの購買行動を振り返っても納得できるが、消費者は今、企業からの押し付けではなく、自分で主体的にモノを選びたいと考えている。企業から「いい」と言われたものではなく、自分が「いい」と思うモノを選び、購入したい。では、何をもって「いい」と判断するのか? そこには、極めて曖昧な「雰囲気」のようなものが存在している。
だが、「雰囲気」とは何だろうか。たとえば、“なんとなく”そのモノが自分に似合うように感じる――それがまさに「雰囲気」だ。現在消費者の多くは、モノの良し悪しや付加価値がありそうだという雰囲気を、マスメディア広告だけでなく、SNSの投稿からも判別する。そこには、広告にはない、リアルで親近感の湧く表現があるように感じられるからだ。とりわけ、共感して、憧れの対象でもあるインフルエンサーの投稿は、多くの人に影響を与える。インフルエンサーたちと同様の素敵な体験が可能になる、それを夢見てモノやサービスを購入するというわけだ。
■企業は、インフルエンサーの力をどう活かす?
企業は、インフルエンサーを使って広告・宣伝を行う場合、どうしたらよいのか。インフルエンサーにPR広告を依頼した場合には、投稿に「PR・広告」であることを表示するのが原則だ。だが、広告だと読んでもらえないかも、と心配する必要はないらしい。フォロワーたちは広告だからという単純な基準では投稿を判別していないというのだ。そこにインフルエンサー独自の世界観が表現されているかどうか、リアルに感じられるかどうか、共感できるかどうかで、自分にとって価値ある情報か否かが決まる。
また、モノ・サービス自体を露骨に見せるのではなく、それを使っている人や雰囲気、空気感を見せていく表現をすることで、商品の素晴らしさが「人(インフルエンサー)」を介して伝わる。その商品をいかに自分の生活の中に溶け込ませ、自由に楽しんでいるか。つまり、頼まれたからやるのではなく、その商品に興味を持ち、本当に気に入ったから人にも勧めたいという湧きあがる情熱こそが、共感される投稿の決め手になる。そのためには、企業があれこれ指定をするのではなく、インフルエンサーに任せることが重要だ。受け売りの言葉ではなく、いかに「自分のこと」として伝えていくかが、人々に共感される広告の鍵となる。
「もう昔のように『企業と消費者』という二項対立は成り立っておらず、SNSを手にした消費者は消費もすれば宣伝もする、ひいては企画開発すらしてしまう」とあとがきで述べられているように、企業と消費者の関係は急速に変わりつつある。SNSを取り入れたい企業の方、あるいはインフルエンサーになりたい人にも一読をおすすめしたい。
文=高橋輝実