第37回『水にまつわるエトセトラ』/森田哲矢(さらば青春の光)連載
公開日:2018/6/15
5月病が吹っ飛ぶぐらいのスキャンダラスな事件が相次いでいる今日この頃。
それらをただ指をくわえて見ていることしかできない現状にイライラしながら、今日もペンを執っている次第でございます。
本来なら今報道されているゴシップの裏側を色々と書きたいのですが、僕に許された行為は、日常で起こる自らのクソゴシップをここでぶちまけるのみ。
日に日にファンが減っていくだけの現状に嫌気がさし、誰かを道連れにでもしないとやってられない、という思いで書いたのが先月の保科さんのコラムでした。
そして、そのフラストレーションは消えることはなく、今月も誰かに生け贄になってもらわないとやってられません。
しかし、保科さんのような異業種の方をこれ以上巻き込むわけにはいきません。
となるともう今月はあの男にお願いするしかありません。
既に幾度となくこのコラムに登場し、数々の死線を共にくぐってきた3年先輩の親友、BKBことバイク川崎バイク。
今月は彼の身に起きた悲劇を、生け贄として皆様に差し出そうと思います。
B「次の土曜日何してる?」
森「夕方ぐらいに渋谷で打ち合わせ終わると思いますけど、どうしたんすか?」
B「2年ぐらい前にお前とピアノの発表会みたいなん観に行ったの覚えてる?」
森「なんかバイクさんの知り合いの女の子が出てたやつっすよね?」
B「そう、その子から最近めっちゃ飲みに行こうって誘われんねんけど2対2とかで飲みに行かへん?」
おっさん二人でピアノの発表会を観に行ったキモさは今はとりあえず置いといて、チビで出っ歯のおっさんメンタル童貞という、僕のドッペルゲンガーと言っても過言ではない男に、そんなことを言ってくる女子なんているのか?
そう思いながらも、その愛嬌と人の良さから、一部の女子から局地的人気を誇っている場面も何度か目にしたことのある僕は、変につっかかって機嫌を損ねられるのも嫌だったので、バイクさんからの飲みの誘いを快く了承しました。
B「先月ぐらいにめちゃくちゃ久しぶりに連絡きてさあ、今ずっと週2ぐらいで誘われてんねんけど中々スケジュール合わんくてな」
「変な女すね?」とは、とても言えないぐらいイキりながら言ってくるので、ひとますスルーしていると、
B「ずっとやり取りしてるうちに、なんかちょっと好きになってきたかも……」
という気持ち悪いことを平然と打ち明けてくる38歳、いや38ccのバイク。
僕のほぼドッペルゲンガーではあるものの、僕と唯一違う部分は、彼は中々の恋愛体質なので、すぐに人のことを好きになる傾向があります。
2年会ってない女の子とのLINEのやり取りも、彼にとっては『メッセージ・イン・ア・ボトル』ぐらい壮大な恋愛にすり替わるのです。
B「この前なんて昼ぐらいに『今何してるんですかー?』とか連絡きてさあ。ピアニストやのにめっちゃ積極的やねん。オレほんまにちょっと好きになりそうかも……」
ピアニストに対する大いなる偏見を展開してきましたが、とりあえず飲み会には参加したいので、38歳の恋バナを真面目に聞いてあげる36歳の僕。
B「一応言っとくけどオレがやり取りしてる子を狙うのだけはやめてな。まあ向こうもオレ狙いで来るとは思うねんけど」
どの顔が言うてんねん!という言葉をグッと堪え、
森「僕はSEXできたらなんでもいいっす!」
と、はつらつと答えるクズ。
そして土曜日。
渋谷で打ち合わせを終えた僕は、バイクさんと合流し、夜の飲み会まで少し時間があるので、喫茶店で二人でお茶をしながら作戦会議をすることにしました。
僕達が座った隣の席では、ねずみ講の説明会なるものが繰り広げられていました。
金を稼いでる風の幹部の人間が、入れ替わり立ち替わりで次から次へとやって来る大学生ぐらいの子達に対して、嘘のような早口で契約書の内容を読み上げます。
その読み上げが終わると、必ずどの大学生も契約書にハンコを押していくその光景は、こんなどぶネズミ2匹の目にも痛々しく映ります。
いつの時代にも存在し、“ネットワークビジネス”というスマートな呼び方が定着した現在でも、いざその光景を目の当たりにすると、やはり複雑な気持ちになります。
飲み会の作戦会議をしたいが、隣のねずみ講の光景が気になりすぎて集中できないどぶネズミ2匹。
するとサングラスバンダナネズミがおもむろに口を開きました。
B「ムカつくわー」
隣に聞こえるんじゃないかと思うほどの声量と、いつになくマジのトーンのバイクさんに違和感を覚え、少し緊張する僕。
森「ど、どうしたんすか?」
B「どいつもこいつもアホみたいにハンコ押すやん? マジで全員助けてあげたいわ」
森「いや、別にほっといたらいいじゃないすか? 全ては自己責任なんすから。それにこんなとこで変に揉める方がしんどいっすよ?」
B「全員に目覚ませって言ったろかな?」
森「な、何言うてんすか?ほんまにどうしたんすか?」
いつもならバカに出来る空気なのですが、本当に真剣な目つきで言うバイクさんへの対応に戸惑う僕。
そして、その謎を解く衝撃の事実がバイクさんの口から打ち明けられました。
B「オレも20歳ぐらいの時、40万円の浄水器買わされてん」
驚愕の事実でした。
彼があんなに怒っていたのは、自らもねずみ講の被害者だったからなのです。
僕は全力でバカにしました。
なんなら飲み会の時間が来るまでバカにできました。
このビジネスの基本は、まず友達から紹介された高額の商品を自分で買い、次は自分の友達にもこのビジネスを紹介し、同じく高額の商品を買ってもらい、その数%が自分の懐に入り、またその友達が紹介した次の人間が買った数%が入るという、どんどんと枝を作っていくというシステムです。
バイクさんは、その人の良さにつけこまれ、かつて40万の浄水器を友達から買ってくれと言われ、断ることが出来ず買ったものの、自分は友達をそんな目に遭わせたくないという良心により、結局誰にも紹介できないまま、諦めてただただローンを払い続けたらしいです。
ドブ水ではなく、一応は綺麗な洗浄水を飲んできた悲しきネズミ。
彼はひっきりなしに現れ、何の疑いもなく契約書にハンコを押していく若者達に、過去の自分の姿を照らし合わせていたのです。
B「全員マジであの時のオレ見てるみたいやねん」
真剣な顔で言うバイクさんに笑いが堪えれない僕。
そうこうしているうちに、飲み会の時間が近づいてきました。
すると、バイクさんがこれまた衝撃の事実を打ち明けてきました。
B「ごめん、言うの忘れててんけど、もしかしたら向こうが一人で来るかもやねん」
森「はぁ?」
B「いや、オレはお前連れて行くってことはちゃんと言ってんで? でもそう言ったにもかかわらず向こうは一人で来るみたいな感じ出してくんのよ」
森「いや、意味分かんないっすよ!」
B「もしかしたらオレが他の女子を狙うのを阻止したいんかもな? まあそれはそれで可愛いねんけどな」
森「そんなことある? バイクさんすよ?」
B「いや、もしかしたらの話やから。多分誰か連れて来るとは思うねんけどな」
急に嫌な予感がしてくる僕。
B「ただ万が一向こうがほんまに一人で来た場合はオレだけお持ち帰りって感じになってまうけど、それはごめんやで?」
さっきまでのねずみ講への怒りが嘘のように急にイキり出すバイク。
そして僕の不安は更に加速することになります。
向こうが予約してくれたお店に予定の時間より少し早く到着した僕たち。
店の佇まいからして明らかに高そうな高級焼肉店。
森「いやなんちゅう店予約してんねん」
B「店選び任せるんじゃなかった……」
そして知らされる僕への最後通告。
店員「3名様でご予約の◯◯様ですね?こちらどうぞ」
3名様って言ったやん?3名で予約してるやん?
B「ごめん……」
歩きながら前を向いたまま、ぼそっと呟くバイク。
部屋に通されると、高級な和紙が3枚だけ敷かれ、その上に箸やタレの入った器が置いてありました。
詰んだやん……
絶対一人で来るやん……
僕は全ての気力を奪われ、バイクさんに言いました。
森「オレ帰ろかな?」
すると、
B「まあ飯だけ食ってったら? ほんで頃合い見て2人っきりにしてくれたらええけど?」
失意の僕をよそに、俄然イキるバイク。
先輩相手に手が出そうになるのを必死に堪える僕。
しかし、そんな彼が不安な表情を浮かべたのは、メニュー表を見た時でした。
B「むっちゃ高いやん……」
そう、やはり店の佇まい通り、むちゃくちゃな高級焼肉店でした。
そして、芸人の世界には『後輩の飯は先輩が絶対に奢る』という鉄の掟があります。
B「森田、やっぱり帰ってもええで?」
森「いや、やっぱり居ますわ」
そう、この後自分だけSEXするかもしれない男を、ただ野放しにしておくわけにはいきません。
少しでも彼の財布にダメージを与えるべく、僕は店にとどまる決意を固めました。
そして、当たり前のように一人で現れたピアニスト。
悪びれることもなく、なぜもう1人連れて来なかったのかの説明もありません。
どことなく、僕に対して「なんなら私は1対1が良かったんですけど?」の目を向けているような気もしました。
しかし、2年前の発表会の楽屋挨拶以来の再会でしたが、
あれ?こんなに可愛い子やったっけ?
と思わざるを得ないほどの可愛らしい見た目。
こんな可愛い子がなんでバイクやねん?
と、イラつく僕と明らかにテンションの上がるバイク。
そして、ダサいと思われない程度に、それなりに高い肉もチョイスしながら注文するバイク。
そして、謎の2対1の会食が始まりました。
僕のモチベーションとしては、奇跡的にAVみたいな展開になることを願うしかありませんでした。
B「お久しぶりですね」
ピ「発表会以来ですもんね。すいません、何回も誘っちゃって」
B「全然大丈夫ですよ。むしろ僕ももっと早く会いたかったんですが、スケジュール全然合わなくてすいません」
相手への好意を伝えながらも、仕事忙しいアピールもしっかりするという完璧な返答を見せるバイク。
僕達は、発表会の日のことを振り返ったりしながら、久しぶりに会った緊張感をほぐす為のアイドリングトークに勤しみました。
おしゃべり出っ歯関西人2人の圧がしんどかったのか、なんとなくまだ口数が少なめのピアニスト。
しかし、美味しい肉に舌鼓を打ち、お酒も入ってきたところで、僕は少しだけ踏み込んだ質問をしてみました。
森「結構バイクさんのこと誘ってたんですよね?」
ピ「そうなんです。バイクさんに会いたかったんです」
B「ヒィア」
僕の問いに対するピアニストの最高の答えに、照れ隠しのヒィアで対応したバイクでしたが、実際内心はヒィーーーーーア!だったに違いありません。
今日は完全に自分の出る幕ではない、と自覚した僕は、親友へのアシストを決意し、更に踏み込んだ会話を続けました。
森「ちなみになんですが、彼氏はいるんですか?」
ピ「彼氏は……います……」
B「え?」
GAME OVER
まさかこんなにもあっさりとゲームオーバーになるとは思いませんでした。
しかし、ここであっさり引き下がらないのが僕達ゲスです。
彼氏がいるにもかかわらず、バイクさんに会いたかったとはどういうことなのか?
ゲスならではのプロファイリング結果がすぐにはじき出されました。
彼氏がいるにもかかわらずバイクさんに会いたかったんです女子=彼氏がいても性に関しては貪欲なほうなんです女子=だから今日は彼氏の事なんて忘れて抱いてください女子=なんならこの際森田さんも一緒に楽しみましょう女子=わたし実はそういう複数の方が興奮するんです女子
これがゲスファイリングによって導き出された最低の答えです。
要するに、男側から見れば何らややこしくなく、割り切った関係を提案してくれる、ワンナイトカーニバルへの最重要人物だということです。
しかし、恋愛体質のバイクさんには、彼氏がいるという事実は少しショックだったかもしれないと心配しましたが、今回はしっかりとワンナイトカーニバルを見据えた目をしていました。
バイクさんも少しずつ大人になってきてるんやなぁ。
と、感慨深い気持ちになったと同時に、
ほんまにAVみたいな展開もあるかもしれん!そうなったらまさにカーニバルやで!
と、思いながらまた会話を続けている時でした。
B「ピアノはまだやってるんですか?」
ピ「奏者としては引退しました」
B「そうなんですね。え? 今は何かされてるんですか?」
ピ「今は週2回ぐらいで子供達にピアノを教えてるんですよ」
この会話に妙な違和感を感じた僕は、彼女に質問しました。
森「え? 週2で子供にピアノを教えるだけで食っていけるんですか?」
ピ「いえ、まあ他のこともやりながらって感じです」
少しだけ変な空気が漂いました。
森「他のことって何してるんですか?」
ピ「……」
更に変な空気になっている理由が僕達には全く分かりませんでしたが、
もしかして風俗か?
やとしたらカーニバル確定やぞ?
という期待も相まって、デリカシーのかけらもなく、更に質問する僕。
森「え? なにしてるんですか?」
ピ「まあ、ちょっと……ビジネスを……」
ん? ビジネス?
嫌な予感がしました。
完全に変な空気になっていましたが、この嫌な予感の正体を突き止めたい僕は更に続けます。
森「ビジネスって僕らも一応芸人というビジネスですよ? 何のビジネスなんですか?」
ピ「まあ、追い追い」
森「追い追い?」
彼女は怪訝な表情を浮かべ、早くこの話を終わらせてほしそうにしていました。
しかし、そうすればするほど、嫌な予感の正体を突き止めたい気持ちは加速します。
森「もしかしてですけど、風俗ですか?」
ピ「違います。そんなんじゃないです」
そこはしっかりと否定してくる彼女。
しかし、風俗という可能性が消えたことで、嫌な予感は更に膨らんでいきます。
B「まあまあ森田、別にええやんか」
バイクさんも、“ビジネス”という言葉がひっかかり、僕と同様に嫌な予感を感じていましたが、彼はその嫌な予感の正体から目を背けようとしていました。
しかし真実を追求したい僕は逃がしません。
古畑任三郎ばりにねちっこく追い詰めます。
森「なんか会社に勤めてるんですか?」
ピ「会社に勤めるって感じではないんですが……」
勤める感じではない?
森「じゃあ自分で会社やってるとか?」
ピ「会社はやってないですが、自分で動いてるっていうか……」
自分で動く?
森「結構稼いでるんですか?」
ピ「まだ全然稼いではないんですが……」
まだ? てことはゆくゆくは稼ぐ可能性のある仕事?
嫌な予感は払拭されるどころか、どんどんと正解のほうに近づいていってるような気がしました。
さらに核心に迫ろうとする古畑。
ここからは脳内で古畑任三郎のBGMを再生しながらお楽しみください。
森「ちなみにそれは販売の仕事ですか?」
ピ「販売という言い方とはまた違うんですが……まあ販売もしますけど……」
販売という言い方ではない? けど販売する?
隣でゴクリと唾を飲み込むバイク。
森「なんでこんなにバイクさんのこと誘ってたんですか?」
ピ「……」
何も答えないピアニスト。
その様子を見て、いよいよ何かを覚悟し、ゆっくりと目を閉じるバイク。
森「ほんまに何の仕事なんですか?」
ピ「……ネットワークビジネスです」
静かに天を仰ぐバイク。
こんな偶然があるでしょうか?
つい1時間前までいた喫茶店で傍観していた光景が、今目の前に広がっているのです。
その瞬間、なんとなく違和感だった全ての点と点が繋がりました。
・やたらと何回も誘ってくる
・昼にも誘ってくる
・積極的
・一人で来た
・彼氏がいる
これらの違和感は『ネットワークビジネス』と聞くと全て合点がいきます。
そう、向こうはこの1ヶ月間、ただただねずみ講の勧誘の為にバイクさんとやり取りしていたのです。
言うなれば、完全なる鴨。
そして今日、その鴨がバイクに乗ってやってきたのです。
その瞬間、ここまでのバイクさんの全てのイキり発言が僕の脳裏にフラッシュバックしてきました。
週2ぐらいで誘ってくんねん
好きになってきたかも
オレの子狙うのやめてな
向こうもオレ狙いやろうけど
2人きりにしてくれたらええから
オレだけお持ち帰りって感じになるけどごめんやで
オレだけお持ち帰りって感じになるけどごめんやで
オレだけお持ち帰りって感じになるけどごめんやで
オレだけお持ち帰り
オレだけお持ち帰り
オレだけお持ち帰り
ついさっきまでプレイボーイかのようにイキっていた男は、ただの鴨でした。
18年ぶりの鴨。鳴き声はヒィア。
絶望的な現実を知り、茫然自失のバイク。
その姿に爆笑するしかない僕。
1時間前まで「助けてあげたい」とほざいていた男が、まさにその渦中にいるとは。
『メッセージ・イン・ア・ボトル』ぐらい壮大な恋をしていた男。
しかし、そのボトルの中の手紙は、全てねずみ講の契約書だったのです。
僕が茫然自失のバイクさんに爆笑していると、
ピ「もしかしたらこういう仕事にあまり良いイメージ持たれてないかもしれませんが、本当に別にクリーンですし、全然法に触れるようなものではないですし、なんだったら芸能人の人もめちゃくちゃやってる人多いんで……」
バレてしまってはしょうがない、と言わんばかりに、先程までの口数の少なさが嘘のように、堰を切ったように喋り出すピアニスト。
恐らく彼女のプラン的には、もっと時間をかけながら、徐々に徐々に勧誘したかったのだと思います。
しかし、そのプランがうまくいかなかった今、もう覚悟を決め、立て板に水の如く喋りまくるしかありません。
ピ「そもそもうちの商品って、モノは本当に良い商品なんですよ。化粧品とかでも市販のものと比べても格段に良いですし、本当にいかがわしいものではないんですよ。年会費とかも3800円だけしか掛かりませんし……」
B「え? 年会費ってそんなに安くでいいんですね?」
また同じ失敗を繰り返そうとしているバイク。
やはり根っからの騙され気質。
もしくはその年会費を払えばヤレるとでも思っているのか?
森「ちなみに浄水器もあるんですか?」
B「え?」
その単語を聞いてやっと我にかえるバイク。
ピ「ありますよ。うちの浄水器の水はものすごく柔らかい水で、普通に売ってるミネラルウォーターの何十倍も美味しくて、その水でご飯炊くとお米が嘘みたいに美味しくなるんです」
B「ほー。そんなに違うんですか?」
森「ほー、やないねん! 目覚ませ!」
B「あっ!」
鴨は綺麗な水辺にしか生息しないらしいです。
故に本能的に綺麗な水を求めるのかもしれません。
その後もピアニストは、このビジネスの仕組みや、商品の良さをあの手この手で説明してきました。
途中何回もなびこうとしたバイクを、その度に僕が現実に戻し、その度にピアニストはイラッとする、の繰り返しというなんの生産性もないこの会は、1時間半ほどで終わりました。
お会計の伝票を見ると3万円はゆうに越えていました。
全く払う気のないピアニスト。
渋々全額払うバイク。
近年稀に見る無駄な金。
そして、帰り道でピアニストと別れた直後でした。
B「危なかったーーーー!!!!」
渋谷の街にバイクさんの心からの叫びがこだましました。
B「マジでお前おってくれて助かった!! お前おらんかったら絶対入会してたもん!!」
入会金の10倍の焼肉代を払ってる男から、こんなに感謝されるとは思いませんでした。
B「浄水器買わされること考えたら安いもんや!」
3万で済んでラッキーというヤバイ思考回路。
この考え方をしている時点で、今後の人生でまだあと何回かは騙されると思います。
今後もし僕がねずみ講に手を出してしまった時は、この男に真っ先に浄水器を売りつけようと思いました。
最後に、下衆コラムと謳っておきながら、今回はおちんちんもおっぱいも出てこなかったことを心からお詫び申し上げます。