「女子刑務所へ入っていました」――元受刑者が明かす塀の中の実態は……
更新日:2018/6/18
先日、刑務所から脱走した囚人が1ヶ月近い逃走劇の末、ようやく逮捕された。私はこの事件によって「刑務所にもいろいろな種類があるのだな」と思ったが、同様に感じた人も多かろう。それだけ、普通に生きている人にとって「刑務所」は縁遠い場所なのだ。特にそれが「女子刑務所」となれば、なおさらである。その内情は実際に入ったことがある人──つまり前科持ちでなければ知りえないが、それを教えてくれる書籍があるとなれば興味も湧くというもの。『女子刑務所へ入っていました』(今は普通の主婦:原作、東條さち子:作画/竹書房)は、まさにそんな一冊である。
まず確認だが、実際に刑務所に入っていたのは本書の原作者「今は普通の主婦」氏だ。ゆえに本稿では氏を指す場合は「原作者」とする。ちなみにこの原作者が捕まった理由は「有印私文書偽造」と「詐欺」の罪。2度の逮捕歴があり、1度めは「騙された」そうだが、2度めは「お金のため」だったのだとか。
手続きとしては、まず逮捕されると入れられるのが「留置場」。ここで刑事の取調べを受け、証拠などが検察へ送致される。ここで身柄は「拘置所」へ移管されるが、状況によっては留置場にしばらく留まることもあるとか。検察官の取調べの後に起訴が決まれば、裁判で刑が確定するのを待つことになる。原作者によれば留置所ではコロッケ弁当ばかりだった食事が、拘置所ではちゃんとしたメニューが出るなど食生活は向上したという。
刑が確定したら、いよいよ刑務所へ収監されることになる。原作者が最初に入ったのは「雑居房」で、部屋が足りないという理由で6人部屋に8人が入る環境だった。受刑者には1~4級のランクがあり、2級からは独居房に移れるため皆がランクアップを目指すという。進級には生活態度など刑務官の評価が重要で、原作者は最初の進級式で4級から3級へ。ほとんどの受刑者が進級できなかった中でのことゆえ、妬みからかその日を境にいじめが始まり抗うつ剤を服用するハメになったのだとか。また刑務所内には部活のようなものもあって、原作者は囲碁部に所属。拘置所で仲良くなった別の受刑者と部活で励ましあい、辛い刑期を乗り切ったのだ。このほかにも女子同士の恋愛なんかも結構あったようで、こうしてみると女子刑務所のノリは女子校に近いのかもしれない。
とはいえ刑務所なのだから当然、入ってくるのは犯罪者である。原作者が入っていたのは和歌山の刑務所だったそうだが、そこで思いもかけぬ「大物」と出会っていた。それはかつて同僚のホステスを殺し、美容整形を繰り返しながら15年間逃走を続けた人物である。実は原作者には「霊感」があり、その人物の背後に真っ黒なオーラが見えたり、夜中にうなされる彼女の上に女の霊が乗っていたりしたのを目撃。その人物は後に刑務所で病死しているが、その原因はもしかして……と考える原作者であった。ほかにもあの「毒物カレー事件」で知られる人物とも遭遇。その人物の周囲には「黒い人たち」がいて、彼女に呪詛の言葉を吐き続けていたという。霊の中にはこの事件の「黒幕」の存在を知らせるものもあったようだが、当然ながら真偽のほどは定かではない……。
正直にいえば、霊の話に関してはオカルト要素が多分にあって、にわかに信じがたいところではあるが、それでも「女子刑務所」の内情を窺い知るには十分なエピソードが詰まっている。実際に体験するにはハードルが高すぎる刑務所暮らしだが、本で読むぶんにはノーリスクなので、興味があるという人はご一読あれ。
文=木谷誠