友人は「悪魔」かもしれない――。名門寄宿学校で巻き起こる、少年たちの物語

マンガ

更新日:2018/6/18

『ボードウィン校の悪魔』(真柴なお/白泉社)

『ボードウィン校の悪魔』(真柴なお/白泉社)は、名門パブリックスクールを舞台に「少年たち」と「悪魔(?)」が繰り広げる「秘密いっぱい」の学園ロマン漫画だ。

 人里離れた森の中、薔薇に囲われた全寮制の寄宿学校「ボードウィン校」は、貴族の子息や裕福な家の子どもたちが集まる名門校。庶民でありながら、その有名校に入学したユージーンは、ちょっと泣き虫だが優しく温厚な性格の持ち主。だが家柄のせいで友達ができず、同級生からは嫌がらせをされることも。

 ある時、ユージーンは黒髪の美少年ジョシュアと出会う。ジョシュアはボードウィン校の生徒たちの中でも特別な家柄の「高嶺の花」。しかしそういった「肩書き」ではなく、親身に自分と接してくれるユージーンに、ジョシュアは好意を持つように。

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 ユージーンもジョシュアと友人になることを望むが、一つ気がかりなことが……。それは、この学園に伝わる不思議な言い伝え。ジョシュアという名の「悪魔」の噂だった。

 ボードウィン校には、「何でも願いを叶えてくれる悪魔」が棲んでおり、この学園が輩出した歴代の成功者たちは、みなジョシュアという名の悪魔と友達だったという。さらにユージーンは、入学前に父親から「悪魔に近づいてはいけない」と言い含められていたこともあり、自分の目の前に現れたジョシュアと親しくなることに戸惑いを感じる。

 だが、ジョシュアの人柄に触れたユージーンは、彼を信じることに。それからというもの、ユージーンとジョシュアは気の合う友達同士……だったが、ジョシュアと仲良くなってから、ユージーンの周囲では不思議なことが起こるようになる。

 もしかしたらジョシュアは本当に悪魔なのかもしれない……ユージーンはちょっとした不安と不審感を募らせる。そんな時、学園にもう1人、同じジョシュアという名前の少年が入学してきて……。

 本作は登場人物が(今のところ)全員男性でありながら、非常に耽美な雰囲気と「秘密の花園」感のある内容だ。友情、嫉妬、不安……様々な少年たちの感情に触れつつ、ボードウィン校に伝わる「ジョシュアという悪魔」の伝承。そして2人の同名人物が現れるという「謎」――閉鎖された空間で巻き起こる少年たちのやり取りと「秘密」が、読者を夢中にさせるのではないだろうか。

 はたして、ボードウィン校には本当に悪魔がいるのか。それは「どっちの」ジョシュアなのか。真実を知った時、ユージーンはどうなるのか……。少年たちの秘密の学園ロマン。「寄宿学校」「少年」「悪魔」というテーマに惹かれる方にオススメしたい一冊だ。

文=雨野裾