乳房(ちぶさ)が主役! エロティックな乳房の写真78点と、23篇のさまざまな「おっぱい」の物語

文芸・カルチャー

更新日:2019/5/21

「乳房」と聞いて、なにを思い出すだろう。今付き合っている恋人のそれを思い出す人もいれば、生まれたばかりの頃にさんざん吸った母親の乳首への哀愁にかられる人もいるだろうし、昨日見たアダルトビデオを思い出す人もいるかもしれない。

 乳房とは、セクシーでもあり、母性の象徴でもあり、タブーのように扱われることもあれば、神聖化されることも多い、なんだか不思議な存在だ。

『乳房のある情景』(伴田良輔/シンコーミュージック)は、そんな乳房という存在にフォーカスし、写真78点と掌編小説23篇がまとめられた一冊だ。

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 作者は写真家でもあり美術家の伴田良輔。80年代よりフェティッシュな写真や考察で人気を呼び、2009年の乳房写真集『BREASTS』(朝日出版社)は大きな話題を呼び重版された。今回の本は、写真専門誌『フォトテクニックデジタル』に連載されていた乳房の写真とそれにまつわる短編小説を再構成しまとめている。

 23篇ある掌編小説は、「乳房」をモチーフに様々な切り口から語られる。

 それはヌードモデルとの官能的な思い出でもあれば、ゴムの乳首を手放せなかった幼少期の話もあり、ジャコウアゲハがオニユリの蜜を吸う姿を、少女が母の乳房から乳を吸う姿に重ねた記憶もある。これらの小説はすべてフィクションだと書かれているが、たびたび現れる乳房の写真とともに読んでいると、どこか実際にあった誰かの記憶を追体験しているような不思議な感覚に陥る。

 写真はどれも素朴だ。女性たちの表情は見えない。あくまで顔から下、乳房が主役である。ページをめくりながらいくつもの乳房が連なっていく情景は、ある種異様だが、過剰な演出はなく、あくまで日常に溶け込んだような写真ばかりである。

 ここまで乳房をまじまじと見たことがなかったので、乳房の大きさや形だけではなく、乳首の形状や色もこれほどまでにバリエーションがあるのか、と今更ながら驚いた。みんなそれぞれ持ってる乳房だけど、どれひとつとして同じものはない。それを数々の写真と小説が同時に証明している。

 ちなみに、最初は外の喫茶店で読もうと思っていたが、1、2ページ間隔で包み隠されていない乳房の写真が現れるので、人目を気にしてソッと閉じた。家でひっそりと楽しむのがよさそうだ。

文=園田菜々