刃物・器・紙…『ダーリンは外国人』のさおりとトニーが体験した、日本のモノづくりの現場とは?
更新日:2018/7/9
今、ジャングルに放り出されたとして、生きられる気がしない。刃物がなければ、食料を適切な大きさに切ることもできないし、道具も作れない。器がなければ、水もすくえない。こう考えてみると、私たちの生活は、あらゆる道具に支えられる。とはいえ、その道具がどう作られているのかを知っている人は少ないに違いない。
代表作『ダーリンは外国人』(KADOKAWA/メディアファクトリー)で知られる小栗左多里さん&トニー・ラズロさんの新刊『手に持って、行こう ダーリンの手仕事にっぽん』(ポプラ社)は、2人が岐阜県で体験した刃物・和紙・器の製作を描き出したコミックエッセイ。『ダーリンは外国人』と同様、小栗さんのあたたかいイラストによって、エッセイが紡がれ、モノづくりの現場の雰囲気をいきいきと描き出していく。この本を読んでいると、なんだか自分も小栗さんたちと一緒になって、モノづくりを体験しているような、ちょっとモノづくりの旅に出たような気分になれる。
たとえば、2人は刀匠の元を訪れ、小栗さんは包丁、トニーさんはチーズナイフの製作にチャレンジする。小栗さんにとって金槌は重く、上手く刃物を打つことができないし、高校の授業でバールを作ったことがあるというトニーは要領を掴むのが早いが、それでもなかなか難しい。一方で、職人は鮮やかな手つきでカンカンとリズミカルな音を立てて刃物を打っていく。その姿に2人は職人の技を感じていく。
刃物が日常で欠かせないことは、私たちが日常で使う言葉の中にも表れている。小栗さんは、包丁製作の様子を描写しながら、その言葉にも注目していく。たとえば、「あいづちを打つ」という言葉は、鍛治で2人が交互に打ち合うことが語源だというし、海外に目を向けても、アメリカで一番多い「スミス」という苗字は、「鍛冶屋」という意味がある。刃物の存在、刃物を作る鍛治職人の存在は昔は今よりもずっと身近なものだったのだろう。
もともとは鉄や竹、粘土だったものが、人の力によって生活用品になる。モノづくりの現場にはささやかな奇跡があふれている。愛らしいイラストで描かれるこの体験記を読んでいると、なんだか、モノへの感謝の思いが湧いてくる。心がなんだかほのぼのとあたたかくなるこのコミックエッセイをぜひともあなたにも読んでみてほしい。
文=アサトーミナミ
小栗左多里さん&トニー・ラズロさんサイン会開催決定!!
日時:7/11(水)19:00- (整列開始18:45)
場所:三省堂書店有楽町店 2階特設会場
対象書籍:『手に持って、行こう ダーリンの手仕事にっぽん』
ご参加方法:対象書籍を上記店でお買い上げの方に参加券を配布。店頭・電話にて参加予約を受付。参加券お渡しは1階レジカウンターで行います。
お問い合せ:03-5222-1200(代)
詳しくはこちら(三省堂書店有楽町店サイト)
*満員の場合はご容赦ください。