不倫、セックスレス…誰にも言えない秘密を抱える女性たちの恋の行方は――
更新日:2018/7/9
後ろめたいことが一つもない人生を歩むことができれば素晴らしいが、アラサーにもなると、そんな人生は全くもって不可能であることを身にしみて感じる。
人生は計画通りには進まない。その上、経験して初めてわかることが山ほどあり、恋愛一つとっても、その時の状況を冷静に考えることができるのは、ずっと後になってから……なんて体験が、未熟な筆者には数多くある。
だが、どんな後悔を背負おうが明日はやって来る。大人なので、表向きだけでも何でもないフリをして仕事に向かわなければならない。
きっと多くの人が、そんなモヤモヤを抱えながら、どうにか心に折り合いがつけられる日を待ち望み、生きていると思うのだ。
『てのひらに秘密をひとつ』(小学館)は、誰にも言えない“大人の秘密”を抱えた女性たちが登場するマンガだ。「不倫」と「秘密」をキーワードに展開されるこの生々しい人間ドラマの作者は、『深夜のダメ恋図鑑』で、アラサー女性のダメンズにまつわるリアルな物語を描き、爆笑と共感を誘った尾崎衣良。
本書は、不倫やセックスレスなど、誰かに簡単に打ち明けることのできない、深い悩みを抱える女性たちの物語が3編収録されている。
第一話に登場するのは、学生時代にハブられた経験から、人に好かれようと、いつも誰かのフォローに回るOL・沙季。
彼女は「自分のしたことって自分に返ってくるから」と、嫌な顔一つせずに周囲の仕事を手伝っていた。
そんなある日、沙季は同僚のマミに不倫のアリバイ工作を頼まれる。どんな面倒な仕事も引き受けていた沙季だが、マミのお願いを断ったのがきっかけで「偽善者」扱いされ、嫌がらせを受けることになるのだが――!?
実は沙季は、大学時代に不倫をした過去があった。それが原因で別の男性との婚約も破談になり、もうバチが当たりたくなくて必死だったのだ。
第一話では、そんな沙季を斜め上の方向から支える口の悪い先輩・高尾野の存在が印象的だ。
過去を悔やんで落ち込む沙季に「開き直って図々しく生きろ」と励ます彼の真意を、ぜひ本書を読んで確かめてみてほしい。
また、第二話では結婚した途端セックスレスになり、決まった日に子作りのためだけにセックスをする一絵の「秘密」が描かれる。
ただ愛されたいと願う妻に「夫婦って身体だけの関係性じゃない」と反論する夫。一絵は夫にある復讐を遂げるのだが、そんな夫婦の衝撃的な結末には、胸が苦しくなった。
そして第三話はなんと、第一話で沙季を「偽善者」扱いした、“いじわるマミちゃん”のアザーサイドストーリーが描かれる。ピンヒールを履きこなす女子力高めのマミの恋愛の裏側を知り、ちょっぴり同情すると共に、どんな困難が襲おうと、堂々と立ち向かう彼女の性格に、ラストはすっかり心を奪われてしまった。
本書に登場する3人の女性は皆、何らかの「秘密」を抱えている。それはきっと、読者も同じだからだろうか。共感できる感情がいくつもあった。
どんなに好きな相手でも、誰かを愛することは美しいことばかりではない。失敗も後悔も、きっと山ほど経験する。だが、それでもまた誰かを愛したいと願う温かなまなざしや希望も描かれており、胸がじんわり熱くなるマンガである。大人の恋に悩む全ての人に読んでほしい。
文=さゆ