『僕だけがいない街』作者の新作は、“双子”と“復讐”をテーマにしたサスペンス!

マンガ

更新日:2018/7/9

『夢で見たあの子のために』(三部けい/KADOKAWA)

罪を犯したら 必ず罰が下るの。
大切な人も巻き込んで。

 大ヒットマンガ『僕だけがいない街』の作者・三部けい氏の新作『夢で見たあの子のために』(KADOKAWA)が盛り上がりをみせている。前作では、主人公が時間を遡る能力を持ち、それを利用して過去の事件と向き合う仕掛けだったが、今作では双子の兄弟による視覚・痛覚の共有が作品の肝。これが双子の強固なつながりの証であり、謎に包まれた事件の真相にたどり着くための鍵にもなる。

 主人公の中條千里(なかじょう せんり)は、5歳のときに自分以外の家族を惨殺されて以来、双子の兄・一登(かずと)を殺した犯人に復讐することだけを考えて生きている高校生。その目的を果たすため、詐欺と暴力によってお金を貯めてきた。そんなある日、TVで取材されていた工場に、一登を殺した犯人と思しき“火の男”が映っていたことから、彼の復讐劇が幕を上げる。

 ヒロインの恵南(えなん)は、千里と同じ児童養護施設で育った女の子。父親が殺人容疑で逮捕され、母親は自殺している。冒頭に引用したのは、その母親の最期の言葉だ。だからこそ、恵南は犯罪による“因果応報”を身に染みて理解していて、犯人を殺そうとしている千里を心配している。被害者の息子と、加害者の娘。その境遇の違いから、ふたりの考えはすれ違う…。

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『僕だけがいない街』では、毎巻息もつかせぬサスペンス劇と、衝撃的な“引き”で読者を翻弄してきた三部けい氏。本作でもその魅力は健在で、物語が進むたびに双子と“火の男”の謎は深まるばかりだ。2巻のラストで“ある事実”が明かされるが、これは額面通りに受け取っていいのだろうか…? 氏の作品は、新刊が出るたびに、読んだ人と「次はどうなる?」「犯人は○○じゃないか?」と話したくて仕方なくなる。前作で見事な伏線回収を見せてくれただけに、続刊への期待は高まるばかりだ。

文=中川 凌