鰻にトンカツ…下町の洋食屋からお酒好きの聖地まで! 大正時代からつづく「東京の味」
公開日:2018/7/27
東京にある老舗飲食店の魅力を綴った『東京老舗ごはん 大正味めぐり』が、2018年7月5日(木)に発売された。本書は明治創業の老舗を紹介した『東京老舗ごはん』に続く、“おいしいエッセイ”のシリーズ第2弾。今回は大正時代に誕生し、現在まで人気を誇る21の名店を取り上げている。
たとえば、分厚くてふっくら柔らかい「うな丼ランチ」を味わえる新橋の「鳥かど家(とりかどや)」。うな丼以外にも鰻をぶつ切りにして醤油と出汁でじっくり煮た「鰻の汽車ポッポ」という、お昼からついお酒が飲みたくなる名物料理もおすすめ。また、トンカツの名店が集まる上野の中で紹介されているのは、大正初期創業の「蓬莱屋(ほうらいや)」だ。メインは、「ヒレカツ定食」と「一口カツ定食」。小津安二郎監督や作家の安藤鶴夫も蓬莱屋を贔屓にしていたそうだ。
わずか15年ほどながらモダン、ロマン、デモクラシーなど独特のイメージに彩られた「大正」という時代。現代にも続く大正食文化の魅力について、東京で生まれ育った著者ならではの視点で紹介している。100年の歴史と伝統を誇る老舗の創業秘話や、それをつないでいく店主の思いやエピソードは一読の価値あり。
帯には居酒屋探訪をライフワークとする作家、太田和彦氏がコメントを寄せているので紹介しよう。
この本で、店の土地柄・歴史を知って暖簾をくぐり、大正時代から続く味を楽しむ。おちついた店のたたずまい、人柄も味のうちだ。人生をわきまえた大人に、これ以上の楽しみがあろうか。太田和彦
紹介されているお店は家族で訪れたい下町の洋食屋、おつまみまで充実したお酒好きの聖地などバリエーション豊か。本を小脇に携えて、名店めぐりに繰り出してみるのも良いかもしれない。
森まゆみ
1954年東京生まれ。1984年友人と地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊、2009年の終刊まで編集人を務めた。歴史的建造物の保存活動にも取り組み、日本建築学会文化賞、サントリー地域文化賞を受賞。1998年『鴎外の坂』で芸術選奨文部大臣新人賞、2003年『「即興詩人」のイタリア』でJTB紀行文学大賞、2014年『「青鞜」の冒険』で紫式部文学賞を受賞。近著に『暗い時代の人々』『子規の音』『お隣りのイスラーム』『「五足の靴」をゆく』などがある。