「いやいやがひどくて困る」「新しい環境に慣れない」——ひといちばい敏感な子への接し方
更新日:2018/8/3
「うちの子はかんしゃくを起こすと手がつけられないのよね」「服をいやがったり、食べ物をいやがったり。いやいやがひどすぎて困っちゃう」「お友達はみんな普通にしてるのに、うちの子はまだ幼稚園に慣れないで泣いてばかり。なんで?」――子育てに悩みはつきものとはいうけれど、子どもの自己主張が激しすぎると、いくら親であってもしんどいもの。つい「いい加減にしなさい!」と怒ってしまって、やっぱり後で反省して…そんな毎日を繰り返している方もいるのではないだろうか。いつも笑顔でやさしいママは理想だけれど、現実は厳しい。でも、あなたのお子さんが「HSC」と呼ばれる子どもだとしたら、接し方を少し工夫することでいい変化が起きるかもしれない。
HSCとは聞き慣れない言葉だが、近年、保護者、教育者の間で急速に関心が高まっている「ひといちばい敏感な子(Highly Sensitive Child)」のこと。一体、どんな子たちなのか、『HSCの子育てハッピーアドバイス』(明橋大二:著、太田知子:イラスト/1万年堂出版)を参考にご紹介しよう。
感覚的にも人の気持ちにもひどく「敏感」という性質を持つHSC。たとえばお子さんに以下のような特徴はないだろうか。
・体が刺激に敏感
・痛いのが苦手
・まぶしい光、騒音、においに簡単にノックアウトされる
・すぐ驚く
・2つ以上のことを同時に抱えるとパニックになる
・他人の気分に影響される
・ものすごく人に気を遣う
・よく気がつく
・悲しいニュースを聞くだけでも暗くなる
・一人になる時間が必要
・豊かで複雑な内面世界を持っている
・芸術や自然に深く感動する
・正義感が強い
・弱者に優しい
・平和主義
・ささいな変化によく気がつく
・人に見られていると緊張してうまくいかない
・空腹になったり、眠くなったりするとたいへん
・変化が苦手
・空気の悪いのが苦手
これらの多くが該当するのがHSC。中には非HSCでも当てはまりそうなものもあるが、非HSCとHSCの大きな違いは「敏感さ」のレベル。生まれつき感受性が高いHSCは、からだの外部や内部への刺激への反応がかなり大きくなってしまうため、違和感や不快感、不安を持ちやすく、そうした感情を処理しきれずにずっと泣き続けたり、癇癪を起こしたりしてしまう。
なおHSCは病気ではなく、生まれつきの性質のようなもの。子どもの5人に1人はHSCともいわれており、決して特異な存在ではない。感覚の鋭さから自閉症スペクトラム症などの発達障害と誤解されやすいが、自閉症児は人の気持ちに気がつきにくいのに対し、HSCは人の気持ちを敏感に察して気遣う点で大きく違う。
そんなHSCの子どもたちに厳しいしつけや叱責は逆効果。大事なのは子どものペースにじっくりつきあって「安心感」を持たせてあげることだ。
たとえば子どもが「痛い」と大泣きした時、親は少しオーバーだと感じても、その子にとっては一大事かもしれない。そうした本人の感覚を受け入れ、「痛いんだね、大丈夫だよ」と言葉をかけてあげることで、子どもはわかってもらえたことに安心し、また前に進めるようになる。
HSCにはその感受性の高さから内面世界が豊かな子が多く、人の気持ちに敏感で弱者にやさしく、芸術的な才能を開花させるケースも多い。しかも安心できる環境でほめられて育ったHSCは、持ち前の敏感さでどんどんプラスの影響を受けるという。そんな素晴らしい芽をあやまって摘んでしまわないように、少しでも思い当たることがあれば、気軽に本を開いてみるといいだろう。その一歩が、子どもとの毎日を少しでもハッピーにしてくれるなら、うれしいことだ。
文=荒井理恵