「中国人は日本人が嫌い」は本当? そもそも北朝鮮が核開発に進んだきっかけって? 感情的になる前に知っておきたいこと
公開日:2018/7/5
6月12日、米朝トップによる歴史的な会談がシンガポールで開催された。今後、米朝関係は、日本を含めた世界情勢にどう影響を与えるのか、世界中が注目している。そもそも北朝鮮という国との関係を考えるとき、その背景にアメリカ、中国、ロシアといった大国の思惑が、どのように働いているのかを理解しておかないと絶対に見誤る。
国際関係を読み解くうえで、私たち日本人は一人ひとりが、中国、韓国、北朝鮮などの周辺諸国との関係を、感情論としてではなく、もっと冷静な視点から考える必要があるはずだと感じているのは、決して筆者だけではないだろう。
では、感情論ではなく、どんな視座から周辺国を理解すればいいのか? 『感情的になる前に知らないと恥ずかしい 中国・韓国・北朝鮮Q&A』(講談社)の著者、富坂聰氏は本書の中でこう指摘する。
大切なことは、「(相手の言動等)そこに何らかのメリットがあるのでは?」という視点を持つことです。
つまり、本当の国際情勢を理解し、分析するためには、「各国は、理想を実現するために動く」という発想から離れ、利益と不利益から精査しなければならないのです。
本書は、日本人の多くが共通して抱えているであろう、中国・韓国・北朝鮮との関係を巡る疑問を20項目選出し、それに対して、ジャーナリストであり拓殖大学教授である著者が、補足説明を加えながら解説をしていく内容だ。
20項目の内訳は、北朝鮮という国のとらえ方について5項目、中国との付き合い方について5項目、尖閣諸島に領土問題はあるのかについて5項目、靖国神社参拝は何故問題になるのかについて5項目の計20項目となっている。
こうした解説の中で著者は、ある言動があった際に、それを「感情論」で受けるのではなく、正しく歴史的な事実を踏まえたうえで、相手の言動が「どんな利益・不利益」を考えてのものかを判断するよう勧めている。
●北朝鮮が核開発に進んだきっかけはそもそも何だったのか?
米朝会談により、北朝鮮の核の放棄が実現しようとしている。しかし、そもそも、なぜ北朝鮮は核開発を盲進させたのか。本書のQ3「北朝鮮が、核開発に進んだきっかけは、いったい何だったのですか?」より、著者の回答を紹介しよう。
著者はまず、「核兵器保有」という野心が芽生えたきっかけは、朝鮮戦争が休戦した1950年代後半で、対米韓への対抗心と抑止力からだったとしている。ただし、この時期はあくまで野心レベルであり、現在のようながむしゃらさも技術力もなかった。
その後著者は、1960年代から現代に至るまでの、社会主義体制の崩壊に伴う歴史と、中国が改革開放路線を敷き、経済力が上がると同時に、北朝鮮が孤立してしまった経緯を紹介している。そして、現在のような核開発を決意させたタイミングは、中国が、よりによって朝鮮戦争の相手国とも言える韓国と国交を正常化した「1992年の時点と考えるのが自然でしょう」と記している。なお、朝鮮戦争とは正確には、北朝鮮と国連軍の戦争である。
●“大きな日本”は大嫌い。でも“小さな日本”は大好きな中国人
本書のQ8「中国の人たちは日本と日本人が大嫌いなのですか?」は、子どもから大人までの多くの日本人が抱える質問だろう。というのも、「中国は崩壊する」といった内容の本がベストセラーになっているのが、昨今の日本だからだ。
著者はまず、第2次大戦前後の歴史的な流れを解説したうえで、現在の日本アニメブームや爆買いブームに加え、中国人の国民性にも言及する。そして現在の中国人の対日感情を、ある中国人ジャーナリストの言葉を引用してこう表現している。
〈中国人は、過去の歴史を正当化しようとしたり政治的に対抗しようとしたりする“大きな日本”は大嫌いだけど、細やかなサービスや気配り、街の清潔さやオシャレ、感動的なアニメを生み出すといった“小さな日本”は、逆に大好きなんです。〉
つまり、中国の国民レベルにおいては、日本に行くメリットが大きければ、国として少々嫌いな部分があっても問題はない、という判断になるのである。この考え方は、これからの国際社会を生きる若年層にとって大きなヒントになるのではないだろうか。
本書では他にも、北朝鮮、中国、韓国との関係を正しく理解するための、様々な歴史的な背景、各国の言動などが、わかりやすく学べるように書かれている。ほとんどの漢字に読み仮名がふられているため、小学生にも読むことができる。隣国のことを子どもと一緒に学んでみたい、という方にも最適な一冊だ。
文=町田光