谷崎潤一郎『春琴抄』あらすじ紹介。SMのような、深く結ばれた師弟の愛

文芸・カルチャー

更新日:2023/7/12

『春琴抄(角川文庫)』(谷崎潤一郎/KADOKAWA)

 容姿端麗な春琴には舞の才能があったが、彼女は9歳の頃に病気で失明し、三味線を学ぶようになった。彼女は三味線の才能も持っていた。春琴に仕え、世話係をしていた佐助も三味線を学ぶようになり、彼女の弟子となる。春琴は気性が荒く、稽古は激しい。撥(ばち)が飛び、叱声が響き、佐助は泣き出す。しかしそんなサディスティックな師匠の人格否定のレッスンを、佐助は待ち遠しく感じるようになる。

 そんな日々の中、春琴が妊娠していることが発覚する。皆がふたりの関係を怪しんだが、春琴と佐助は関係を否定し、結婚もしない。結局、春琴は佐助そっくりの子供を出産し、里子に出してしまう。

 春琴が三味線奏者として独立した後もかわらず佐助が同行し、わがままな春琴の身の回りの世話をした。春琴の三味線の才能は世間に広く知られるようになる。そんな春琴のもとに、利太郎という名家の息子が弟子入りしてくる。利太郎は春琴の美貌が目当てで弟子入りしたため、彼女を梅見に誘って口説こうとする。しかし春琴は利太郎に厳しく当たり、稽古の仕置きでケガをさせる。

 その1カ月半後、何者かが屋敷に侵入して春琴の顔に熱湯を浴びせ、彼女は顔に大きな火傷を負う。酷くただれた自分の顔を佐助に見せたくないと、春琴は佐助を拒んでしまう。春琴を慕う佐助は自分の両眼を針で突き、失明した。愛する春琴のただれた顔も見えなくなった彼は、その後も彼女に仕え続けた。そして佐助も琴の師匠となったが、彼は結婚をせず、春琴の世話を続けた。

 春琴は脚気をわずらい、62歳で亡くなる。彼女の死後も佐助は他の女を知ることなく孤独に生き、ちょうど21年後の春琴の命日に亡くなった。

文=K(稲)