客のアレに吐き気……ソープランドで働く男性従業員の過酷な日常
更新日:2020/5/11
風俗と聞くと、そこで働く女性たちを思い浮かべる。だが、風俗店で働くのは女性だけではない。風俗嬢を支える男性従業員「ボーイ」も働いている。彼らは、いったいどんな人間なのだろうか。
『ソープランドでボーイをしていました』(久遠まこと/KADOKAWA)は、玉井次郎氏による、紆余曲折あって風俗店で働いた“男性従業員目線”の同名ノンフィクションをコミカライズした作品だ。風俗の現場を男性従業員目線で語る本作は、読んだ後に「人生」を感じてしまった。全2巻にわたるノンフィクションの一部をご紹介したい。
■職と金を失い上京、そしてソープランドでボーイに
このマンガの主人公は玉井次郎。年齢は50歳。妻と高校2年生の息子を持つ一般的な父親……だった。彼の運命を変えた2つの出来事がある。1つは、株に手を出し、約1000万円の貯蓄を溶かしてしまったこと。もう1つは、宮城県仙台市内で働いていたために、東日本大震災で被災し、職を失ってしまったこと。
職と金を失い、首が回らなくなった玉井。家族を養えず生命保険による自殺を考えたとき、ある求人広告が目に留まる。吉原のソープランドの男性従業員の募集だ。「月収40万円」という数字に、藁にもすがる思いで上京した。
そしてここから玉井の「ボーイ」の日々が始まる。
本作を読んで感じるのは、風俗が「行き場をなくした人々の終着点」であることだ。玉井は一般人だったが、度重なる不運によって仕方なくここへ流れ着いた。
玉井が働く風俗店「シンデレラ城」にいる人々も同様だ。若い頃は暴走族として暴れ回り、パチンコで生計を立てていたバツ2の大木。私生活のことは一切話さず常に不機嫌で、上司にへつらい部下に威張り散らす40歳の岩田。会社経営に失敗して流れ着いたが、シンデレラ城で営業の鬼に生まれ変わった西村。
一言では語れない人生を経て、様々な人々が風俗店のボーイになる。本作を読むたびに感じる。明日は我が身かもしれない。筆者だって、読者だって、誰だって玉井のことを笑えない。本作はただの風俗ノンフィクションではない。