日本酒は“香り”で味わう? 悪酔いしない飲み方とは? 老舗酒造の次期女性蔵元が伝える楽しみ方
公開日:2018/7/19
いつしか梅雨も明け、猛暑が続く昨今。仕事帰りや休みになると、のどをうるおすためにお酒が飲みたくなる。のどごしを味わえるビールをクーッと流し込むのもいいが、ここはちょっと、日本ならではのお酒“日本酒”にスポットを当ててみたい。
滋賀県東近江市にある喜多酒造の次期9代目蔵元・喜多麻優子さんの著書『蔵元の娘と楽しむ 日本酒入門』(スタンダーズ・プレス)は、喜多さんが日本酒の初心者にもその楽しみを伝えてくれる一冊。やわらかい文体でまとめられた本書を読むと、日本酒の奥深さを味わうことができる。
◎お酒えらびは“味の共通点”を見付けるのが鍵
お酒を飲むなら、酒の肴は付きもの。それぞれの相性も大切で、例えば、赤ワインなら肉料理といったさまざまな組み合わせも思い浮かぶ。日本酒でいうなら刺し身と一緒にたしなむというのが一般的なイメージでもあるが、本書によればお酒とつまみの「味の共通点」を見付ければ、もっと深く味わうこともできるという。
共通点を合わせるならば、例えば、味の濃いものには旨口の濃いタイプを選んでみたり、薄いものなら口当たりがすっきりとした淡麗系のものをチョイスしたりする。その理由は口の中で「一体感」を味わえるようにするため。水と油は混ざらないので、油ものの場合には温めた「燗酒」を選ぶといった、ちょっとしたことを気にかけるようにするだけで、お酒の味をいっそう楽しめるようになるそうだ。
◎日本酒をより深く味わうなら“立ち香”と“含み香”を意識すべし!
お酒を味わうとひと口にいっても、純粋な味やのどごし、香りなどポイントになる部分はさまざま。なかでも、本書によれば日本酒は香りが「美味しく感じられるポイント」の一つだという。
さらに興味深いのは、日本酒には「立ち香」と「含み香」という2種類の香りがあるということだ。立ち香はおちょこなどに注いで口へ含む前に鼻で嗅ぐもので、含み香は口に含んだあとに鼻へ抜けていく瞬間に感じられる香りのこと。とはいえ、鼻で嗅ぐことができる立ち香は分かりやすいものの、素人目からすると、口の中で感じる含み香はなかなか分かりづらいイメージもある。
これを味わうために、本書でおすすめしているのが舌の上でお酒を滑らせるように飲んでみる」という方法だ。口の中で日本酒の滞在時間を少し延ばすイメージで、飲み込む前にひと呼吸置いてみる。その際に、鼻から息を抜くようにすると、うまく含み香を感じられるという。
◎日本酒は悪酔いしやすい? 上手く付き合うためのおすすめの飲み方
日本酒を敬遠する理由としてありがちなのが、他のお酒と比べて“悪酔いしやすいのではないか”というイメージ。しかし、本書では「飲み方次第」で悪酔いを防げる場合もあるという。
いくつかの方法があるなか、その一つに挙げられているのは「和らぎ水」と一緒に飲むという方法。和らぎ水というのは、いわゆる普通のお水のこと。居酒屋でもどこでも、日本酒と一緒にお水を用意して、飲み始めてからはお酒と和らぎ水を半々ずつ飲むように心がけておくのがよいそうだ。
さらに、意外なところで本書では「日本酒を割って飲む」こともすすめている。焼酎などとは異なり、そのまま飲むのが“粋”なイメージもある日本酒。しかし、実際に喜多酒造の杜氏さんもレモンと炭酸でにごり酒を割って飲んでいたり、はなっから日本酒への固定観念のないアメリカでは、レモンやライムを搾って飲んだりするという文化もあるそう。割ることで日本酒の「楽しみが広がるきっかけになるかも」と本書は紹介している。
◎試してほしいおつまみレシピ「小松菜ともやしのナムル風」
本書では、日本酒と一緒に味わいたい15品のレシピも紹介されている。そのなかでも比較的、試しやすそうな「小松菜ともやしのナムル風」を実際に作ってみた。レシピも下に記すので、ぜひとも自宅で試してほしい。
~小松菜ともやしのナムル風~
~用意する食材(2人用)~
小松菜(1束)
もやし(2分の1袋・100g)
にんじん(1/3本)
合わせ調味料(ごま油・大さじ1、薄口醤油・小さじ1、みりん・小さじ2分の1)
~作り方~
〈1〉にんじんを千切りにし、1~2分程度500Wの電子レンジにかける
〈2〉小松菜を4~5cm幅に切り、茎は2分、葉は1分湯がき、ザルにあける(形よく仕上げるため絞らない)
〈3〉塩(適量)を入れ沸騰させたお湯で、洗ったもやしを1分ゆがきザルにあげる
〈4〉合わせ調味料をボウルに入れ、軽く塩・こしょう(適量)し、よく混ぜ合わせる
〈5〉充分冷まして水気を切った〈1〉〈2〉〈3〉を〈4〉に入れ、和えれば完成!
本書では、ごま油の風味に向く「米感がほど良くある旨味タイプ」の日本酒に合わせるのがおすすめとされている1品。ちなみに、写真は筆者作のものだ。実際に食してみたところ、暑い時期にはひとくち目の“あて”として格別な印象。冷や酒と共に味わってみたら、どちらもついつい進んでしまった。
なかなか奥が深そうで、どこから知ればよいのか分からない日本酒の世界。喜多さんの本をきっかけにすれば、きっとより身近な存在に感じられるはずだ。
文=カネコシュウヘイ