もう文章で困らない! 超絶売れっ子ライターが説く、「人に読ませる文章テクニック」
公開日:2018/7/20
「この文章、意味が分からない……」
誰かの文章を目にしたとき、こんな感想を抱いたことはないだろうか。TwitterをはじめとするSNSの発達によって、一般人の書いた何気ない文章を目にすることが多くなった。表現には個性が宿るので、千差万別の書き物ができあがる。それは素晴らしいのだが……なかには読みづらいものもある。
文章を書くこと自体は容易いが、人に読ませる文章を書く、というのは実に難しいもの。SNSで多くの「いいね!」「シェア」を獲得したい人、人気ライターや有名ブロガーになってお金を稼ぎたい人は、必ずこの壁にぶつかる。
「もっと上手な文章を書きたい!」
「自分の考えを豊かに表現したい!」
そんな人にぜひ読んでほしい本がある。『150冊執筆売れっ子ライターのもう恥をかかない文章術』(神山典士/ポプラ社)だ。本書は、150冊もの書籍を執筆した超絶売れっ子ライター・神山典士氏が紹介する、プロが駆使する文章技術を余すことなく紹介した1冊だ。
SNSやブログで誰もが今すぐ実践できる文章術から、プロも唸る凄ワザテクニックまで、すべての日本人の「文章術の向上」を目指す本書。その一部をご紹介していこう。
■形容詞を乱用せず、五感を総動員せよ
自身の感動した体験や日常で感じたことを誰かに伝えるとき、どのような表現をしているだろう。
「今日はとっても暑かった……」
「あそこのケーキ、とっても美味しかったよ!」
このような感じが大半のはず。家族や友人、恋人宛てならば何の問題もない。しかしSNSで不特定多数に伝える場合や、ライターやブロガーを目指している場合は、ちょっとまずい。
体験した本人は「暑い」「美味しい」ことが分かっている。しかしそれを読む読者は「文字情報」だけしかないので、それがどのように暑いのか美味しいのか、イマイチ理解できない。
そこで神山氏は、「五感を総動員せよ」と訴える。たとえば「真夏の太陽」をテーマに置いてみよう。
「視覚」を活用すると、こうなる。
真っ赤に燃えた真夏の太陽
「触覚」を活用すると、こうだ。
ヒリヒリと肌を刺す真夏の太陽
「聴覚」を活用すると、こんな感じ。
「じりじり」という言葉が聞こえてきそうな真夏の太陽
どれも「暑い」を使わず、しかし読むだけで汗が噴き出るような表現になっている。形容詞はとても便利な表現ツールだが、それはあくまで書き手の場合。読み手に「書き手の体験」が伝わるような文章を目指すならば、五感をフルに盛り込んだ表現に挑戦してみよう。
■60字以上の文章は区切るべし
Twitterでは、140文字ギリギリまで攻めた長いツイートが大ウケすることがある。しかし一般的には、長い文章は嫌われる。読みづらく、意味を理解しづらいのだ。そこで神山氏は「原稿用紙3行以上」、つまり60文字以上の文章は区切るべきだと指摘する。
本書より例文を交えて説明したい。
その蛇行の数だけ技を身につける精神的なしなやかさと強靭さを持っていたことが、のちの北斎を生んだことは以降の歴史が証明するところだ。
これは北斎をテーマに書いた神山氏直筆の一文。しかし今になって見直すと長いそうだ。これを手直すならば、どこをいじればいいだろう。
本書では、この文章の「3パターンの分け方」を見つけ出し、それぞれ解説している。しかし全部ご紹介すると長くなってしまうので、その1つだけを挙げたい。
その蛇行の数だけ技を身につける精神的なしなやかさと強靭さを持っていたことがのちの北斎を生んだ。それは歴史が証明するところだ。
このように分けると、「~が北斎を生んだ」の部分が強調され、2文目を歯切れよく読める。なにより分かりやすい。
もし文章で何かを表現するときは、
・60文字以上の文章は区切る
・句点(。)のそばの言葉は読者の印象に残る
・短文のほうが印象的
この3点を覚えておこう。
■プロも活用する文章術「サビ始まり」
本書では、このような目からウロコの文章術を数多く紹介している。だが、これだけじゃない。ライターや報道記者が活用する「プロ向け」の文章術も紹介しているのだ。
その1つが、「サビ始まり」。たとえるならば、まさしく本稿の最初の部分、「この文章、意味が分からない……」のことだ。
読者は状況説明よりも人間の言葉に敏感なので、「サビ始まり」の言葉が研ぎ澄まされていれば、否応なく物語や記事の内容に引き込まれていく。
「おい、そんなことやめないか。それ以上やったら人を呼ぶぞ」
こんなセリフで始まったら、読者は緊迫したシーンを思い浮かべ、次の展開に興味がわくだろう。これは「サビ始まり」の効力だ。筆者も本書を読んでさっそく神山氏のワザを活用してみた次第だ。
ちなみに、このテクニックは使いすぎると読者が食傷を起こす。ここぞ!というときだけにしておこう。
また、このサビ始まりにはもう1つパターンがある。「なるべく遠くから書く」というテクニックだ。……しかしこいつは難しいので、気になった方は本書でチェックしてほしい。
SNSの発達によって、私たちは自分の考えることを表現する「場所」が増えた。しかし表現する「技術」が未熟ならば、その場所を100%活用できているとはいえない。
私たちの文章は、さらに磨き上げることができる。もっと表現が豊かになり、誰もが目に留まる文章を世に送り出すことができる。
有名ライターや人気ブロガーになるつもりはなくても、自分の考えを誰かに認めてもらうというのは素晴らしいことだ。きっと会社での仕事もはかどるだろうし、身近な人に気持ちを伝えるのがもっと上手になるかもしれない。
本書を活用することで、その体験の素晴らしさを肌で感じてほしい。
文=いのうえゆきひろ