時間がなくてもサクっと楽しめる。1巻完結で気持ちよく騙される! おすすめミステリーマンガ5選

マンガ

更新日:2018/8/6

精巧に練られたミステリー漫画に“騙される”感覚は、何物にも代えがたい気持ちいいものだが、その分、作品を丹念に読み込まなくてはならない。「素晴らしいミステリーに騙されたいけれども、ゆっくり読む時間が取れない…」そんなあなたにおすすめしたいのが、人気マンガ家たちが描いた“1巻完結”のミステリーマンガだ。人気小説のコミカライズ作品から、マンガ史に残る名作、そして海を越えて日本でも愛される海外のマンガまで、1時間弱でサクッと楽しめる必読のおすすめ5作品を紹介する。

■『それ町』作者が描く渾身のミステリー! ただの短編集かと思いきや…?

『外天楼』(石黒正数/講談社)

 日常コメディの傑作『それでも町は廻っている』(石黒正数/少年画報社)の主人公・嵐山歩鳥(あらしやま・ほとり)は大のミステリー好きだが、その作者の石黒正数もまたミステリーマンガを描いている。『外天楼』(講談社)は、ミステリー系の文芸誌『メフィスト』に連載された連作短編集。増築が繰り返されておかしな構造になっている「外天楼」という建物には、“訳アリ”のヘンな住人ばかりが集まっている。資源ゴミ置き場からエロ本を漁る少年。地球の平和を守る宇宙刑事。食堂のメニューを見るのも嫌がる極度のめんどくさがり。途中まではニヤリとさせるコメディタッチの作品が続いていくのだが、とある殺人事件をきっかけに、「外天楼」全体を巻き込む壮大なミステリーが…。冒頭からはまったく想像できない衝撃の結末には、誰もが驚きを隠せないはず。

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■鬼才・乙一が原作 苦しく切ない青春ミステリー

『山羊座の友人』(乙一:原作、ミヨカワ将:作画/集英社))

『山羊座の友人』(乙一:原作、ミヨカワ 将:漫画/集英社)は、『GOTH リストカット事件』(KADOKAWA)などで知られる人気作家・乙一の短編小説を原作に、作画を『ST&RS―スターズ―』(集英社)のミヨカワ将が担当したコミカライズ作品。悪い噂の絶えない不良の金城アキラは、気弱な青年・若槻ナオトを虐めている。主人公の松田ユウヤは、その現場を横目に見ながらも、次のターゲットに選ばれないように“見て見ぬフリ”しかできずにいた。そんなある日の夜、ユウヤは、血まみれの金属バットを持った若槻に声を掛けられ、金城を殺したという彼を家の中に匿うことになる…。警察からなんとか逃れようとするスリル感、事件の真相が暴かれるミステリーとしての驚き、追いつめられた状況で必死に生きる高校生たちの切ない思い――どれをとっても一級品のマンガだ。

■とある“告白”が殺し合いの火種に…! ベテランマンガ家が組んだ傑作サスペンス

『告白 コンフェッション』(福本伸行:原作、かわぐちかいじ:作画/講談社)

『カイジ』(講談社)の福本伸行と、『沈黙の艦隊』(講談社)のかわぐちかいじ。ともに代表作をいくつも持つベテランマンガ家がタッグを組んだ作品が『告白 コンフェッション』(福本伸行:原作、かわぐちかいじ:作画/講談社)だ。山岳部OBの浅井と石倉は、登山中、突然の吹雪によって遭難してしまう。事故で負傷していた石倉は、自分はもう助からないと覚悟を決め、浅井に対して過去の殺人の罪を告白する。石倉は安らかに死を待つはずだったが、浅井が近くに安全な山小屋を見つけ、ふたりは生きながらえてしまう。そうなると、石倉の告白は、彼が浅井を殺すべき動機になってしまい…。人間の本質に迫る巧みな心理描写と、密室の山荘で行われる頭脳戦は、まさに『カイジ』のように手に汗握るもの。救助隊が山小屋に到着するまで、読者も気を抜くことはできない。

■10人しかいないはずなのに…! 『ポーの一族』の作者が描くSF×ミステリー

『11人いる!』(萩尾望都/小学館)

 新作が発表されるたびに話題となる『ポーの一族』(萩尾望都/小学館)。その作者である萩尾望都も、歴史に残る1巻完結のマンガ『11人いる!』(小学館)を描いている。本作は、宇宙大学の最終テストに挑む11人の若者の命運を描いたSFマンガなのだが、本格ミステリーとしての魅力も備えている。『11人いる!』というタイトルの意味は、本来10人しかいないはずの最終テスト参加者に、なぜか部外者が紛れ込んで「11人いる」ということ。受験者たちは、故郷の星からさまざまな思いを背負って受験に参加しているが、閉鎖された宇宙船の中で徐々に疑心暗鬼に…。物語の最後で「なぜ11人目が参加していたのか」が明かされるのだが、それを推理しながら読むのもおもしろいだろう。

■主人公がマンションの屋上から落ちるまでの“5秒間”の物語…!

『5秒童話』(第年秒/集英社)

 作者の第年秒(ダイネンビョウ)は、少年ジャンプ+に連載されている『群青のマグメル』(集英社)のアニメ化も決まっている中国人マンガ家だ。本作『5秒童話』(第年秒/集英社)は、『マグメル』同様に中国から海を渡ってきた人気作で、なんと主人公の童(ドウ)が25階建てのマンションの屋上から落下するまでのたった5秒間を描いたミステリー。童は、たぐいまれなる動体視力によって住人の隠された真実を目撃しながら、自分がなぜ落下しているのかを推理していく。“設定勝ち”の作品だと思う人もいるかもしれないが、瞬発力のある推理で状況がめまぐるしく変わっていくスピード感をぜひ味わってほしい。

 どの作品も、普通なら何冊も描けるようなアイデアを、ギュッと濃縮して1冊で完結させた傑作マンガばかり。それぞれの作者の持ち味も十分以上に発揮されているから、ぜひ今まで触れたことのないマンガ家の作品にも手を伸ばしてみてほしい。きっと、新しいおもしろさに出会うための、格好の“入門作”になるはずだ。

文=中川 凌