「あなたのためを思って…」という人への接し方は? 他人との境界線の上手な引きかた
公開日:2018/7/31
いくつになっても人間関係には悩まされる。性格の悪い人と付き合わなくてはならないのも大変だが、「あなたのためを思って…」という善意で人の行動を支配しようとしてくる人が一番厄介だ。相手からすれば、「善意だから」と全く悪気はないに違いないが、そういう人は遠慮なく人の領域に踏み込んでくる。「人間関係に疲れたな…」という人は、まずはこの「バウンダリー診断」で自分がいくつ項目にあてはまるか、今の状況を知っておこう。
「バウンダリー」とは「自分と他人の間にある境界線」のこと。人間関係が錯綜している現在、まず自分を大切にする=自分の領域を守ることを優先することが大切だ。そうしないと、人間関係のせいで疲労、消耗してしまって、あげくの果てには身体を壊してしまうことも。
この診断では、自分が他人からどれだけ影響を受けやすいかがわかる。10以上当てはまってしまう人も決して少なくはないかもしれない。そういう人は、他人との間の境界線の引きかたを見直してみてはいかがだろうか。
おのころ心平氏の『人間関係 境界線(バウンダリー)の上手な引き方』(同文舘出版)では人間関係をよりよくするバウンダリーの引き方を教えてくれる。この本を元に、早速対策をとってみよう。
■バウンダリー・トークで、相手を自分のペースに巻き込む
会話ひとつでもコツさえつかめば、相手のペースに惑わされずに済むようになる。「どうもうまくコミュニケーションがとれない…」という相手にはバウンダリー・トークで向き合うようにしよう。
(1)(ゴール)はじめに会話のゴールをイメージする
(2)(事実)事実の描写をなるべく多く話す
(3)(感情)その上で、その事実に伴う自分の感情を言葉にする
(4)(依頼)最後に、だからこのように協力してほしい」とつけ加える
この4点に気をつけて会話を進めるようにすると、自分の考えが相手に伝わりやすくなる。たとえば、ある夫婦が、中学3年生の息子の進路について話をする時、奥さんがゴールを設定しないまま話をすると大抵旦那さんに「で、要点は何?」と割り込まれて、会話の主導権が旦那さん側に行ってしまう。だが、奥さんとしては、自分の意見が尊重されず、考えを押し付けられるのは、納得できない。それならば、以下のように話すようにすれば良いのだ。
(1)(ゴール)夫婦で協力して、子供の進路に関わり合いたい。
(2)(事実)息子の学校での成績が芳しくない。
(3)(感情)私は心配。息子と距離を感じる。
(4)(依頼)私には話せないことがあるかもしれないから、父親として男同士で話を聞いてあげてほしい。
バウンダリー・トークの基本は、できるだけシンプルに話すということ。こういう順番で話をすれば、状況がよく伝わる。これを最初に(4)から「あなたも父親らしく子供の進路に関わってよ」と要求だけ言ってしまうと、相手にはどうしてそうなのかがわからないので、反発してコミュニケーションにエラーが起きてしまう。コミュニケーションにエラーが起こりがちな相手との会話ではこの順番を意識してみると良いだろう。
■しぐさを使った、サブリミナル・バウンダリー
しぐさによっても、言葉以上のメッセージを発信することができる。たとえば、相手の意見に「それはどうかな」と思うような時にはさっと腕を組んだり、「それは信頼できない」という時に指を組んだりするなどを意識的にすると、こちらの心情をアピールできる。また、左肩を下げると、退屈さが伝わり、右肩を下げると、不機嫌だということが伝わるし、右肩を前に出すと、「もうやめましょう」というサインになると、右肩を引くと「あきらめませんよ」というサインになる。言葉だけではなくしぐさでもこちらの気持ちを伝え、相手への思いを伝えるようにしよう。
人間関係に悩んでいるあなたは少し良い人すぎるのかもしれない。もっと自分の意見を相手に伝えてみても良いのではないか。この本を元にあなたの境界線を引きなおしてみよう。抑圧されない快適な人間関係を作るためには有効であるに違いない。
文=アサトーミナミ