「子どもがかわいい」と思えなくなってしまったら…子育てに向かう気持ちが軽くなるコツ
更新日:2018/8/20
「あー、もうでかけるのに、着替えさせなきゃ。また洗濯物…もう遅刻しちゃうよー怒りたくないのにまた怒っちゃったし…ほんとにもう……あ、今日は雨だった!泣きたいのはこっちだよ…」
子育ては簡単なことではない。子どもはかわいいはずなのに、毎日イライラしてしまって全然子育てを楽しめていない。そんな世の母親に向けて「がんばってもどうにもならないこと」を「なんとかするために」おすすめしたいのが『今日は、子供が可愛く見える ママのゆるコツ事典』(渡辺のぞみ/文響社)である。
本書は、ドタバタな毎日をこなすためのゆる~いコツが満載の、幕の内弁当のような本だ。前半の誌面には朝起きてから出かけるまで、ワーキングママの職場でのふるまい方、帰宅後の家事や寝かしつけまでに必要なコツが、後半には、夫婦のきずなを深めるコツ、祖父母と上手につきあうコツ、そしてセルフケアや子どもとの一日を楽しむためのアイディアが掲載されている。
兄弟の数が少なく、子どものときに同世代の子どもと遊んだ経験がなかったり、年下の子どもの世話をしたことがなかったりすると、親になったときどう接してよいか分からない人は多い。接し方が分からないので、習い事をさせたりおもちゃを買い与えたり、外に連れ出したりしてやり過ごすことを選択する人も多いのではないだろうか。しかし、この本を読むと子どもは、特に小さなうちは親と過ごすだけでも十分楽しいことに気づかされる。「家の中にレジャーシートを敷いておにぎりを食べる」といったちょっとしたことでも。
共働き家庭では、簡単にサッと作れる食事がメインになるのは仕方がないことだ。食事に手間をかけるだけの余裕がない。子どもとの時間を大切にしたいけれど仕事があるからムリ。そんな風に考えている母親なら、がんばりすぎなくても、お金をかけなくても、ちょっとした工夫次第で子どもにいろいろな経験をさせることができると気づく。
手間をかけるのが難しいなら、子どもにやってもらうのはどうだろう。子ども参加型の食卓にするのだ。食材をテーブルの上に並べて手巻き寿司やサンドイッチを手作りすれば、それだけでエンターテインメントに早変わり。子どもならではの発想で親が思いつかなかったような組み合わせを発見できるかもしれない。
また、盛り付けをデパ地下の総菜コーナーのようにタワー状にするだけでもいつもと違う見た目になって子どもも新鮮さをおぼえる。そうしたちょっとしたコツがいたるところに紹介されていて、特にいつも正攻法で対応してしまう母親には遊び心があって参考になる部分も多いだろう。
「子どもとの接し方を変えたい」「今の苦しい状況をなんとかしたい」と願う母親たちは少なくない。しかし、現状を改善するためには母と子の関係だけでなく、職場や夫、互いの両親との関係を含めてトータルに考える必要がある。親になると子ども中心になってしまう母親たちに周囲の人たちとの関係づくりを訴え、具体的なコツを紹介している点は高評価だ。
核家庭では相談できる人が身近にいないので、何かトラブルがあったときの情報源はネットが中心になる傾向にある。何を信じていいか分からないと感じたら、この本の信頼できる情報源のサイトを参考にするとよいだろう。育児に関する情報を得たい人にとって安心だ。
たとえ今、子育てがつらいと感じていてもその時間は永遠には続かない。本書はそんな安心感をくれる。バイブルとして手元に置いておけば、子どもとの何気ない一日の繰り返しが人生の大切なひとときだったと感じるようになる日もそう遠くないと思えるだろう。
文=いづつえり