東大王・伊沢拓司が次世代のために伝えたいこと――最強クイズ100執筆秘話【インタビュー(2)】
公開日:2018/8/3
東大クイズ王・伊沢拓司が「言葉」「謎解き」「社会」「科学」「文化」「恋愛」「ライフ」「スポーツ」の8つのジャンルのクイズ問題&解説を全て書き下ろした書籍『思考力、教養、雑学が一気に身につく!東大王・伊沢拓司の最強クイズ100』が2018年7月5日に発売されました。
中学生の頃から高校生クイズ界をリードし、クイズの名門・開成中高の礎を築いてきた伊沢氏。「僕の人生の半分はクイズでできている」と語るほど、クイズを愛してやまない彼が10年近く探求し続けてきたクイズは、単に「知識」を問うだけのものではなく、解き手の興味の幅を広げ「思考力」を鍛える、より高次元なクイズです。
そんなクイズの面白さや奥深さを最大限に引き出した書籍が、これまでクイズに触れてこなかった若者にも受けています。今回は、伊沢氏に書籍にまつわるインタビューに答えていただきました。5回に分けて掲載いたします。
―『最強クイズ100』のオリジナルクイズ作成で、伊沢さんが特にこだわられた点を教えていただけますか?
伊沢拓司氏(以下、伊沢):まずはなにより「知識一辺倒にならない」ことを心がけました。世の中にはクイズの題材が無限にありますが、もちろん「知ってどーする?」的なものも多いんです。そういうクイズも好きですが、今回は競技としてクイズをする方ではなく、本の内容としてクイズを楽しんでくださる方に向けたものだったので、何よりもまず「知って終わり」にならないクイズ作りを心がけました。
知らなくても考えれば答えにたどり着けるもの、解説のエピソードが面白いもの、一度は見たことがあるけれどパッと出てこないもの……という、何かしら持って帰れる、人に話したくなるクイズで統一したいと考えていました。そこについては今回満足のいく出来になったと思っています。「何問解けるかな?」よりは「面白い話を紹介!」というスタンスですね。
それらと同じくらい大事な要素として、厳密性、正確性にもこだわりました。クイズ作家の田中健一さんにサポートしていただきながらチェックを重ねて、正しい情報を掲載できたと思います。田中さんのお力添えがなかったら、自信を持って出せるものにはなっていなかったと思います。
―テレビ番組やYouTubeなど、さまざまなメディアで大活躍中の伊沢さんですが、受け手にどんなことを伝えていきたいと考えていらっしゃいますか? また、今後出版分野で挑戦してみたいことはありますか?
伊沢:僕が今、メディアを使って伝えるべきことは、「クイズ王大解剖!」「誰でもクイズ王になれる!」ということだと思っています。
僕は現在YouTuberとして活動したり、ライターをやったりしています。いろいろなメディアで発信していくことのモチベーションのひとつに「クイズの『魔法』を解きたい」という気持ちがありました。
昨今のクイズ番組では、各プレイヤーの努力や工夫の過程が省かれて「天才」「クイズ王」などと一言で紹介されてしまうことが多くありました。それ自体は嬉しかったんですが、これでは再現性がないな、次世代につながらないなと。そこに甘んじていると、クイズは超人ショー、マジックショーの題材で終わってしまう。もちろんそういう仕事も楽しいですし、100%の力を注いでいますが、肩書が身の丈に合っていないなと思ったんです。
僕はクイズが楽しくて、クイズの先輩方にいろいろなことを教わって、クイズをやり続けて強くなった。その過程をつまびらかにしていかないことには次の世代につながらないし、クイズ業界のためにならないなと思っていたので、「こんな努力をすれば、クイズがもっと楽しくなるよ」ということを発信したいなと思っています。
今回の本もその一環でしたし、今後も継続的にクイズの魅力を幅広い人に伝えられる文章を書いていきたいと思っています。本という媒体なら、メソッドもトレーニング用のクイズもまとめて載せられたり、図を使って伝えられたりと、体系的な解説ができると思うんです。モノとして長く残すこともできるので、本という形にはこだわりを持って題材を選びたいなと思っています。
あとこれはまったく関係ないんですが、昔からエッセイを読むのが好きで、小説そっちのけでエッセイばかり読んでいたので、機会があれば書いてみたいですね。書くことがあるのか、というところからですが。
第3回に続く
伊沢拓司
日本のクイズプレーヤー&YouTuber。1994年5月16日、埼玉県出身。開成中学・高校、東京大学経済学部を卒業。現在は東京大学大学院、東京大学クイズ研究会(TQC)に在籍。「全国高等学校クイズ選手権」第30回(2010年)、第31回(2011年)で、個人としては史上初の2連覇を達成した。TBSのクイズ番組「東大王」では東大王チームとしてレギュラー出演し、一躍有名に。2016年には、Webメディア「QuizKnock」を立ち上げ、編集長を務めている。