HSCを知っていますか? 「甘やかしすぎ」「わがままになる」その子育てアドバイス間違いかも… 【インタビュー前編】
更新日:2019/2/28
■「HSC」という名前がつくことで存在に気がつく人もいる
——「なんかうちの子は他の子と違う」と悩んでいる親御さんの場合、まずはどうしたらいいでしょう。本にすぐ行き着いてくれればよいのですが…。
明橋:まずは「HSC」という言葉を知ることからでしょう。今回、あえて本のタイトルに「HSC」という言葉をいれましたが、いまどきはほとんどの親御さんはスマホで検索しますから、「敏感」といれると「HSC」という言葉が出てくるので、それで気がついてほしいし、広めたいという思いもありました。「不登校、敏感すぎる」で検索して知ったという方も結構いらっしゃるんですよ。
——たとえば乳幼児期のお子さんの場合、まだHSCのチェックは自分で答えられません。そうした時期に悩んでいる親御さんはどうしたら?
明橋:親御さんがHSCを理解した上で子どもを観察すれば、大体わかるといわれています。「よく泣く」というのが割と多い特徴ですが、その場合には刺激を減らしたらいい。HSCの赤ちゃんの場合、周りのことを観察していることもあるようで、お母さんはそれを感じていたりすることもあるようです。対処については、アーロンさんの著書を私が翻訳した『ひといちばい敏感な子』(1万年堂出版)に年齢別の注意点があるので、参考にしていただけるかと思います。
——先生のところにはHSCのお子さんが受診に来ているわけですが、どのくらいの症状の方でしょうか?
明橋:不登校や心身症の症状が出て、親御さんが悩んでいる方ですね。申し訳ないことに、うちの新患予約は半年待ちなんですが、それでも待っていらっしゃるということは、それだけの症状が出ているということです。本当はそうなる前に気づいてもらえたらと思いますね。
——診察でHSCとわかった場合、親御さんの反応はどうですか?
明橋:初めて聞いたという人もいれば、やっぱりという方もいます。共通していえるのは「楽になった」といわれる方が多いことでしょう。これが「発達障害」だとそうはいきません。もちろんこれまでの行動の説明がついたということですっきりはするものの、やはり「障害なんだ」と落ち込まれたりする。ところがHSCに関しては、そういうことはまずないですね。病名ではありませんし、長所もたくさんあるということですから。
ただ、こうした子は他の子と違うということで、現状ではだいたい「発達障害」と診断されているんですが、とはいえ発達障害の規定にはあてはまらない面もあるので「発達障害グレー」となる。でも、アスペルガーやADHDの本を読んでもどうも違うので親御さんが悩んでいたところに、HSCを知って「まさにこれだった」となる方はたくさんいます。
新たなレッテル貼りではないかとか、子どもをそんな枠にはめてどうするのかという意見もありますが、別に枠にはめるために名前をつけるわけではありません。「HSC」という名前がつくことでその存在を知ることができ、それによって適切な関わりができるようになるからなんです。
文=荒井理恵