「私の子育て大丈夫?」育児に悩むのは素晴らしい母親! HSCの子育てで大切なこと【インタビュー後編】

出産・子育て

更新日:2019/2/28

『HSCの子育てハッピーアドバイス』(1万年堂出版)の著者・心療内科医の明橋大二先生は「HSC(=ひといちばい敏感な子)をもっと知ってもらいたい!」と日夜がんばる日本におけるHSC研究の第一人者です。そんなお忙しい先生に、ダ・ヴィンチニュースが突撃取材。HSCをよりよく理解するために知っておきたいあれこれを、特別にお話ししていただきました。

■自己肯定感を高めるために必要な「境界線」

——どんな子育てでもそうですが、特にHSCの子育てのベースは「寄り添う」ことが大事だそうですね。

明橋大二先生(以下明橋):そうですね。すべての子どもにとってそうですが、特にHSCには必要です。今の世の中は「右向け右」みたいな同調圧力が強すぎますから、そんな中で子どもの気持ちを尊重して寄り添い続けていくことは、時に周りから非難されるかもしれない大変な面があります。だから、そういう中での私の役割というのは、お母さんを「肯定」してあげること。お母さんが肯定されるとやっぱり気持ちが落ち着くし、それはやっぱり子どもにもメリットがあるんです。お子さんだけでなく、お母さんの自己肯定感も低くなってしまうことが少なくないですが、時には自分で自分をほめてあげることも大切です。たとえばこういう記事を読んでいることだけでも、前向きで素晴らしいことなんですよ。

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——自分の子育てが間違っていないかどうかを気にする親御さんも多いように思います。周りの目を気にしすぎるということでしょうか?

明橋:はい。やっぱり自己肯定感が低いと周囲が気になりますし、周りのコメントで一喜一憂してしまいます。そのためには、まずは「境界線をひかないといけない」ということを知るのが大事です。アメリカでは「バウンダリーワーク」という境界線を意識するトレーニングをしたりしますが、日本ではあまり広まっていません。とても大事なことなのに、むしろ境界線をひくのはいけないんじゃないか、と思ってしまう人もいるくらいですから。

——「私はこれ、我が家はこれ」という意識を持つとお話がありましたが、そういうことでしょうか?

明橋:そうです。でもその前に、まず自分が「苦しい」ということに気がつかないといけないんです。実はそれすら気がつけない人もいるんです。先生に言われてやんちゃな子のお世話を頼まれ、疲れてしまい不登校になってしまった子どももいます。自分が「苦しいんだ」というのがわかっていないと、なんでイライラしたり、だるくなったりするのかがわかりません。他の子のお世話をするのはしんどいことだったんだと、そこにまず気がつくこと。それに、気がついたら「これはしんどいから、じゃあどうしたらいいか」ってことになり、それで境界線という話になる。

——「いい子」でいようとすることで苦しい感情が隠れてしまうのかもしれません。

明橋:やはり「べき」というのと「したい」というのをちゃんとわかることですね。我々はいつのまにか「べき」で動いていて、「したい」がどっかにいってしまっている。で、「べき」が自分の「したい」ことだと勘違いしているわけです。本当はイヤでしたくないこともあるのに、そういう自分の気持ちというのを大事にしていないんです。自分の気持ちを相手に伝える訓練を「アサーティブトレーニング」といって欧米では大事にしていますが、日本の学校ではやっていません。だから敏感な子もそういう自分に気がつけないし、それで疲れてしまうんです。

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