「私の子育て大丈夫?」育児に悩むのは素晴らしい母親! HSCの子育てで大切なこと【インタビュー後編】
更新日:2019/2/28
■「HSCを知らなかったら、生きてなかった」
—— HSCの当事者の子どもは自分をどう感じているのでしょうか? 生きづらさとの折り合いはどんなふうにつけていきますか?
明橋:たとえば不登校の子は、ダルくてしかたがないとか、どうしてもいきたくないなどと言うだけで説明できないんですよ。別にいじめにあってるわけでもないし、成績もそれなり。いけるはずなんだけど、いけない。それもやっぱり自分の気持ちに気づいてないんです。それで理由がわからないから、ただ自分を責めて、親も責めて、両方ダメダメみたいに思っている。でもHSCを知ることで、「だから自分は学校で疲れてたのか」というのがわかって、自分を肯定できるようになっていくようですね。かつて不登校だったお子さんは「自分はHSCという言葉を知らなかったら、生きてなかった」とも言っていました。
——不登校ならば不登校でいいということでしたが、やはり「その先」は気になります。どのようにアドバイスしていますか?
明橋:不登校のその後については、文科省の委託調査で予後調査というのがあるんです。それによれば中3時点で完全不登校だった子は、5年後に8割社会復帰しているんですよ。もちろん精神的な病気や虐待などの家庭事情で長引くこともありますが、普通に子どもを見守っていればみんな社会に戻っていくわけです。私のところに来ているお子さんもみなさんそうで、まずはそうした客観的な現実を知っておくのは大事でしょう。一度不登校になると、その後も引きこもりになるみたいに思われていますが、ほとんどの子どもはそうではありません。
いわゆる中高年の引きこもり層は、一度社会に出てから挫折した方が多いものです。いわゆる「いい子」だった人も多いですが、自分の気持ちをうまく表現できるトレーニングができていないために、自分の本当の気持ちに気づけないまま大人になってしまって、周囲の圧力で折れてしまうのでしょう。
——その間、親は寄り添い続けると。ただ親が子どものことに一生懸命になればなるほど、外からは「過保護」と思われることもありそうです。
明橋:必ずあります。そういうことを言いたくてたまらない人はたくさんいます。だから世の中はこういうものなのだ、と思うしかない。もちろんHSCのことを広く知ってもらうことは大事だけれど、それでもやっぱりこういう人はいるものです。だから自分が受けとらなければいい。耳は傾けつつも「決めるのは自分と子どもだ」と腹を括るしかないのです。
——最後にHSCの可能性を教えてください。
明橋:人の気持ちに細かく気がつくHSCは、人の世話をする仕事、たとえばカウンセラー、介護士、保育士などの仕事は本来向いていると思います。あとは、参謀的な仕事、アドバイザー的にいろんな状況を分析してプランをたてることも向いています。先日のサッカー日本代表でいえば、岡崎みたいな人が非HSP*で、柴崎みたいにグラウンド中のすべてに気がついている人はHSPじゃないかと(笑)。
注*HSP:Highly Sensitive Person。ひといちばい敏感な人。
最近、海洋生物がゴミを食べて死んでしまうことが問題になっていますが、そういうテーマにひといちばい心を痛めるのがHSCです。とかく世の中には「自分が生きている間だけなんとかなればいい」と考える人はいるものです。だからこそ、HSCやHSPが細かく気づいてくれる。それは人類に必要なんです。
文=荒井理恵