口下手で人見知りですが、うちとける方法ありますか ――気になるその答えは?

暮らし

公開日:2018/8/4

『口下手で人見知りですが、誰とでもうちとける方法、ありますか?』(高石宏輔/SBクリエイティブ)

 自分自身のことを、いわゆる「コミュ障」ではないかと疑う人はかなり多いようだ。また、「自分は口下手で人見知りだ」と断定し、その縛りつけによってさらにコミュニケーションが億劫になり他人から遠ざかってしまう、といった悪循環にはまってしまう人もよく見かける。でもそれは果たして本当に、その人のメンタル面だけの問題なのだろうか。

『口下手で人見知りですが、誰とでもうちとける方法、ありますか?』(高石宏輔/SBクリエイティブ)という書籍は、「人づきあいにおいて、シャイも口下手も人見知りも、実は関係ない」と断言する。

日常的なさまざまな状況や他人から受けた心理的な負荷によって、体には知らない間に緊張が積み重なっています。(本書16頁)

 コミュニケーションに対する苦手意識からくる緊張やストレスを、「メンタル面」のアプローチで改善しようとするガイドは多く存在するが、本書では姿勢・ストレッチ・エクササイズといった「フィジカル面・身体面」で対処しようとする点が、実に斬新で、かつ説得力がある。気になる内容を一部であるが以下にご紹介したい。

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■話を聞けないのは、性格ではなく、座り方のせいかも

「長時間話を聞くのが苦手」「人の話を聞いていると眠くなってしまう」という悩みは、考え方や性格、聞き方の問題だと解釈されがちだ。しかし本書は、「まず自分がどのような姿勢をとっているのかを認識し、よりラクな姿勢をとることができれば改善する」と説いている。

 背中が丸まり、頭を前に突き出した姿勢で話を聞く人は多いだろう。本人にとって、身を乗り出してきちんと聞こうとする意識の表れかもしれないが、実際にはこの姿勢だと首や肩を中心に過剰な緊張が生じているのだという。

(人の話を聞けない)理由を考えるときに、「話を聞くのが苦手だから」という観点ではなく、無理な姿勢をとり、体を緊張させてしまっているかもしれないという観点で考えると、どうすれば改善できるかがはっきりと見えてきます。(本書57頁)

 本書では「背筋を伸ばしてラクな体勢で話を聞く」ことを勧めている。首には椎骨動脈という脳に流れる重要な血管があり、悪い姿勢が続くとそれが圧迫され、脳に送られる血液量が少なくなってしまうのだとか。

■「誰とでもうちとけられる体」はトレーニングでつくれる

 他人とのコミュニケーションにおいて、「調子が合う」ことが最重要事項だという。仲良さげに道を歩く2人組を注意深く見てみると、その多くは歩調がきれいに合っているそうだ。歩調や声のトーン、身振り手振りなどがズレてしまうと、相手との調子も合わなくなるのだとか。

同調を知っていると、その動きのズレに自分で早く気づけます。そして、ズレを自覚できると、自分が相手を見ていなかったこと、自分の考えだけで相手との会話を進めていたり、無理矢理に関係性をどうにかしようとしていたことに気づきます。(本書121頁)

 コミュニケーションを良いものにするために「他者と同調する」という行為を、本書はトレーニングによって解決に導く。他人との同調の精度を高めるエクササイズとして、「腕回し」というトレーニングが詳細に解説されているので、興味がある人はぜひ本書を手に取ってそのノウハウを習得してみてほしい。

 我々は普段、コミュニケーションの不具合を感じるとメンタル面の問題として考えてしまいがちだ。自分(あるいは相手)の考え方や態度が良くないのだと思い詰め、余計にコミュニケーションに対して苦手意識が募ってしまい、さらに他人から遠ざかってしまうような人も多いかもしれない。

 そんな悪循環にはまってしまう人にとって、本書は他にない特効薬になると筆者は感じた。斬新なアプローチに見えるかもしれないが、その内容はどれも身近で手軽に試せるものばかり。精神面も大切だが、第一に自分の体があってこそのコミュニケーションなのだという大切なことを本書は気づかせてくれる。体の調子がメンタルに及ぼす影響も看過できないのだ。

 コミュ障対策についてこれまでメンタル面でのアプローチを試みてきたが効果が得られなかった…。がっかりした経験をお持ちの方に、ぜひとも薦めたい1冊だ。

文=K(稲)