アイデアを生むのは才能じゃない。シンプルで一生役立つアイデアの基本
公開日:2018/8/8
アップルの創業者スティーブ・ジョブズの例を出すまでもなく、今大成功を収めている企業は、人々の生活を豊かにする「アイデア」によって成長してきたといっていい。こうした世界を変えるようなアイデアは、一部のアイデアマンたちの“才能”によって生み出されてきたように思える。だが、本書『IDEA FACTORY 頭をアイデア工場にする20のステップ』(アンドリー・セドニエフ:著、弓場 隆:訳/ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、アイデアは「才能よりも努力と継続」だと主張する。創造的な思考の練習を行うことで、すぐれたアイデアを思いつくようになるのだという。本書で紹介されている思考法のうち、早速いくつかを取り上げてみたい。
■考えて休む――潜在意識は不眠不休で考えている
まず、解決したい問題に関して30分以上、できるだけ一生懸命に考える。その中で、くだらなく思えるものでも、浮かんだアイデアをすべてメモしておく(別のステップで触れられているが、アイデアのベースは質より量)。数時間考えても適切な解決策が見つからなければ、一旦それについては忘れて日常生活に戻ってみる。そうすると、あなたが意識的に考えるのをやめていても、潜在意識はそれを不眠不休で考え続けるようになる。つまり、その後の散歩や入浴の最中に独創的なアイデアを思いつきやすくなる…というわけだ。
■アイデアがアイデアを生む――脳にアイデアの猛攻撃を与える
人と話しているときや、雑誌で記事を読んでいるとき、私たちはアイデアを思いつきやすい。これは、脳が他人のアイデアに晒されれば晒されるほど、強い刺激を受けて次のより良いアイデアを生み出すようになるからだという。著者によれば、このことを利用した「アイデアの猛攻撃」というテクニックが、短時間で独創的なアイデアを生み出すのに効果的なのだとか。方法は、2時間以内に課題に関連するアイデアを100個調べ、それらのアイデアの組み合わせや修正が自分のビジネスにどのように応用できるかを考えること。頭の中に思い浮かべたアイデアが右脳を刺激し、成功するアイデアを短期間で生むことができるという。
■アイデア発想は技術である――思いついた最良のアイデアをまず実行する
起業や新規事業の立案を考えている人は、「画期的なアイデアが浮かんでこない…」といってなかなか実行に移せないことがある。だが、世界の成功者たちも最初のアイデアですぐ大成功を収めたわけではない。著者は、まずは思いついたアイデアの中で最良のものを、手持ちの資金ですぐに実行することが大切だという。その過程で宣伝や販売、共同作業、そしてアイデアによる課題解決の方法を学ぶことができる。そのため、本命のアイデアが思いついたときに、すみやかに実行するための知識と経験を手にしているというわけだ。
創造的なアイデアを生み出すためには、こうした原理を“知る”だけでは不十分で、それを日常生活の中で習慣化し、自らの“創造性の筋肉”を鍛えなくてはならない。本書の最後には、毎日15~30分で実践できる練習法とアイデアの基本原理が紹介されているので、そちらもぜひ参考にしてほしい。アイデアは突然天から降ってくるものではない。「自分は頭が固い」「創造力がない」とあきらめたり他人任せにしたりする前に、先人たちはどのようにアイデアを生み出してきたのか学んで真似してみよう。
文=中川 凌