「ぜったいセックス してやんない」義兄が私に恋をした…。エロ漫画家の娘を中心に繰り広げられる“できたて家族”の日常

マンガ

更新日:2018/8/20

『ビューティフル・エブリデイ』(志村貴子/祥伝社)

 高校生という多感な時期に、母親が再婚。しかも相手には自分と歳の近い兄妹が二人。これからひとつ屋根の下で暮らしていく……ただそれだけでもストレスが溜まるのは目に見えているが、おまけにこちらの母親は職業がエロ漫画家。兄妹は好奇の目で見てくるし、兄の方はもはや恋心(?)まで抱いている様子……。

 そんな思春期真っ只中の再婚親の子どもたちを中心に、“新たな家族の形”が描かれる連作シリーズ『ビューティフル・エブリデイ』(志村貴子/祥伝社)の第1巻が発売された。

 エロ漫画家の娘・花琳は、誰もが認めるほどに可愛い容貌をもった女の子。一見大人しそうで、義兄の光一からのセクハラまがいな言動に困ったり、ブラコンである義妹の美咲の嫉妬によりひどいことを言われたり、両親の再婚早々、花琳は途方に暮れてしまう。

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 第1話は、そんな周囲に振り回されて涙を流す花琳の姿が描かれるのだが、そこで単なる孤独な少女のお涙頂戴物語にならないのが、この作品の面白いところだ。

 新しい家族になじめず、亡き父のお墓の前で泣く花琳の前に、現れる光一。今までの自分のストーカーじみた行為について謝るが、そんな彼に彼女は、自分が両親(亡き父もエロ漫画家だった)の仕事場に入ってエロ漫画を読み漁っていたことや、小3でオナニーを覚えたこと、四六時中エロいことを考えていること、すべてを告白した上で、「だからってあんたとなんかぜったいセックスしてやらない」「おまえなんか妹とでもヤッてろバカ!」と言い放ち、帰るのだ。

 本作は、1話読み切りの連作シリーズ。この花琳のぶっちゃけ以降も、新しい家族の生活は続いていく。また、この1話以降、特に花琳から性的な発言や発情している姿が描かれないのも、また想像がかきたてられていい。光一や美咲、花琳の彼氏、隣の席のクラスメイト……花琳の周囲にいる思春期の子どもたちが、みんな悶々としたり、ときめいたり、つい欲情して勃ったりする。

 また、ほのぼのとした雰囲気の中、物語は進んでいくが、いまだ完全には明かされていない謎も潜んでいる。光一と美咲の本当の母親は死んだ、と言われていたが、もしかすると死んでいないかもしれない可能性を美咲は感じているのだ。光一も、ひょんなきっかけから幼い頃の記憶が甦ったりと、今後「家族」がひとつのモチーフとなって物語が二転三転していきそうな予兆もある。

 血はつながっていないけど、ひとつ屋根の下、少しずつ紡がれる家族の形。今後どんな姿になっていくのか、目が離せない。

文=園田菜々