『対人距離がわからない』――人間関係で悩まないためには?

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公開日:2018/8/24

『対人距離がわからない(ちくま新書)』(岡田尊司/筑摩書房)

 人間関係の問題はややこしい。たいていが自分だけで解決できる問題ではなく、相手が絡んでくるからだ。社会でうまく生きていくために、人間関係にできるだけ悩まないようになりたい。

『対人距離がわからない(ちくま新書)』(岡田尊司/筑摩書房)は、10のパーソナリティ・タイプを紹介しながら、人生を幸福に導くための人間間の親密さや対人距離を探っている。

 例えば、タイプ別の「好む対人距離」については、次のように考察している。

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遠い対人距離を好むタイプ
・傷つくことや失敗を恐れる「回避性パーソナリティ」
・猜疑心が強い「妄想性パーソナリティ」
・孤独を好み喜怒哀楽に乏しい「シゾイドパーソナリティ」
・常識にとらわれず、ゆえにときに非常識人とみなされる「失調型パーソナリティ」
・真面目で、融通が利かないところがある「強迫性パーソナリティ」

近い対人距離を好むタイプ
・芝居がかった振る舞いや性的な魅力で注目や関心を惹きつける「演技性パーソナリティ」
・すぐに誰かに頼り、決めることが苦手な「依存性パーソナリティ」
・自己否定と自己破壊的な行為を特徴とする「境界性パーソナリティ」
・高いプライドや過剰な自信、誇大な理想を特徴とする「自己愛性パーソナリティ」
・道徳的な規範の乏しさや他人を冷酷に搾取する傾向を特徴とする「反社会性パーソナリティ」

 自分の身近な人の言動を想像してみると、「あの人はこのタイプかな」と思い当たるかもしれない。本書によると、人間関係で悩まないようになりたければ、まずパーソナリティ・タイプと各傾向を知るとよいらしい。

 ちなみに、これら各タイプの偏りのために社会生活や家庭生活で著しく支障が出る場合は「パーソナリティ障害」として扱われる。

 重要なことは、日本の社会を生きるうえでもっとも理想のタイプとされているのは、真面目に努力して責任感が強い「強迫性パーソナリティ」型だが、実は強迫性パーソナリティ以上に幸福を掴みやすいパーソナリティ・タイプがあることが、あまり認知されていないことだ。

 対人距離がうまく取れない代表的なタイプとして、出会ったばかりなのに馴れ馴れしくしてくる「演技性パーソナリティ」や、現代社会で増加傾向にある「自己愛性パーソナリティ」、その性質が他者からはアウトローな魅力にも映る「反社会性パーソナリティ」などを挙げているが、意外にも「演技性パーソナリティ」に人間関係で悩まないための鍵がある、としている。

 演技性パーソナリティの“ふりをして相手にそう信じ込ませる”傾向は、社会で自己主張や自己表現が求められる近年、高く評価されるようになっている。

 例えば、演技性パーソナリティは愛着したように振る舞うことが得意だ。相手に愛着を感じさせるよう、巧みにアイコンタクトやボディタッチを活用する。また、計算高くカミングアウトをして、相手の同情と自己開示を誘う。相手が喜ぶ嘘をつくのも上手だ。

 演技性パーソナリティの言動は、捉えようによっては「外見ばかりに重きを置いて中身に欠ける」ともいえる。しかし、日本では善良とされる「強迫性パーソナリティ」とはある種、真逆の性質でありながら、その演技性戦略で「強迫性パーソナリティ」を筆頭とする多くのパーソナリティを食いものにする。

 本書は、人間関係に悩まず、人に利用されないために、演技性パーソナリティを理解する重要性を説いている。

文=ルートつつみ