人体の半分は人体ではない。 信じられない本当の科学
公開日:2018/8/31
身近な生きものや物質、学校で習った物理や統計学まで、我々の身のまわりには、“常識”を超える理系の話題が驚くほどたくさん転がっている。先日刊行された『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』(KADOKAWA)は、「現代科学にまつわる話題」をイラスト図解でやさしく説明する注目の一冊だ。
今回の記事では、我々人間の「体」にまつわるトピックスを取り上げてみた。「細胞」や「細菌」に関する“常識が常識でなくなる”意外な話題にちょっと注目していただきたい。
■臓器と“会話”する「マイクロバイオーム」
人の体は「人の細胞でできている」と思っていませんか? 実は、そうではありません。人本来の細胞の個数は全体の半分以下。残りは細菌やウイルス、菌類などでできているのです。これらの総体を「マイクロバイオーム」と呼びます。
このマイクロバイオームは、皮膚や口内、内臓や目の中など、人体のいたるところに存在しています。マイクロバイオームはそもそも出産時に母親からもらうと考えられていて、生活するうちにさまざまな場所から体に取り込みます。
マイクロバイオームの中で最近よく話題になるのが「腸内細菌」でしょう。その集まりは「腸内フローラ」と呼ばれます。
腸内細菌は、単に人間に寄生しているだけではありません。人の腸と協力して化学物質をつくり出し、それを用いて人の各臓器と“会話”しているのです。
たとえば、「幸せホルモン」といわれるセロトニンの多くも、腸内細菌によってつくられた物質が脳に運ばれ、合成されるといいます。私たちの「感情」の一部は、実は、菌がつくり出しているのです。
■人間は“合体生物”!?
細菌の話が出たところでちょっと触れておくべきなのが、「真核生物」と「原核生物」についてでしょう。よくわからないかもしれませんが、真核生物とは「細菌」のことで、原核生物とは「菌類」のこと。「細菌」と「菌類」といえば、一見ややこしいほど似た印象を受けてしまいますが、実はまったく異なるものです。
この違いがいかに大きいかを理解するには、アメリカの生物学者マーグリスの「内部共生説」を知る必要があります。
内部共生説は、真核生物の起源を説明する考え方です。簡単にいうと「真核生物は、原核生物に別の原核生物が侵入し、そのまま共生したもの」ということ。要するに、真核生物は原核生物の“合体生物”なのです。
この説を用いて、真核生物と知られる「ミドリムシ」がどのようにして原核生物から進化したかを追ってみましょう。
生命誕生時の地球には、酸素はありませんでしたが、やがて光合成して酸素をつくり出す細菌が生まれます。すると、その酸素を使って活動する「好気(こうき)性細菌」が誕生し、さらに、この好気性細菌を取り込んだ真核生物が誕生します。以後、さまざまな細菌を取り込んで、自由に動き回って光合成もできるミドリムシが誕生したと考えられています。
そして私たち人間も、こうしたミドリムシのような過程で細菌が共生し合ってできた“合体生物”と考えられているのです。
『[図解]身近な科学 信じられない本当の話』
涌井貞美/KADOKAWA
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