転職難民にならないために知っておきたいこと… 転職成功のための「思考法」とは?

ビジネス

公開日:2018/8/28

『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(北野唯我/ダイヤモンド社)

 夏休みをいかがお過ごしだろうか。まとまった休みが取れるこの時期、「転職の準備をしよう」と考える人もいるだろう。そんな方に、ぜひ手元に置いていただきたいのが『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(北野唯我/ダイヤモンド社)だ。

 本書によれば、転職で重要なのは知識・スキルではなく「判断軸」であるという。転職では、自分の市場価値である「マーケットバリュー」の判断を筆頭に、企業の成長性リサーチや転職エージェントを使うのか否かなど、判断の積み重ねが必要となる。その際に、しっかりとした判断軸がなければ、ブレブレとなり、「転職しなければよかった」なんてことにもなる。

 ではどのような判断軸(転職の思考法)を持てばいいのか。その要諦を、小説仕立てのストーリーの中で伝授してくれるのが本書というわけだ。

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 主人公は、大手印刷機器メーカー勤務10年目の男性営業マン、33歳(くらい)。「自社製品に誇りが感じられない」「業績不振を改善しない会社への嫌気」「他業界も経験したい」などの理由から転職を決意する。

 そんな主人公は偶然にも、凄腕の企業再生コンサルタント「黒岩」と知り合い、個人的な転職アドバイザーとして契約。転職の思考法を基礎からたたき込んでもらうという内容だ。

■自分の仕事を棚卸してマーケットバリュー(市場価値)を知る

 初めての転職に右も左もわからずに戸惑う主人公に、黒岩はまずこう語る。

「いいか。君に必要なのはまず自分のマーケットバリューを理解することだ。マーケットバリューとは、市場価値のこと。その名の通り、今の会社での価値ではなく、世の中から見た君の価値、君の値段だ」

 主人公が「どうやって自分のマーケットバリューを測ればいいのか」と問うと、黒岩はその材料として「技術資産」「人的資産」「業界の生産性」をあげる。

 そして転職を考える際にまずやるべきことは、「自分のこれまでの仕事の棚卸をしてレジュメを書くこと」を勧める。その結果、主人公の仕事の棚卸レジュメは下記のようになる。

・法人営業
・法人向けの新規開拓
・チームマネジャー(3名程度)
・印刷機器の業界経験

 このレジュメがどうマーケットバリューと関わるのかを黒岩は説明し、主人公は転職の第一歩を理解していくことになる。

 本書ではこのように、初転職という設定の主人公に自分の身を重ね、自分ならどうなるかを考えつつ、転職のために欠かせない知識を積み上げていくのである。大事なことはちゃんとメモブロックにまとめてあるので、後で読み返せば復習もできる仕組みだ。

■恋人や周囲の人から転職を反対された場合の対応ノウハウも伝授

 転職ガイド本は多いが、項目別マニュアル的な本が多い。この場合どうしても、必要な箇所だけを選んで読みがちになる。本書のように小説仕立てだと、ストーリー展開も気になるため全編を読み通したくなる。その結果、自分が気にしていなかったテーマも学べるし、そこに重要な発見があったりする。

 本書には、転職のことを恋人に報告するやり取りも登場する。事前の相談はせず、転職するという結果だけをいきなり切り出し、「大事なことをいつも自分だけで決める」と、恋人から別れ話を持ち出されてしまう主人公。

 そのことを相談された黒岩は、「ロジック」「共感」「信頼」という3つのキーワードを解説し、周囲の人から転職を反対された場合の対応ノウハウを伝えている。

 また、転職を機に「自分がほんとうにやりたいことを知りたい」「好きなことを仕事にしたい」「夢・目標なども見つけたい」という人もいるだろう。主人公も「営業職」という得意分野はあるが、それ以外のやりがいや目標が発見できずにいた。そうした悩みを解決させる思考法もしっかりと記されていることも、本書の大きな特徴だろう。

 他にも、いいベンチャーを見極める3つのポイント、いい転職エージェントの五か条、中途採用を大切にする会社か否かの見分け方などなど、転職に役立つ実践的な教えの数々を伝授してくれる本書。自分の市場価値を知って、成長性のある企業へと転職し、やりがいや目標も見つけて新たな人生を始めたいという人に、多くのヒントを与えてくれるはずだ。

文=町田光