ラブソングより恋に効き、ニーチェより深イイ!? ユニークな「アフリカのことわざ」

文芸・カルチャー

更新日:2018/9/20

アフリカのことわざ
『アフリカのことわざ』(アフリカのことわざ研究会/東邦出版)

「ことわざのない話は、塩気のない料理のようなもの」

 アフリカには、こんなユニークな言葉があるほど、日常会話の中でことわざが多く使われているそうだ。日本人はことわざに堅苦しさを感じる方も多いだろうが、アフリカでは会話を楽しむためにもことわざは欠かせないものだと考えられており、ある民族の間ではことわざを使いこなせることが成熟した大人の条件になってもいる。50以上の国、12億の人口、3000以上の民族、2000以上の言語があるアフリカには、日本人が驚くようなことわざが多く存在している。それを教えてくれる『アフリカのことわざ』(アフリカのことわざ研究会/東邦出版)から、人生や愛についてのおもしろくて深いことわざを紹介していこう。

■人生にまつわる深イイことわざ

 単調な毎日を送っていると、自分らしい人生を歩めていないなと感じることもあるだろう。そんなときには、こんなことわざを。

「地べたの上の果物はみんなのものだけれど、木の上のそれは登ることができる人のもの」

 チャレンジ精神溢れる、このジンバブエのことわざに背中を押してもらってはいかがだろうか。挑戦することの大切さを教えてくれるこの言葉は、多数派民族ショナ人が口にしているものなのだそう。

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 安定した人生を送ることはたしかに幸せだが、自分自身が現在歩んでいる人生を楽しめていないと感じることがあるのなら、思い切ってやりたいことに手を出す勇気も必要だ。リスクを被る可能性があると、誰でも不安を感じ躊躇してしまう。しかし、木に登り果実を手にできてこそ、見えてくる道もあるはずだ。

 そして現在の自分が本来の自分とかけ離れているような気がしている方は、ニジェールやナイジェリアに伝わる次のことわざを意識してみてほしい。

「この腕輪が合うなら、はめなさい。痛いなら、捨てなさい。それがどれほど輝いていても」

 肩書きが重視される日本では、つい自分の身の丈に合わないアクセサリーをはめてしまうことだってあるだろう。だが、それを外す勇気が持てたら、また違った景色も見られる。SNS上で私生活を公開する機会が多い現代は、見栄を張ってしまうこともあるが、等身大の自分が素直に笑顔になれるアクセサリーを見つけ、自分なりの幸せについて考えてみよう。

 そういう気持ちになったら、ニジェールやナイジェリアに伝わるこんなことわざも噛みしめてみてほしい。

「幸福の欠点は終わりがあること」

 人は悲しみには敏感になれるが、幸せには鈍感になってしまいがちだ。だが人生の中には、当たり前なことなんてひとつもない。例えば、明日という日がやってくることや喧嘩できる相手がいることは幸福である証だ。些細な幸福は日常の中に埋もれてしまいやすいが、そのことに気づいて瞬間瞬間を大切にできたら、人生はより豊かになっていくはずだ。

■ラブソングよりも恋に効くアフリカのことわざ

 アフリカには人生の教訓となることわざの他に、愛にまつわることわざも多く存在している。例えば、ウガンダには大好きな相手に告白をする勇気がでないときにパワーをくれるこんなことわざがある。

「美しい娘の周りをウロチョロしているだけで告白をしない男は、彼女の結婚式で客に水を出す役目に行き着く」

 結婚式に新郎が新婦の家族に花や野菜、果物、生きたニワトリなどを持っていく習わしがあるウガンダには、「恋は仕勝ち」という日本語のことわざに似た考え方があるそうだ。恋愛をすると、相手の気持ちや周りの事情なども考えて思うように行動できないことも多いが、悲しくてみじめな結婚式を迎えないためには、競争相手への遠慮は無用であるということを、このことわざは教えてくれるのだ。

 そして、うまく意中の相手と付き合うことができたら、口から出る言葉に注意しよう。交際期間が長くなると、相手に対してついキツい言葉を発してしまいやすいが、時には自分の言葉が相手を傷つけていないか振り返ってみる必要がある。

「口論はやがて終わるけれど、言い放たれた言葉は消えない」

 このことわざは、発せられた言葉は矢と同じように武器となって、相手を傷つけてしまう恐れがあると指摘する。言葉は暴力と同じくらい、心に深い傷を与えてしまうこともある。お互いの距離感が近くなった時こそ、自分がパートナーにどんな言葉をかけているか、思い返してみてほしい。

 また、恋は楽しいことばかりではなく、悲しみももたらすことがあるかもしれない。そんなときにはこんなことわざを。

「悲しみは尊い宝物。友達だけに見せる物」

 マダガスカルに伝わるこのことわざには、深い悲しみは宝物のように自分の中に隠しておくべきで、それを見せるのは信頼する友人だけという意味が込められている。日本にはない悲しみとの向き合い方を静かに教えてくれる。悲しいときはひとりで乗り越えようと頑張ってしまう日本人は多いが、誰かと涙を分け合いながら傷を乗り越えていくのもよい。人はひとりの力では生き抜いてはいけない生き物だからこそ、涙は身近な人と半分こしてみてほしい。

 本書にはこのように新たな価値観を与えてくれることわざが、「人生」「仕事」「愛」「道理」の全4章に分けて詰め込まれている。今悩みを抱えている方は、自分らしい一歩を踏み出すきっかけとして、この心強いアフリカのことわざを活かしてみよう。

文=古川諭香