大人向けのマンガが読みたい! そんな人へおくるハードボイルド探偵マンガのおすすめ5選

マンガ

更新日:2018/9/14

 女性が強い時代になりました。漫画の主人公にも強い女性が増えてきて、かつてイメージしていた「ハードボイルド」という言葉自体、すでに死語なのかもしれません。そんな昭和の遺物、郷愁すら漂わせるハードボイルドな世界を描き出してくれる漫画といえば、やはり、探偵漫画を外すことはできないでしょう。本稿では、殺人事件や密室の謎だけでなく、人生や人情、人間関係といった目に見えないものを解き明かす、“大人の探偵漫画”を紹介したいと思います。

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■解き明かす謎は「人間」。現代のお伽噺のような不思議な雰囲気を漂わせる名作

『リバースエッジ 大川端探偵社』(ひじかた憂峰:作、たなか亜希夫:画/日本文芸社)

 隅田川沿いにある、スタッフがたった3人の小さな探偵社の元に舞い込んでくる事件は、どれも不思議なものばかり。テレビドラマ化もされた人気作品である『リバースエッジ 大川端探偵社』(ひじかた憂峰:作、たなか亜希夫:画/日本文芸社)で扱われる事件は、決して派手なものではありませんが、一筋縄ではいかないものばかりです。まさに、謎ではなく、人間が持つ「業」や「情」を解き明かしていくストーリーといっても過言ではありません。作品の根底に流れる人情味に溢れたトーンが、下町浅草という舞台とあいまって、和製ハードボイルドならではの空気感を演出します。ウィスキーを片手にじっくりと読みたい、そんな大人向けの作品です。

■記憶を失った探偵が、記憶を取り戻したとき、彼が得たものとは?

『悔い改めよと叫ぶ声在り』(神崎将臣/日本文芸社)

 ハードボイルドな探偵は、大抵お金に縁がないアウトローと相場が決まっています。『悔い改めよと叫ぶ声在り』(神崎将臣/日本文芸社)の主人公は、お金どころか、自分が何者かという記憶すら失っているという、ないないづくしの男。新宿を舞台にハードな事件から、日常的なゴタゴタにまで対応する「萬屋」として生きている主人公が、自分自身の過去に直面するとき、選ぶ道とは? この作品の全てが、そのタイトルに込められているといっても過言ではありません。なぜ、こんなタイトルになったのか? 興味を持たれた方はぜひご一読ください。1巻完結なので、読み出したら最後の謎が解けるまで一気に読み進めることができるはずです。

■ハード&ルーズが信条の探偵が遭遇するリアルな人間模様

『ハード&ルーズ』(狩撫麻礼:原作、かわぐちかいじ:作画/世界文化社)

『ハード&ルーズ』(狩撫麻礼:原作、かわぐちかいじ:作画/世界文化社)は、タイトルにあるように、ハードでありルーズであることを信条とした探偵が、さまざまな事件に遭遇していくというもの。ハードボイルドな探偵を題材にすると、浮気調査や失せ物探しなどといった、現実世界で大半を占めるような瑣末な業務はあまり描かれないことが多いのですが、こちらの作品はあくまでもリアルに忠実で、等身大の世界観が重視され描かれています。30年以上前の作品ということもあり、当時の空気感が伝わってくるあたりも、中高年の読み手にとっては、味わい深い印象を残すかもしれません。時として、自分の信条のために依頼人を裏切ることすらある、そんなハードかつルーズな男の生き様を堪能してみませんか?

■子連れ探偵は、ちょっとエッチで、めちゃくちゃ強い

『ハートボイルドパパ』(生田 正:原作、山口譲司:作画/集英社)

 自分の父親かもしれないというある探偵の元を訪れたひとりの少女と、女たらしでスケベだけれども、やるときはやる凄腕探偵の日常を描いた『ハートボイルドパパ』(生田 正:原作、山口譲司:作画/集英社)。ハードボイルドではなく、「ハートボイルド」ということで、全体的にコメディ色が強い作品ですが、軽薄な女好きに見えながらも、しっかりと本質を見抜き、なおかつ無敵の強さを誇る探偵と、可憐な少女のバディ物としても成立しています。もちろん、主人公の根底にはハードボイルドな血が流れています。この作品は、探偵物の主人公によくある男臭さは苦手だけど、ハードボイルドな作品を読んでみたいという方にもオススメです。

■30年たってもそのおもしろさは色あせない、大人の探偵漫画

『ハロー張りネズミ』(講談社)

「島耕作」シリーズでお馴染みの弘兼憲史氏が、今から30年以上前に描いた作品である『ハロー張りネズミ』(講談社)。「あかつか探偵事務所」に所属する探偵たちの活躍は、日常的な事件から、国家を揺るがすような大規模な事件、また人情物からオカルトまで幅広く、まさに、ハードボイルド探偵漫画の不朽の名作といって間違いないでしょう。人気は衰えず、連載が終了してから28年もたった2017年にも瑛太、山口智子ら豪華キャストで連続ドラマとして実写化されています。探偵漫画でありながら、霊やオカルトを実在するものとして扱っているあたりは異色作ともいえますが、人間の裏表や情といった大人の探偵漫画に欠かせない要素はしっかりと押さえられています。大人の探偵漫画の入り口で迷っている方は、この作品を選べばまず間違いないでしょう。

 まだ残暑は厳しいですが、これから秋が深まり、落ち葉が散り始めると、ふいに街中で、風景がなんだかモノトーンに感じられたりするもの。そんな秋の風情にふさわしい存在といえば探偵。後ろ姿や背中で語ることができるハードボイルドな探偵だと思いませんか? そのように感じたことがある方には、ここで紹介した漫画がきっと気に入るはずです。

文=龍音堂